「攻殻機動隊」「初音ミク」・・。大衆薬とアニメの世界観をマッチさせ販促!
「近未来SFの世界観が、『サンテPC』のイメージに合致した」(参天製薬)。ロート製薬は初音ミク
OTC医薬品(大衆薬)メーカーが販売促進活動でマンガやアニメなどのキャラクターを利用する取り組みが目立ってきた。自社製品の特徴に合った作品を選んでブランド力強化につなげることが王道とされるが、世界観が異なる組み合わせにして顧客層の拡大を図る事例も見受けられる。大衆薬市場が伸び悩む中、需要喚起に向けて各社の知恵が試されている。
「近未来SFの世界観が、『サンテPC』のイメージに合致した」。参天製薬は6月末まで実施中の目薬販促キャンペーンについて、狙いをこう説明する。ITやロボットなどの科学技術が飛躍的に進歩した日本を舞台とする漫画作品「攻殻(こうかく)機動隊」の登場人物を広告に掲載。サンテPCは液晶画面から発せられる青色光(ブルーライト)を受けることに伴う目の疲れに着目して処方設計を行った製品であるため、効果的にブランド力を強化できると考えたようだ。
ロート製薬は以前から類似の取り組みをしている。ブルーライト対応の目薬「ロートデジアイ」の販促資料に、音声合成ソフトウエアのキャラクターとして知られる「初音ミク」を起用。電子機器やインターネットを使う機会の多い10―20代に訴求する狙いで、14年7月には製品の外装にミクの目をデザインして発売した。好評を得ており、現在もこのパッケージのまま販売を続けている。
キャラクターを活用した販促活動は「商品と作品の世界観をマッチさせることがセオリー」(経営コンサルタント)。参天製薬やロート製薬はこの典型例と考えられる。
その一方で“ミスマッチ”を逆手に取る施策もある。大正製薬は15年6月、アイドルを目指す女子生徒を描いた作品「ラブライブ!」と連動したキャンペーンを始めた。ドリンク剤「リポビタンD」の購入者へ、同作品に関連する景品を進呈する。筋肉質の男性が野外で叫ぶテレビCMを放映してきたが、それとは正反対の印象を与える。
背景には、ドリンク剤市場の成熟に伴うリポビタンシリーズの苦戦がある。消費増税や天候不順も影響し、15年3月期の国内売上高は前期比8・0%減の621億円だった。「ラブライブ!ファンは、リポビタンを飲んだことがない人が多い。飲むきっかけになれば」(広報)と期待する。
調査会社のインテージによると、国内OTC市場全体(小売りベース)も縮小している。10年度に1兆1517億円だったが、14年度は1兆537億円。日本OTC医薬品協会は25年度に1兆8000億円としたい考えで、各社の取り組みはこれに貢献しそうだ。
ただ、キャラクターを使った販促活動はあくまで入り口にすぎない。新たに得た顧客を離さないためには、大衆薬の有効性を実感してもらう必要がある。製品自体の改良や、健康管理の重要さに関する啓発活動を地道に続けていけるかも問われることになりそうだ。
(文=斎藤弘和)
「近未来SFの世界観が、『サンテPC』のイメージに合致した」。参天製薬は6月末まで実施中の目薬販促キャンペーンについて、狙いをこう説明する。ITやロボットなどの科学技術が飛躍的に進歩した日本を舞台とする漫画作品「攻殻(こうかく)機動隊」の登場人物を広告に掲載。サンテPCは液晶画面から発せられる青色光(ブルーライト)を受けることに伴う目の疲れに着目して処方設計を行った製品であるため、効果的にブランド力を強化できると考えたようだ。
ロート製薬は以前から類似の取り組みをしている。ブルーライト対応の目薬「ロートデジアイ」の販促資料に、音声合成ソフトウエアのキャラクターとして知られる「初音ミク」を起用。電子機器やインターネットを使う機会の多い10―20代に訴求する狙いで、14年7月には製品の外装にミクの目をデザインして発売した。好評を得ており、現在もこのパッケージのまま販売を続けている。
キャラクターを活用した販促活動は「商品と作品の世界観をマッチさせることがセオリー」(経営コンサルタント)。参天製薬やロート製薬はこの典型例と考えられる。
その一方で“ミスマッチ”を逆手に取る施策もある。大正製薬は15年6月、アイドルを目指す女子生徒を描いた作品「ラブライブ!」と連動したキャンペーンを始めた。ドリンク剤「リポビタンD」の購入者へ、同作品に関連する景品を進呈する。筋肉質の男性が野外で叫ぶテレビCMを放映してきたが、それとは正反対の印象を与える。
背景には、ドリンク剤市場の成熟に伴うリポビタンシリーズの苦戦がある。消費増税や天候不順も影響し、15年3月期の国内売上高は前期比8・0%減の621億円だった。「ラブライブ!ファンは、リポビタンを飲んだことがない人が多い。飲むきっかけになれば」(広報)と期待する。
調査会社のインテージによると、国内OTC市場全体(小売りベース)も縮小している。10年度に1兆1517億円だったが、14年度は1兆537億円。日本OTC医薬品協会は25年度に1兆8000億円としたい考えで、各社の取り組みはこれに貢献しそうだ。
ただ、キャラクターを使った販促活動はあくまで入り口にすぎない。新たに得た顧客を離さないためには、大衆薬の有効性を実感してもらう必要がある。製品自体の改良や、健康管理の重要さに関する啓発活動を地道に続けていけるかも問われることになりそうだ。
(文=斎藤弘和)
日刊工業新聞2015年06月16日 ヘルスケア面