「地方ホテル」から見た中国経済。民泊と星野リゾートの可能性

構成=ニュースイッチ

「昇龍道」人気で、中国人観光客も増えている白川郷

 2015年の訪日外国人客数は1900万人(15年12月末)を突破し、最も多い中国人観光客は約4分の1を占めた。インバウンドはまだまだ成長中で、その経済効果は地方にも波及しつつある。分かりやすい伸び方をしているのが、ホテルの稼働率だ。  観光庁統計によれば、15年10月の東京都の稼働率はシティーホテル87・9%/ビジネスホテル89・2%で、大阪府はそれぞれ91・3%/89・3%、京都府は94・4%/89・2%。業界では85%以上が満室状態とされるので、都市部のホテル不足はかなり深刻だ。中国人観光客を乗せたツアーバスの多くは、東京を断念して周辺地域に宿泊しており、そのため千葉県(82・9%/71・4%)や埼玉県(84・7%/79・1%)などの稼働率も伸びている。  また、愛知県(86%/82・1%)の動きも見逃せない。これまでは名古屋が東京や大阪から日帰り圏だったため、宿泊者が少なく稼働率は60%台が普通だった。それが急に伸びているのは、「昇龍道(ドラゴンルート)」と呼ばれる観光ルートが、中華圏で人気になっているためである。  これは名古屋を起点にして伊勢神宮(三重県)、白川郷(岐阜県)、飛騨高山(岐阜県)、松本城(長野県)、兼六園(石川県)などを巡るもの。能登半島を龍の頭に見立て、龍が昇るように北上することからこの名前が付いた。中部運輸局や地元自治体が「日本の美しい風景」を前面に出して海外PRを展開した結果、定番の「ゴールデンルート」を経験したリピーターたちを惹きつけている。  さて、ホテルが各地で活況なのは歓迎すべきことだが、この満室状態が続いたままでは、4年後に東京オリンピック・パラリンピックを迎えるのはとても不安だ。その解決策のひとつとして、住宅の空き室に旅行客を有料で泊める「民泊」が注目を集めている。ブームの火付け役は、Airbnb(エアビーアンドビー)というアメリカ発のサービス。  外国人による騒音、ゴミ廃棄などが問題視されている一方で、ホテル不足解消の切り札として、政府も民泊について検討を重ねてきた。まずは、民泊を「簡易宿所」として扱い、旅館業法に基づく規制対象にする方針。その代わり簡易宿所の要件である床面積(33平方メートル以上)を緩和し、参入しやすくする。  一方、特区で民泊が許可されている東京都大田区を中心に、大京が民泊事業への参入を表明。さまざまな動きが出てきており、課題解決の先にはチャンスも多いと感じる。 (文=滝口亮・JCナレッジマネジメント代表取締役、日立市日中友好協会理事) 日刊工業新聞2015年12月3日付  星野リゾート(長野県軽井沢町)と日本政策投資銀行は2日、国内宿泊事業者を支援対象者とした共同運営ファンド「星野リゾート旅館・ホテル運営サポート投資事業有限責任組合」(ホテル旅館リニューアルファンド)を組成することで合意したと発表した。ファンドの規模は総額20億円で、年内の運用開始を目指す。  事業承継や耐震改修、過小資本などにより事業継続に支障を来す経営課題を抱えている国内宿泊事業者が少なくない。星野リゾートの星野佳路社長は「バブル期に建設した施設をマーケットに合ったものに建て替える必要がある。資金協力だけでは十分ではなく、ノウハウを提供して運営力強化を支援したい」とファンド設立の意義を説明した。 <日刊工業新聞2015年07月10日付記事から抜粋>   ―訪日外国人の拡大でホテル市場にはどのような影響がありますか。  「ホテルの稼働率は上がっているが、東京だけが様相が違うという感じで、東京と地方の差は大きい。訪日外国人は増えているものの、日本の国内観光の市場は年間二十数兆円と安定しており、星野リゾートも宿泊客の大半は日本人だ。サービスは日本人に支持されることが大事で、国内の旅行者の満足度を維持することが、訪日外国人の集客にもつながる」  ―16年に都市型の日本旅館「星のや東京」がオープンします。  「星野リゾートは世界の大都市に日本旅館を出すというのを目標にしている。80―90年代に日本のホテルが世界に進出したがうまくいかなかった。その反省を生かしたい。世界のどの都市でも、夕食をどの国の料理にするのかという選択肢と同様に、日本の旅館と西洋のホテル、どちらに泊まるかという選択肢はあってしかるべきだ。星のや東京は世界に進出するためのショールームであり、世界に出られるかというステップの場所でもある。ここで勝てなければ、世界には進出できない」  ―西洋のホテルと日本旅館の違いは。  「日本旅館の特徴は、セミプライベートであるということ。西洋のホテルは、ロビーやレストランに宿泊客でない人もいるが、日本旅館は宿泊客のみが玄関で靴を脱ぎ、くつろげる。そこが日本旅館の心地よさであり、譲ってはいけない線だと考えている。星のや東京が開業して、浴衣を着て、大手町を歩くようなことがあると面白い」  ―外国人が気軽に日本旅館に泊まれるようにするには、どうすればよいですか。  「日本旅館が快適性、機能性で西洋ホテルに負けていないということが大事で、それさえ担保されれば、外国人にも日本旅館が自然に受け入れられると思っている。機能的に足りないところを修正して、変えてはいけないところは変えない」  

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