東京は記録的な連続雨の中、製造業が水不足リスクへ本気に動き出した!

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 製造業が将来の水問題が事業に影響を及ぼす「水リスク」の対応に乗りだしている。富士通は2016年度、水使用量を13万9000立方メートル減らし、目標の1万立方メートル減を大幅に上回る成果を上げた。パナソニックは17年度から水リスクが高い可能性のある拠点を現地調査し、18年度までに詳細な評価を終える。三菱電機は米調査研究機関の評価手法を使い、海外50拠点の水リスクを点検した。各社とも水問題が表面化する前に対策を打つ。

 富士通は全社で水の再利用に取り組む。子会社の富士通コンポーネントはタッチパネル製造ラインで洗浄後の水の再利用を開始。洗浄廃水槽の定期的な清掃などで約18%を回収して再利用できるようになり、年1万2000立方メートルを節水した。

 富士通は将来の水不足に備え、16年度から水使用量の削減目標を設定した。初年度の目標が1万立方メートル減だった。全社で削減活動が推進され、18年度までの累計12万8000立方メートル減の目標も前倒しで達成した。

 パナソニックは工場がある地域の将来の水資源を分析する世界資源研究所(WRI)などの評価手法を使い、16年度末までに世界250拠点の点検を完了した。水リスクが高い可能性がある国では現地情報の収集や関連機関への聞き取りを行い、リスクの実態を把握する。

 三菱電機もWRIの手法を使って評価し、約10拠点でリスクが高い可能性があると分かった。この結果を参考に優先順位を決め、設備更新などの対策を打つ。同社は半年ごとに水使用量や再利用量に変動がないかどうかを確認し、すぐに対応できるようにしている。

 水不足で取水制限や水道料金の上昇が起きると操業に支障が出たり、コストが上昇したりする。現在は水資源が豊富であっても、気候変動による渇水や人口増加による水需要の増加で水不足が深刻化する地域がある。また、水リスクを評価するように要請する機関投資家も増えており、各社の対応を後押ししている。
                   

日本コカ・コーラなど、水資源保護目標を前倒し達成


 日本コカ・コーラと全国のボトリング会社5社は、商品に使った量と同等以上の水資源を守る独自目標「ウォーター・ニュートラリティー」を達成した。工場で節水を徹底して製造で使う水を削減したり、水源林を保全して保水力を高めたりして目標よりも4年前倒しで達成した。今後も地域の水資源保護を続け、経営に影響するような水リスクの発生を回避する。

 ウォーター・ニュートラリティーは、米国本社のザ・コカ・コーラカンパニーが掲げた世界共通目標。水使用量の削減、排水管理、水資源保護の三つの活動を推進する。海外ではダムを造ったコカ・コーラもある。

 日本コカ・コーラとボトリング5社は22工場で節水に取り組んだ。3工場の3ラインにはペットボトルを電子線で殺菌する装置を導入。飲料を入れる前にボトル内を薬剤で殺菌する必要がなくなり薬剤を洗い落とす洗浄水の使用をなくした。

 地道な節水も成果を上げている。日本コカ・コーラ技術・サプライチェーン本部の柴田充部長は「ペットボトル内への水の注ぎ方、製造装置の洗浄方法を研究し、節水を追求してきた」と話す。1リットル分の商品を作るための水使用量は平均3・97リットルとなり、5年間で29%削減した。排水はコカ・コーラ独自か国のどちらか厳しい基準を満たすまで浄化し、放流している。

 水資源の保全は21工場に水を供給する水源林で取り組んだ。各地の森林組合や自治体と連携して枝打ち、下草刈り、植樹などを展開し、雨水を土壌にたくわえる保水力を高めた。米環境エンジニアリング会社のリンノテックに検証してもらったところ、浄化や森林保全で保護した水資源が商品の製造で使った水量の1・15倍となり、ウォーター・ニュートラリティーの基準を満たした。

 ただ、節水は省エネルギーに比べるとコスト削減効果は大きくなく、ウォーター・ニュートラリティーも分かりやすいメリットがある訳ではない。それでも節水や水源林保全に取り組むのは「地域の水資源を使っている責任がある。地域が持続可能であることで、事業も持続可能になる」(柴田部長)からだ。

 水資源が細ると操業ができなくなるため、地域の水資源保全は事業を守ることにもなる。2014年に水循環基本法が施行され、流域ごとに保全計画が策定されている。「今後は流域ごとの計画を参考に、地域の水をめぐる課題解決に貢献していく」(同)方針だ。
地域と連携した水源林の保全活動

(文=松木喬)

日刊工業新聞2017年8月11日/17日

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松木喬
編集局第二産業部
編集委員

西日本は猛暑、東日本は連日の雨という日が続いています。今年は地元・新潟で海水浴に1度しか行けませんでした。さて水リスクです。気候変動の影響は水になって表れるといいます。洪水、渇水、干ばつ、降雨パターンの変化、大雪、氷河の氷解などなど。いくつも国境を超えてモノをつくる時代、自社の周辺は水問題がなくても、サプライヤーが水リスクに直面しているかもしれません。コカ・コーラのような水源池の保全も、水リスク低減につながります。そのうち日本企業でもダムを造るようなことがあるかもしれません

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