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五輪の建設需要、いよいよ本格化!?

関東地区で工場や営業所の開設計画相次ぐ
五輪の建設需要、いよいよ本格化!?

藤井産業は電設資材販売や施工分野の商圏を拡大(写真は宇都宮の本社)

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた建設需要の増加を見据え、関東地区で工場や営業所を新設する動きが相次いでいる。

 藤井産業は6月1日付で埼玉電産(埼玉県熊谷市、田島昌司社長)から事業譲渡を受けて「熊谷営業所」を開設した。また、2016年3月期中にも東京都内に営業スタッフを置く。東京オリンピック・パラリンピックを見据え建設・設備の需要増に対応し、首都圏市場の開拓で営業基盤を強化する。今後もM&A(合併・買収)を含めて拠点を整備し、電設資材販売や施工分野の商圏を拡大する。

 埼玉電産は埼玉県北部をエリアとする電設資材商社で、顧客は数十社、年商は3億円強という。歴史を持ちながら経営者が高齢で後継者がいない同社と、市場を広げたい藤井産業の思惑が一致し、事業譲渡が決まった。譲り受けの金額は非公表。埼玉電産の債権・債務は継承しない。

 熊谷営業所には、埼玉電産から引き継ぐ従業員を含め10人強を配置し、初年度売上高で約5億円を見込む。事務所と倉庫を熊谷市の流通センター内に置き、8日に営業を始める。電話番号は048・577・6681。埼玉県内で、さいたま支店、既存の久喜、越谷を合わせた1支店3営業所体制が整う。

 藤井産業は栃木県を地盤に、茨城、群馬、埼玉、宮城、福島などに営業拠点を持つ。東京・内神田には電設資材、建設資材部門などの混成部隊である「東京支店」を置くが、現在は情報収集が主業務。東京五輪に向けた公共事業やオフィス建設などに狙いを定めて、同支店に営業スタッフを10人程度置く計画だ。

 同社は16年3月期に売上高で前期比4・0%減の665億円、経常利益で同22・9%減の28億円を見込む。太陽光発電関連などの販売減少を想定したもの。中期的な業績向上へ商圏を広げ、業績拡大を図る。

 安治川鉄工(大阪市西淀川区、吉田秀喜社長、06・6474・2050)は、栃木県小山市の小山東工業団地に新工場を建設し、鉄筋へのエポキシ樹脂塗装事業を東日本で開始する。同事業最大の生産拠点となる。生産能力は月間1500トン。新たに5―7人を地元採用する計画。用地取得を含めた投資金額は約10億円。

 吉田社長は5月28日、小山市役所で同市土地開発公社と土地売買契約を結んだ。取得面積は約1万2270平方メートル。7月に建設に着手し、2016年3月までに操業を開始したいとしている。

 安治川鉄工は現在、大阪工場と沖縄工場で鉄筋へのエポキシ樹脂塗装を手がける。東日本における戦後インフラの補修や東京オリンピック関連の建設需要を見込む。吉田社長は「首都圏、東北、北陸、どのエリアにもアクセスが良く、モノづくり企業への支援策もしっかりしている」と、同市を選定した理由を説明した。

 同社の15年3月期の売上高は約59億円。送電線用鉄塔などの設計・製造とエポキシ樹脂塗装鉄筋の製造が主力事業。従業員は255人。

 西尾レントオールは東京オリンピックに向けて首都圏の建設機械レンタル需要増に対応するため、東京都、千葉県、茨城県に建機のストックや点検に使う拠点を新設する。3拠点合計の面積は約4万6200平方メートルで、土地取得などの投資額は計33億円。同社は需要のピークと見られる18年度に向け建機購入を進めている。既存の営業所などの拠点網では手狭で大規模の拠点を置くことにした。

 千葉県佐倉市の拠点は10月に稼働予定で敷地面積は2万3100平方メートル。資産換算で30億円分の建機をストックできる。整備や点検を行う設備も置く。東京都江東区で今春稼働した約6600平方メートルの施設を前線拠点に位置づけ、両拠点を有効活用して効率的なレンタル建機の提供ができる体制にする。

 また、茨城県牛久市にはオリンピック関連イベントなどを想定してテントやイベント機材を収容する施設をつくる。1万6500平方メートルの旧工場を取得し、建物をそのまま活用する。6月から稼働する見通しだ。
日刊工業新聞2015年05月18日/ 05月29日/06月01日の記事を再構成
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
サッカー・なでしこジャパンのW杯がまもなく開幕します。東日本大震災直後の初優勝から、もう4年が経過しました。そう考えると東京オリンピックまでの5年間もあっという間。今後、建設分野に限らず、五輪需要を見すえて拠点や人員を増強する企業の記事が紙面を一層賑わしていきそうです。

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