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“中国ショック”が直撃する建機業界。復調はいつか

1000人を削減したコマツ。「このままマイナス50%が続くとは思わない」
“中国ショック”が直撃する建機業界。復調はいつか

建機需要の大幅な低迷が続く(中国で稼働する日立建機の油圧ショベル)

 「下期も回復しないだろう。地方政府が疲弊している。不動産もだめだ」―。日立建機の桂山哲夫執行役常務最高財務責任者(CFO)は中国の建設機械需要の低迷を嘆く。中国が新常態への移行へ産みの苦しみを続ける影響を最も受けているのが建機業界だ。

 地方政府の公共工事抑制や不動産投資の鈍化により、油圧ショベルの需要は前年同月の半分ほどに落ち込む。中国の不振が原因で、日立建機は2016年3月期連結業績予想を大幅に下方修正した。35歳以上の社員を対象とした早期退職制度も実施するなど、経営全体にも影響が及んでいる。

 コマツも中国で6―9月に約1000人の人員を削減。油圧ショベルの部品生産拠点の統合などの構造改革も実施した。
 地方政府が投資を控えているため、鉄道敷設や河川造成などの大型工事が減っている。習近平国家主席が進める反腐敗運動での摘発を恐れ、大型工事に後ろ向きになっている点もある。

 【「新常態」カギ】
 需要低迷は底を打ったのか。あるいはさらに悪化するのか。コマツの藤塚主夫専務執行役員CFOは「もう少し状況を見なければわからない」としつつ、「このままマイナス50%が続くとは思わない」との認識を示す。

 どうすれば需要は回復するのか。コベルコ建機の藤岡純社長は「まずは地方政府の財政難が解消されなければ」と条件を挙げる。「新常態による新たな成長路線が整うことが必要」とも見通す。中国政府が景気減速にどんな手を打つか次第という面がある。

 【中国政府頼み】
 中国政府に期待する声は強い。日立建機の平岡明彦執行役専務は「中国政府がお金を入れるのは間違いない。1年かかるとして、17年第2四半期ごろになるのでは」と需要回復の時期を見通す。

 「景気刺激策と(反腐敗運動などの)制御、つまりアクセルとブレーキの両方だろう」と手綱さばきに注目する。
 コマツの藤塚専務執行役員CFOも「中国政府がどういう方針を示すかだ。このまま黙っていることはおそらくない。需要が戻るには何かきっかけが必要」と指摘する。悩みのタネである需要低迷がいつ変化するか。中国政府頼みという弱さはあるが、各社は反転の時機をうかがう。

コマツ、構造改革は継続


 コマツの大橋徹二社長は29日、報道各社を対象に開いた2015年4―9月期連結決算説明会で、需要低迷が続く中国で6―9月に約1000人の人員を削減したことを明らかにした。併せて、油圧ショベルの部品生産拠点の統合などの構造改革も実施した。早期の需要回復は難しいと見込んでおり、「かなり進んだが、やるところは残っている」と今後も構造改革に取り組む方針を示した。

 中国では地方政府の公共工事抑制や不動産投資の鈍化により、油圧ショベル需要が前年同月の半分ほどに落ち込む状態が続く。大橋社長は「需要が異常に低いのは間違いない」との認識を示し、「全体として人が余っており、かなりの人数を減らした」と、工場など各地の拠点で人員削減を実施したことを説明した。

 すでに実施した構造改革では、バケットの生産を車体の生産工場に集約したほか、上海での補給部品の生産や北京の鉱山機械用の補給倉庫を別の工場に集約した。拠点の統合によりオペレーションを効率化させた。

 山東省済寧市では、2社に分かれていた工場を1社に統合し、事務部門をまとめた。組み立ての人員を部品に回すなど、負荷に合わせて工場の操業を効率化した。

 通常は春節明け商戦に備えて生産を増やす時期だが、「来年の春節がどこまで需要があるかわからない。特段大規模な増産計画は立てていない」と生産能力の範囲内で対応できるとの考えを示した。
 
2015年10月30日1面&機械面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
この数年間、中国市場が収益を牽引してきた建機業界だけで反動は仕方ない。逆に各社は構造改革のチャンスでもある。やはり打つ手が早いコマツの動向を子細に見ておく必要がある。

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