【連載】知っておきたい太陽電池のこと(第4回) 「発電しても売れない?」

グリッドは排水口が開いたままのプール。需給バランスのために「出力抑制」が無制限に

新設メガソーラーは出力抑制の頻度アップの可能性

 太陽光発電業界でホットなキーワード「出力抑制」について解説します。九州電力は5月上旬、固定価格買い取り制度で初めてとなる出力抑制を種子島で発動しました。この事態からしてどうもネガティブな響きのある四文字と思いませんか?  出力抑制とは電力会社が再生可能エネルギー発電所から電力の買い取りを中断することです。誤解があるといけませんが、買い取りの中断が狙いではありません。再生エネ発電所から電力系統への電力の受け入れを停止し、電力の需給バランスを保つことが狙いです。ネガティブなようですが、電力インフラを守るための措置です。  出力抑制が必要な理由を説明します。  最近、新聞では「電力系統」という言葉を使うようになりました。発電した電力を家庭やビル、工場へと送り届ける「送配電網」のことです。「電線」と言い換えるとスケールを感じられませんが、間違いではありません。英語では「グリッド」です。  この電力系統は排水口が開いたままのプールに例えられます。水が電力、排水口が電力の消費者(需要家)、蛇口が発電所です。蛇口から流す水量は排水口から流れ出る水と同じ量でなければいけません(同時同量の原則)。水位が下がると需要家に届ける水が少なくなるためです(電力不足)。  逆に蛇口からの水が多いと溢れます。実際の電力系統では変電設備などに負担がかかりすぎて故障の原因となり、最悪だと大規模停電を招きます。発電と消費の電力を常に一致させることが電力系統を運用する電力会社に求められています。  太陽光や風力発電は日射や風の強さで発電がめまぐるしく変わります。プールの例で考えると各地にできた再生エネの蛇口は水量が一定しないばかりか、出たり、止まったりを繰りかえます。そこで火力発電所の蛇口が流す水(発電量)を調整してプールの水位を一定に保っています。しかし火力発電では調整ができないほど、再生エネの発電量が増えすぎてしまうことがあります(火力をゼロにできないため)。  そこで電力系統の需給安定に協力してもらうために出力抑制の制度があります。電力会社から発動があると、風力発電なら風車の回転を止める、メガソーラーなら発電した電力が電力系統に流れないようにパワーコンディショナー(パワコン)で遮断します(出力抑制中でも太陽光パネルは発電を続けています)。  2014年秋、再生エネ発電事業者が電力系統との接続を申請しても、電力会社が受付を中断する事態が全国で起こりました。いわゆる「接続保留」問題で、再生エネの新設工事が停滞しました。これ以上、再生エネ発電所が増えると天候次第では電力の供給量が需要量を上回ってしまう恐れが出てきたためです。   そこで15年1月、出力抑制のルールが見直されました。それまでは電力会社は年30日間、無補償で出力抑制を発動できました。ルール変更後は年360時間、無補償で発動できるようになりました。接続可能量を超えた北海道、東北、九州の3電力会社管内は無制限・無補償で出力抑制をかけれます。無補償とは再生エネ事業者の売電収入が減っても、電力会社は補償しなくてもいいということです。  新ルールは新規に接続を申請する再生エネ発電所に適用されます。出力抑制の頻度が多くなると売電収入が減るため、再生エネ事業者は発電所の新設に慎重になります。  北海道、東北、北陸、中国、四国、九州、沖縄の8電力会社管内では住宅用太陽光発電システムも出力抑制の対象です。この8電力会社での余剰電力の買い取り価格は35円(1キロワット時当たり)。住宅用に出力抑制がない東京、中部、関西の3電力会社では33円と差があります。遠隔から出力抑制をかけられる機能を付けたパワコンは、通常のパワコンよりも価格が高いという理由からです。  問題は出力抑制がどの程度、発動されるかですが、実は原子力発電所の稼働が左右します。原発は発電量を変えることが苦手で、火力のように調整がきかないためです。原発が再稼働すると調整役だった火力の稼働が減るため、太陽光や風力発電から受け入れられる余裕が減ります。太陽光発電協会が予測値を公表していますので参考にして下さい。    せっかく発電した電力を使えないのはもったいないです。電力系統の強化(スマートグリッド)、蓄電池の導入による自家消費への移行など対策の検討も始まっています。 ※「スマートコミュニティJapan2015」が6月17日に開幕します(会場=東京ビッグサイト)。併設の国際シンポジウム「スマートコミュニティサミット」は再生エネの大量導入を支えるスマートグリッドがテーマです。

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