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ジャマイカボブスレーが「下町」を選んだワケ

連盟会長に聞く。採用の決め手はダイナミックなデザインと操作性の高さ
ジャマイカボブスレーが「下町」を選んだワケ

ジャマイカボブスレー連盟のネルソン・クリスチャン・ストークス会長

 東京都大田区の町工場が中心となってボブスレーのソリを製造している「下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会」のソリが、ジャマイカ代表チーム用として採用された。採用の決め手などについてジャマイカボブスレー連盟のネルソン・クリスチャン・ストークス会長に聞いた。

 ―下町ボブスレーに乗ることに不安はありませんでしたか。
 「15日、テストの前にソリを見た。素材や形状、全てにおいてよくできていると感じた。コースのコンディションも良く、特に不安は感じなかった」

 ―下町ボブスレーを採用した決め手は。
 「ダイナミックなデザインと操作性の高さだ。3日間のテスト滑走を行ったが、初めて乗ったときから感触がよく、選手にはハンドリングがしやすいと好評だった。前後の切り替え部分がねじれる際もノイズがない。上位を狙うチャンスがあると感じている」

 ―今後改善してほしい点はありますか。
 「下町ボブスレーのソリは選手が乗り込む部分が前方向に斜めになっている。乗る際に引っかかるためこの部分を水平にしてほしい。また今回のテストでは3台のソリに乗ったが、ある1台のステアリングがベストだった。他の2台もここに近づけてほしい」

 ―ボブスレーメンバーの印象は。
 「親切で優しい上にエンジニアやマネージャーは技術を熟知しており、彼らの仕事全てが素晴らしい。こちらのリクエストにも即座に応えてくれる。デザインや材料などさまざまな面で勉強になり、とても楽しい。一緒に世界を目指せることに興奮している」

 ―プロジェクトは他国にもオファーを出しています。
 「我々は下町ボブスレーのチームと世界で戦う準備をしていく。ただ、ソリの性能の高さを知っている。独占しようとは思っていない。他国が乗るのは大歓迎だ」

【記者の目・技術力アピールにジレンマも】

 18日開いた会見で選手が「敵に情報を与えるため、あまり技術を公開しないでほしい」と発言する一幕があった。大田区の技術力をアピールする機会でもあるだけに、プロジェクトの趣旨を選手側に説明する必要もありそうだ。またジャマイカチームが結果を残さなければ、そもそも五輪出場資格が得られない。ここからが本当の勝負となる。
(聞き手=南東京・門脇花梨)
日刊工業新聞2016年1月20日 中小企業・地域経済面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
過去の日刊工業新聞の報道によると、「下町プロジェクト」は日本連盟の不採用決定を受け、ジャマイカ、ルーマニア、オーストリアの3国にソリの無償提供を申し入れていたとのこと。

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