阪大、東北大に続け!京大ベンチャーファンド、総額160億円で組成

民業圧迫?投資対象はどうなる

 京都大学イノベーションキャピタル(KU―iCap=京都市左京区、樋口修司社長、075・753・5303)は、ベンチャーファンド「イノベーション京都2016投資事業有限責任組合」を設立した。ファンドの総額は160億100万円。京都大学が国から調達した出資金292億円の中から150億円を拠出し、三井住友銀行が10億円、KU―iCapが100万円を出資する。運用期間は15年。  ファンドの投資対象は、京大教員による研究成果の事業化を目指す未上場のベンチャー企業(VB)など。基礎研究に強みを持つ京大の特徴を考慮し、ファンドの運用期間を15年に設定した。  京大が認定した民間ベンチャーキャピタル(VC)の日本ベンチャーキャピタル(東京都千代田区)や、みやこキャピタル(京都市左京区)の投資ファンドとも協力・補完し合う体制とする。これにより、再生医療やエネルギーなど、幅広い分野のVB設立を促す。 日刊工業新聞2015年9月11日付  国立大学の出資事業で2大学のベンチャーキャピタル(VC)が、金融機関から出資を集めてファンドを相次いで組成した。公的機関で生まれた技術の社会実装を、国費も使うベンチャー(VB)投資で進める活動がいよいよ始まる。大阪大学ベンチャーキャピタルの松見芳男社長、東北大学ベンチャーパートナーズの八浪哲二社長に他機関との連携効果などを聞いた。  ―三井住友銀行など5金融機関が18億円を出資したファンドは118億円強。年内130億円を目指します。  「資金の出し手は機関投資家と阪大だが、投資先選定などファンド運営はそれと切り離して我々VCが責任を持って行う。ライフサイエンスや環境などで研究者に『論文でなくVBで世に役立つ』ことを実感してもらうためにも、成功事例を出していきたい」  ―なぜ阪大が一番乗りだったのでしょう。  「企業の研究開発部隊が多数、学内に常駐し、大学と刺激しあう”インダストリー・オン・キャンパス“の蓄積が大きい。学外者の出入りに抵抗がなくなり、多様な協力を得られるようになった」  ―民業圧迫だという批判も受けました。  「創業前後の大学発VBに出資することは、リスクが高く民間VCには難しい。代わって我々が技術を探してVBを育てる。その後に民間VCとの協調投資につなげていく形だ」    ―七十七銀行など7金融機関から22億円も集めました。  「これによりファンドは計93億円弱。年末に向けて100億円弱を考えている。東北大の研究成果事業化に関心が高く、東北地域の創造的復興の方針に理解をもらった。大きなもうけを狙うより、きちんと回収して次のVBを育てるシステム確立を重視したい」  ―モノづくりVB重視とうかがいました。  「伝統的に強い材料、電気通信に近年のライフサイエンスが加わり、医療機器などが有望とみている。試作品がない段階での投資は難しいため、試作品開発まで大学で支援してもらい、それを受けて我々VCが投資する」  ―VBは都市部型ビジネスとの印象です。  「そんなことはない。思案する案件の多くは東北地域で創業の予定だ。一方でVCは大都市のように乱立していない。VBに対する追加出資の段階で、半分以上が民間VCとなるようにしたい」  <略歴>八浪哲二(やなみ・てつじ)70年(昭45)東北大理卒。81年ダイセル化学工業(現ダイセル)入社。08年取締役専務執行役員。15年東北大学ベンチャーパートナーズ社長。理学博士。宮城県出身、68歳。 【記者の目・大学改革の道筋整備に一役】  総額1200億円の事業予算が公表されてから2年半。規模がより小さくまとまりのよい2大学が、東京大学と京都大学に先んじた。大学の新しい形に向けて関係者が一丸となり、課題を一つずつ解決していく―。こうした姿勢が大学関係者に広く浸透することを願いたい。 (聞き手=山本佳世子)

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