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アマゾンの「エコー」が品切れ。グーグル対抗で大幅値下げの損得は

「エコー」はリビングの支配者になれるか
 米アマゾンが販売する音声アシスト機能を搭載したスピーカー「エコー」が品切れ状態となり、ブルームバーグの報道によると、180ドル(約2万1200円)のエコーは来年1月19日まで在庫切れで、50ドルの「エコー・ドット」はクリスマスが終わるまで入手できないという。競合の「グーグル・ホーム」が129ドルで発売され、アマゾンは対抗手段でエコーとエコー・ドットを最近大幅に値下げした。

 2014年の投入以降500万台販売。エコーは人の声を認識し、音楽を流したり照明を調整したり、ピザを注文したりすることができる。

消費者に本当に欲しいものを気づかせてくれる?


 アマゾンは音声認識機能を搭載するスピーカー、「エコー」を昨年6月に発売している。実際のところ、エコーはスピーカーというよりはリビングルームに置かれたパーソナルアシスタントと考えたほうがよいだろう。話しかければ、音楽をかけてくれるだけではなく、スケジュールから料理のレシピまで、さまざまな情報を得ることができるほか、当然、買い物もできる。機能自体はスマートフォンの音声認識に近い。

 家電をはじめとする、ハイテク機器の多くが音声コマンドによって操作可能になりつつある。アンドロイド端末における検索の20%が音声によるものだったという近年のデータもあり、人間が機械に話しかけ、機械が人間の活動をサポートすること自体が、今では当たり前になりつつある。

 エコーの日本での発売は未定であるが、英語圏では既にヒット商品になっている。製品レビューには、「人間と会話していると錯覚する」というようなものもあり、アマゾンの音声認識技術が、アップルやグーグルに引けを取っていないことを示している。

 また、リビングルームに置かれることを想定しているためか、スマートフォンのように特定の個人の話し言葉だけでなく、家族全員の話し言葉を、ある程度の距離からでも正確に認識することにも配慮がされている。

 アマゾンは、家族がさまざまな生活シーンで何げなくエコーに語りかけ、エコーがそれに応えるというプロモーションビデオを公開しているが、これをみると我々がかつて描いたコンピューターと人間の関係が具現化されている。

 グーグルが今年発表した「グーグル・ホーム」も同様の機能を備えていると思われるが、アマゾンはリビングルーム戦略において、グーグルに先んじているとも考えられる。

 創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾスはこれまで自社のAI戦略に関して具体的なことを語っていない。しかし、エコーを市場に投入することによって、家族単位での生活に密着したデータを取得し、それを現在の本業に生かそうとしていると考えればよいだろう。
 
 アマゾンは、消費者それぞれが理にかなったように感じる、あるいは本当に必要なものを気づかせてくれたと思うような提案を行うことで消費を促し、これまで成長してきた。

 これはアマゾンが購買履歴に基づくアルゴリズムによって可能にしてきたものであるが、今後は、リビングルームに置かれた人工知能からも消費者のさまざまな需要や要望を、より敏感に感じ取ろうとしている。
(文=湯川抗 昭和女子大学グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科教授)

日刊工業新聞2016年12月21日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
潜在需要がそれだけ高かったということか。食品などを販売するコンビニ型の実店舗「アマゾン・ゴー」といい、O2Oでアマゾンは人々の生活にがっつり入り込んできている。

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