村田製作所は一日にして成らず(3)旧態依然が強さの秘密

こだわりの垂直統合

SAWフィルターのメーン工場である金沢村田製作所

 日本の家電や半導体産業を窮地に追い込んだ垂直統合モデル―。負の遺産というイメージが先行するが、村田製作所には競争力の源泉として脈々と受け継がれている。  携帯電話の心臓部である通信モジュール。村田製作所は同製品で世界シェア約5割を握るトップメーカーだ。通信事業本部本部長で、取締役常務執行役員の中島規巨は、その理由を「小型・高性能で、供給量を保証できる生産能力を持っている」と分析する。  スマホの急速な普及で、周波数の利用効率の高い高速無線通信(LTE)市場が伸長。携帯電話などのアンテナ付近に搭載され、送受信や周波数帯(バンド)の切り替えを行うフロントエンドのモジュール(FEM)などの需要が急拡大している。  同分野で威力を発揮するのが垂直統合だ。FEMに加え、表面弾性波(SAW)フィルター、パワーアンプなど、LSI以外の主要部品を全て自前で展開。アナログ特性のすり合わせが必要な通信モジュールは、外部部品の組み合わせには限界があり、各部品を一緒に開発できる効果は大きい。中島は「競合と比べてこれが一番の強み」と強調する。  対極にある水平分業は、投資リスクの低減など確かにメリットも少なくない。競合のPAメーカーなどは完全な水平分業体制を敷く。ただ「特性の最適化など多様化する顧客ニーズに応えられるか」が同分野には不可欠で、ここに垂直統合の強みが発揮されている。  垂直統合の利点は生産面にもある。SAWフィルターは装置産業の主たる製品。競合が一から自前で手がけるには、膨大な技術投資や設備投資が必要。中島は「ここは優位にしないといけない部分」と力を込める。    フロントエンドモジュールは、部品生産から組み立てまで、サプライチェーン管理(SCM)をほぼ国内で完結。これは「問題が発生した際のフィードバックなどでスピード感が出せる」(同)ことを意味する。中島は「迷いながらやっている」としつつも、国内生産の意義を強調。ここ3年は積極的に能力増強を続ける意向で「村田の信念である『雇用を守る』ことにもつながる」と笑顔をみせる。 (敬称略、肩書きは当時のまま)

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