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初の「防衛技術戦略」、コストの歯止めはかけられるか

装備品取得・開発で効率化が不可欠に
初の「防衛技術戦略」、コストの歯止めはかけられるか

次期輸送機C-2の量産初号機(川崎重工提供)

 防衛省が初の「防衛技術戦略」を策定した。優れた防衛装備品を効率的に取得・開発することを目的としたもので、わが国の防衛産業の将来にも大いに関わる。民間の知恵を積極的に取り入れつつ、コスト圧縮に努めてもらいたい。

 同省は昨年、防衛装備庁を設置し、民生技術の活用を含めた研究開発力向上を目指している。防衛技術戦略は、有識者会議の報告を経てまとめた。

 同時に、主要な装備品にプロジェクト管理の手法を適用する「取得戦略計画」を策定した。「P―1」対潜哨戒機、「C―2」輸送機などすでに制式採用したものから「新艦艇」「将来戦闘機」など構想段階のものまで12事業を選定。装備品の目標や取得時期、開発・運用・廃棄を通じたライフサイクルコストなどの基本方針を定めた。

 注目すべきは、当初想定したコストを30%以上、上回った場合に「計画見直し」、50%以上では「中止」を検討すると明示したことだ。「米軍の基準にならった」(装備庁幹部)という。装備品の開発は目的最優先になりがちで、費用面では逸脱することが少なくなかった。一定の歯止めをかける仕組みは評価できる。

 ただ民間のプロジェクトも同じだが、初期段階では見積もった事業費を大幅に上回るケースもある。一律に数値を当てはめて研究開発の将来を閉ざすような官僚的な対応ではいけない。

 また費用の圧縮には高度技術の国際共同開発や装備品の輸出、官民共用化など多くの手法がある。防衛省には経験の乏しい分野だ。最初は試行錯誤することになろうが、技術の目利きのできるプロジェクトマネジャーを育成し、効率的な装備品取得を実現してほしい。

 2017年度予算の防衛関係費の概算要求は、4兆9735億円(前年度比2・3%増)と4年連続増。米軍再編経費などを含めれば総額で5兆1685億円に達する。この上、巨額投資が必要な「将来戦闘機」などの開発が決まれば財政への圧迫は避けられない。自衛力にも効率化の視点が不可欠だ。
日刊工業新聞2016年9月1日「社説」
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
大臣によって自分の色を出したがる人とそうでもない人がいる(防衛省に限らず)。稲田大臣になって制服組との関係はどのように変化していくか。

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