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医療機器大手、成長戦略を診る《テルモ#04》カテーテル関連で米国市場狙う

年平均20%成長目指す
医療機器大手、成長戦略を診る《テルモ#04》カテーテル関連で米国市場狙う

テルモは血管に留置するステントなど治療機器に力を入れる

 医療機器メーカー各社が成長戦略として「診断から治療へ」と事業領域の拡大を図る中、カテーテルなどを手がけるテルモは治療機器分野を主戦場に海外勢と渡り合っている。売上高は5250億円(2015年度見込み)と国内2位。国内上位企業の大半が診断系装置メーカーの中にあって、テルモは治療機器分野で突出した存在だ。

 テルモは中期経営計画(13―16年度)の最終年度に入った。当初は売上高5800億円を掲げていたが、「売上高を追うよりもまずは利益を高める」(新宅祐太郎社長)と、収益体質の改善を優先させた。現在の最大の目標は営業利益率20%の達成だ。

 これまでに収益改善策として欧州でホスピタル事業を再編したほか、中国では長春の血液工場の閉鎖に踏み切った。中国では販売代理店網の見直しにも着手し、内陸部の顧客カバー率が拡大して「サプライチェーンマネジメントが大幅に改善された」(新宅社長)。

30年ぶり新工場


 中国は経済減速の影響で医療機器に限らず売り上げが落ち込む企業が増えているが、テルモは直近の15年4―12月期で中国売上高が前年同期比53%増と好調だ。中計を見直し改善を進めた効果が表れ、15年度は営業利益800億円、当期利益500億円と過去最高を更新する見通しだ。

 17年度からの次期中計を見据えた先行投資も着々と進める。国内では約30年ぶりに工場を新設。カテーテルのマザー工場と位置づける山口工場は年初から本格稼働を始めた。ガイドワイヤなど高度な生産技術が必要な基幹パーツを山口工場で一貫生産し、製品の組み立てなど人手がかかる工程はベトナム工場に全面移管する。

 テルモは特にカテーテルを誘導するガイドワイヤなど治療時に必ず使用するアクセス機器が強い。ガイドワイヤの基幹パーツを国内生産する一方、海外移管で生産コストも低減し製品競争力を高める。山口工場では20年度に売上高300億円を見込む。

「低侵襲」に需要


 次世代製品の研究開発では米国に拠点を相次ぎ開設。米国のベンチャーキャピタルファンドにも出資し、その取り組みの一環として低侵襲治療装置を実用化するためのベンチャー企業も立ち上げた。米国は世界最大の市場であり、事業を成長させる上で米国市場の開拓が欠かせない。現在、海外売上高比率は6割を超え、特に米国事業の伸びは著しい。現地で直販体制を整えた10年前から売上高は倍増している。

 米国では手首からカテーテルを挿入する経橈骨(とうこつ)動脈カテーテル術(TRI)の需要が増え、テルモの製品シェアが順調に伸びている。今後も米国事業で年平均20%の成長維持を目指す。
日刊工業新聞2016年4月19日 ヘルスケア面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
世界のヘルスケア産業は年5%程度成長を続けている。その中で、テルモは海外の売上高比率が約6割と、世界の競合他社と堂々渡り合っている。「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、再生医療等製品「ハートシート」も条件付きの承認を得ており、市場化を目指している。新分野への開拓にも意欲的だ。

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