【連載】挑戦する地方ベンチャー No.7 アイパブリッシング(後編)

日本で初めてのシビックテック団体を金沢から

金沢城ARアプリ

 自治体向け画像オープンデータのクラウドサービスを開始したアイパブリッシング。これには、同社がこれまで自治体や医療機関と連携し、企画から一丸となって新たなアプリやシステム開発を行ってきた経験が活かされている。  福島社長はもともとソフトウェアメーカーの研究職だったが、地元石川県金沢市を盛り上げ「いい仕事ができる町にしたい」という想いから独立。2009年にスマートフォンアプリの会社を立ち上げ、自治体からの受託によるアプリ開発を中心に行ってきた。2011年にアイパブリッシングとなり、現在5年目。新しい技術を取り入れた観光アプリが好評で、石川県からの受託で開発した金沢城を案内するアプリではAR(拡張現実)を導入。金沢城は城がほぼ現存していないが、ARで「当時はここに城壁があった」ということが表示されるようになっている。また同県和倉温泉の実証では、現地で観光しながら遊べるゲームを開発した。  「アプリの会社を立ち上げてまず興味を持ったのが、観光業界だったんです。そういったニーズは全国でありましたね」。観光アプリは多言語化しており、外国人観光客への対応ツールになっているほか、「どの場所がよく見られているか」などのログデータ提供も行っている。  自治体向けの他に柱となっているのが医療関係向けのアプリだ。例えば院内業務効率化のための「糖尿病治療アプリ」は、「チーム医療」のノウハウをアプリに落とし込み、医師、看護師、患者などの情報共有を可能にしたもので、医療関係者から注目されている。  「地元金沢を盛り上げたい」という想いから、企業活動とは別に市民団体「Code for Kanazawa」の代表としても活動している福島氏。同団体はアメリカ発のシビックテック(市民が地域課題をテクノロジーの力で解決する活動)を行う「Code for America」をモデルにしている。例えば、ボストンでは雪で消火栓が見えなくなってしまうことを防ぐため、市民が自主的に雪かきをしたくなるようなアプリが作られている。  「もともとボランティアに興味はありませんでしたが、これなら自分の強みを生かした活動ができると思いました」。自治体のオープンデータを使ったシビックテックに感銘を受けた福島氏は、2013年に日本初のシビックテック団体「Code for Kanazawa」を立ち上げた。課題は地域にあると考え、『Japan』ではなく『Kanazawa』とした。  実績を作るべく、まず地域課題を募集。それをもとに開発したのがゴミの捨て方がわかるアプリ「5374(ゴミナシ)」。ゴミの回収日や、ゴミの分別法が一目でわかるようになっている。ライセンスフリーで導入したい自治体は自由に開発ができ、全国80都市に広がっている。「5374」は経産省で表彰されたほか、政府のオープンデータ活用事例集にも掲載。さらにはGoogleでも紹介されたという。現在では全国で「Code for 」の団体が活動するまでになった。この経験が、画像オープンデータサービスにも多分に活かされている。  企業活動と市民活動の両面で、地域課題を解決する活動を全国に広げる福島氏。「今後はオープンデータや社会課題解決に興味がある人材採用を積極的に行いたい。また石川県に支社をいくつか作り、地元で働きたいという人材も採用していきたい」と話す。地域課題解決と最先端のテクノロジー実証、両方の経験ができる稀有な企業に挑戦する人材が増えることを期待したい。 <会社概要> アイパブリッシング株式会社 所在地:石川県金沢市西念1-2-33 設立:2011年5月 ※2009年4月からアイパブリッシング有限責任事業組合として事業開始 事業内容:スマートフォン向けアプリケーション、コンテンツの開発      スマートフォンを利用したビジネスのコンサルテーション Webサービスの開発/運営

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