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海外工場の生き残り策。円安=国内回帰で自立に動く

神鋼EN&Mのベトナム加工拠点からのレポート。独自の営業部門を作り自国の仕事が急増
海外工場の生き残り策。円安=国内回帰で自立に動く

技術力や日本と同等の品質管理・納期管理手法などを生かして、現地で案件獲得の拠点としての役割を強めている

 神鋼エンジニアリング&メンテナンス(EN&M、神戸市灘区)のベトナム加工拠点「KOBE EN&M VIETNAM(KEV)」が“現地化”の動きを強めている。安価な労働力を武器にコスト削減の拠点として主に日本向けの案件を手がけてきた。だが、東南アジア諸国の経済成長が著しい中、現地や海外向け案件を獲得する「プロフィットセンター」としての脱皮を図っている。

 ホーチミン市内から車で約1時間。ドンナイ省ビエンホアII工業団地にKEVがある。約2万3000平方メートルの工場敷地に、立型旋盤やNCボーリングセンターなどの機械設備、プラズマ切断機や油圧プレス機、ベンディングマシンなどの製缶設備などを備え、設計から製作、据付工事、メンテナンス、補修工事までを一貫して対応する。

 熱交換器や塔・槽類など化学機器やプラント装置、各種産業機械から一般製缶品まで幅広く手がけるが、中でも強みとするのが加工工数が多く、加工が難しい熱交換器などの製品だ。KEVの鈴木孝典社長も「ローカルのチャージ(加工賃)と比べても高い。その分、手間がかかるものや溶接箇所が多いものなど、難易度の高いもので強みを発揮できる」と話す。

 技術力や日本と同等の品質管理・納期管理手法などを生かして、現地で案件獲得の拠点としての役割を強めている。2010年には社内に独自の営業部門を設置し、現地での営業活動を開始。外販の強化に合わせて「ISO9001」をはじめ、米国機械学会(ASME)の認証など、各種法規への対応も進めた。

 KEVの従業員数は日本人3人を含む約160人。うち製造部門は約110人、品質保証部門は約15人。鈴木社長は「品質管理部門は製造部門の規模からみても多い。その分、高付加価値のものを手がけている。お客さまにも安心し、評価していただいている」と自信を示す。今後も生産管理部門や設計部門などの人員を増強し、技術力に磨きをかける方針だ。

日刊工業新聞2015年06月17日 モノづくり面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 KEVの操業開始は98年。素材関連企業のベトナム進出事例としては歴史があるほうだ。その分、現地で稼ぐための「下地」を作り上げてきた。最近の円安で日本企業の業績回復が続いているが、逸るように整備されてきた海外現地法人にとっては、“親離れ”が今後の焦点となるかもしれない。

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