2015年は本当に「地方創生元年」だったのか

施策具体化へ。注目の政府機関の地方移転は3月にも結論

今年は高齢者の地方移住も議論になった

 安倍晋三政権の看板政策の一つである地方創生。2015年度は施策具体化の元年となった。東京一極集中を是正し、人口減に歯止めをかけようと策定された政府の「総合戦略」に基づき今年、全国の自治体が求められたのは、それぞれの地域ごとの中長期の計画づくり。計画の出来栄えを反映した交付金の配分先も決まった。現場の実情を反映した支援を訴えてきた自治体にとっては、創意工夫の見せ所となる。  そもそも地方創生がクローズアップされたのは、増田寛也元総務相を中心とする民間の「日本創成会議」が14年5月に発表したリポートが発端。約1800の市区町村のうち約半数が消滅する可能性があると指摘した。その創成会議は15年もショッキングな提言を発表した。東京圏の75歳以上の高齢者が今後10年間で急増し、深刻な医療・介護不足に陥るとして、高齢者の地方移住を促すよう政府や自治体に求めたのだ。それが政府の検討する「日本版CCRC」構想の具体化に拍車をかけた。  ただ、12月にまとめた政府の有識者会議の最終報告書では、高齢者の地方移住は「あくまで住み替えの意向のある高齢者の希望実現を図る選択肢の一つ」と明記。意思に反して移住を進めるものではない点を強調した。高齢者の地方移住を「姥(うば)捨て山」と受け止める批判の声が上がったためだ。政府は今後、構想実現に前向きな自治体を選びモデル事業などを展開する。  「隗(かい)より始めよ」を目指して検討が進む政府機関の地方移転計画も15年度内には結論が出そうだ。自治体が誘致を希望する中央省庁や国の研究機関など69機関について、政府は移転対象を絞り込んで16年3月の決定を目指す。ただ、所管省庁の抵抗もあり、実現するかは不透明だ。  大都市への一極集中是正と地域間の均衡ある発展―。歴代政権が挑んできた難題に挑む動きは緒に就いたばかり。政策資源を効果的に活用し、息の長い取り組みにできるかが問われる。 2015年6月16日2015年6月16日付  民間有識者でつくる日本創成会議が高齢者の地方移住に関する提言をまとめた。医療や介護の受け入れ態勢が整っている41地域を候補地に挙げ、東京圏から移住を促すべきだとしている。政府も元気な時から地方に移り住み将来は介護や医療サービスも受ける「日本版CCRC」構想を進める。こうした動きを地方側はどう受け止めているのか。新潟で39年にわたり医療福祉事業や学校経営に携わり、サッカーJリーグ「アルビレックス新潟」会長や日本ニュービジネス協議会連合会会長としても知られる池田弘氏に地方創生のあるべき姿を聞いた。  ―日本創成会議の提言では高齢者の移住候補地のひとつに新潟県上越市が挙がっています。  「そうだろう。当グループが経営するサービス付き高齢者住宅でも、すでに入居している利用者が首都圏から兄弟を呼び寄せるケースが増えているし、県内在住者が冬場だけ利用するなど利用形態は多様化している」  ―すると、高齢者の地方移住は実現性の高い政策といえますか。  「(創成会議が)地方移住のあり方に一石を投じた意義は大きいが、移住を促す前に取り組むべき課題は多い。最も重要なのは、地場企業を中心とした地域経済の活性化。経済や雇用を支える中堅企業が革新性を発揮し、若者のチャレンジ意欲を受け止め、そこで働きたいと思わせる。若者を含むあらゆる世代を惹きつけ、スポーツや文化面でも暮らしへの充足度が高い地域にこそ、移住は促進される。既存施設の需給バランスからアプローチする施策は現実的ではない。地域経済に影響力の大きい中堅企業を強烈に応援する視点が重要だ」  ―それが高齢者を含めた人材誘導につながると。  「地方移住はこれまでの暮らしから完全に切り離されるものではなく、社会経験や人脈を発揮できるコミュニティーが備わってこそ。日本版CCRCも同様だが、単に施設が空いているから地方に誘導する発想では税財源の問題以上に移住促進の原動力とはならないのではないか」  ―まちづくりの面でも生活圏として一定の機能を備えた中核都市の潜在性や可能性に着目した施策を実施するべきだと指摘していますね。  「一定の経済規模を持つ中核都市は、多様な生き方を実現できるからだ。昨今の施策はコンパクトシティー化に力点が置かれているが、都市機能を再構築しなくても老朽化したインフラ整備など必要最小限の対策を講じるだけで、暮らしやすさは向上する。地方創生は中核都市を動かす施策効果が大きいと考える」  <プロフィール>  池田弘(いけだ・ひろむ)国学院大学で神職を学び1977年新潟市の愛宕神社宮司に就任。同年新潟総合学院を開校。代表を務めるNSGグループは30校を超える専門学校や大学、医療福祉施設や商社、ホテルなども運営。起業支援にも取り組む。新潟県出身、65歳。 (文=神崎明子)

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