電力小売り全面自由化「8兆円市場」の勝者は誰だ!

4月へカウントダウン始まる

 4月の電力小売り全面自由化をにらんだ顧客争奪戦の火ぶたが切られた。家庭向けの電力小売り事業に参入する東京ガスや大阪ガスなどが、具体的なサービスメニューや料金プランを発表し、契約申し込みの受け付けを始めた。一般家庭も価格やサービスの違いで電力の購入先を選べるようになり、電気代の節減や利便性の向上につながることが期待される。だが、新規参入のハードルは依然として高く、自由化の効果は推し量りにくい。  全面自由化後はすでに自由化されている工場などの大口需要家向けに加え、一般家庭や商店、事務所など大手電力10社が地域ごとに独占してきた小口需要家向けの電力小売り事業に参入できるようになる。電気料金に対する規制も段階的に緩和され、価格やサービス面での競争が始まる。  国内全体で20兆円規模になる電力市場のうち、小口ユーザー向けの市場は8兆円規模に上る。消費者の間でも全面自由化への関心が高まりつつあり、博報堂が全国1000人を対象に2015年1月にインターネットで行った調査では、6割強が契約先の変更を考えていると回答した。  電力の販売事業を手がけられる「小売電気事業者」として経済産業省が登録を受理した企業は、15年末時点で119社に上る。すでに都市ガス大手の東京ガスや大阪ガス、石油大手の東燃ゼネラル石油、東急グループの東急パワーサプライ(東京都世田谷区)などがガスとのセット販売などのサービスを打ち出し、契約の受け付けを始めた。いずれも競合する東京電力や関西電力より割安な料金プランを設定。都市ガスの販売事業や給油所(SS)の運営、鉄道沿線の開発などで築いた顧客基盤を生かして営業展開する方針だ。  迎え撃つ大手電力各社も、サービスや料金体系を見直す。国内最大の消費地である関東圏を地盤とする東京電力は、ソフトバンクやソネット(東京都品川区)、日本瓦斯(ニチガス)、TOKAIホールディングスなどと相次ぎ提携。通信サービスや携帯電話サービス、液化石油ガス(LPG)とのセット販売などで、割安感や利便性を訴求する考えだ。  ただ、自由化に臨む各社の姿勢には慎重さもみられる。ある電力会社首脳は「単身世帯などを狙っても、採算が合わない。電力使用量が比較的多い高所得者層などを狙う必要がある」と指摘する。  低所得者など電気をあまり使わない世帯向けの電気料金は、もともとかなり安めに設定してあり、値下げの余地が小さい。割引の原資に限りがある中で各社の攻防は、一部の客層を巡る局地戦になる可能性がある。  実際に東ガスや大ガスの料金プランでは、電気の使用量が対象地域の平均を上回る世帯に照準を定めて、割安感を出している。「通信とのセット販売などでは、差別化できないのではないか」(増田宰日本LPガス協会会長)といった指摘もあり、契約変更の動きがどこまで広がるかは不透明だ。  新規参入を果たす上では、一般家庭などに売り込むための営業網や、商材となる電力をどう確保するかといった課題もある。このうち電力の調達を巡っては、日本卸電力取引所が運営する国内唯一の電力卸市場の働きが期待されるが、この間は原発の停止で電力不足の状況が続き、卸市場で売買される電力の量も限られていた。このため電源を自ら保有しない事業者の小売り参入は難しいとされ、一足先に自由化された大口需要家向けの市場では、新規参入企業の販売シェアが5%未満にとどまっている。  今後、原発再稼働に伴い電力不足の解消が進む中で、余剰電力が卸市場にどれだけ出回るかが、新規参入や競争の進展を占うカギとなる。電力業界には競争が広がらなかった場合、「当局が追加の規制・制度改革に乗り出すのではないか」(電力会社首脳)と警戒する声もある。 ●鉄鋼●地域新電力●ガス・石油●携帯電話・IT●鉄道

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