“声のブログ”で人気沸騰、Voicyが届けたい音声メディアの本当の価値

連載・音の時代がやってくる#02

Voicyの緒方憲太郎CEO

「音声の時代がくる」―。Voicy(東京都渋谷区)の緒方憲太郎CEO(最高経営責任者)はそう信じて疑わない。同社はビジネスの専門家や著名人などによる10―30分程度のトークを編集せずにそのまま届ける新しい音声メディア「Voicy(ボイシ―)」を展開し、注目を集めている。“声のブログ”というコンセプトで人気に火がつき、利用者は累計350万人に上る。新聞やラジオ局、ウェブメディアなど他のメディアとの連携も相次ぐ。ではなぜ今、音声なのか。次の時代に音声メディアが求められる理由と、ボイシーが目指す世界を緒方CEOに聞いた。(聞き手・葭本隆太) ―なぜ音声メディアを立ち上げたのですか。  音声の時代がくると思ったからです。世の中の情報を得る場所が新聞からテレビ、パソコン、スマートフォンへと移り変わってきた中で、この次がくる。私はそれが音声だと考えています。(実際、技術の進化などにより)音声でコンピューターを操作する「VUI(ボイス・ユーザー・インターフェース)」や(米アップルのワイヤレスイヤホンである)「Air Pods(エアー ポッズ)」といった音声情報が取得しやすい環境などが揃ってきています。 (そうした将来を見通して)我々は社会の中に音声産業を実装するためのインフラを作る会社としてスタートしました。その中で、人の生活の至る場所から音声情報が出てくるようになると音声コンテンツが明らかに足りなくなると思い、人が喜ぶ新しい音声コンテンツとして「ボイシー」を立ち上げました。 ―ボイシーは「声のブログ」をコンセプトに掲げ、気軽に発信できる特徴を持ちます。そうしたメディアが求められると考えた理由を教えてください。  私自身が最も話を聞きたい方々はご自身の仕事を全力でやっており、音声で発信していません。そういう多くの知見を持っている方々が少しの隙間時間を使って話してくれないかと思いました。毎日文章を書いている人や動画を作っている人は決して多くないけれど、ほぼ全員が話しています。そのトップ2%の面白い人たちが(パーソナリティーになって)発信したら(聞き手側でも)喜ぶ人が増えると考えました。 ―パーソナリティーがトークを展開する音声メディアとしては長い歴史を持つラジオがありますが、ラジオとの違いはどのようなところですか。  ラジオはしっかり編成して作り込みますが、ボイシ―は編集せずにそのままを届けます。音声としての見せ方の巧さや表現力の豊かさは考えていません。ラジオ(のディレクターなど)からしたら何の工夫もないと捉えられるかもしれません。ただ、もし目の前に例えばイチローがいたら、台本を読むよりもため息を出してもらった方がよいと考えるのではないでしょうか。人そのものを届けることに本当の価値があると考えています。 ―一部のラジオ局が御社に出資していますが、彼らはボイシ―に何を期待しているのでしょうか。  ユーザーの反応データを取得できることや、フォロー機能などによりファンとのコミュ二ティーを作りやすいこと、1日24時間分のコンテンツしか出せないラジオに対し、(ボイシ―であれば)いくらでも出せることといったインターネットメディアらしい部分だと思います。 ―ユーザー数が累計350万人に上りました。  ユーザーは20―30代が多く、彼らは動画に親しんできた世代なので、音声コンテンツを新しいものとして受け入れています。人気のジャンルは自己啓発や健康、学びなど思った以上に多様です。一方のパーソナリティーは250人程度。月100件以上の申し込みがきており、3―5人くらいを採用しています。 ―パーソナリティーはどのような基準で採用しているのですか。  採用基準は非公表ですが、その人の声を聞いてみたいと思うかやジャンルのバランスなどを考慮して決めています。 ―今後はどのような人に発信してほしいと考えていますか。  多様なジャンルの方に登場して欲しいですし、スポーツ選手や文化人などは面白いと思いますが、こだわりはありません。我々がやるべきは、今のパーソナリティーが発信してよかったという環境を作りきること。発信に関わるUI・UXの向上はもちろんですが、将来はパーソナリティーがマネタイズできてそれが一つの仕事になるような世界を目指しています。 ―AIスピーカーが登場した際に「音声操作は恥ずかしさゆえに日本人には広がらないのではないか」と指摘されました。また、第三者に向けた情報発信は多くの人がテキストに慣れています。そうした状況がパーソナリティー拡大のネックになることはありませんか。  日本人特有と言われるようなハードルは時間が解決します。それはこれまでの歴史と一緒。(iPhoneが登場した時は)携帯の画面が見られることを日本人は嫌うから折りたたみ携帯の方がよいということを言われましたが、今やiOSは広く浸透しました。実名(の開示)は日本人に合わないのでフェイスブックは使われないとも言われましたけど、これも幅広く利用されています。それに苦手な人は苦手でもよく、分かってくれる人から使われると思っています。ただ、現状でも発信したいという申し出が月100件以上あることには何かの意味があると思っています。 ―テキストではなく音声だからこその価値はどこにありますか。  二つの要素があります。他の作業をしながら情報を取得しやすいことと、声によって温かみが出たり、感情情報が豊かになったりすること。企業による社内報の音声化も手がけていますが、(社長や社員の声を発信し、それを別の社員が聞くことで)社内のエンゲージメントが上がる成果が出ています。 ―一方で「R25」や「note(ノート)」といったテキストメディアとも連携していますね。  音声はじわじわと好きになっていくことに挑戦できるメディアですが、短時間ですぐに面白いと伝えるのは得意ではありません。そこはテキストメディアとの連携で補完できると考えています。(何よりも)メディア連携などによって面白いと思われるようなことにいろいろと挑戦したいと思っています。 ―ボイシ―は現在、どのように収益を上げているのですか。  一部の配信者にスポンサーが付いており、企業チャンネルには開設費をいただいています。今後は2―3つのビジネスモデルを考えています。その一つが音声広告ですが、(展開するのは)まだ少し早いとも考えています。 ―それはなぜですか。  面白い音声コンテンツ(の定義)が何かがまだ明確に分からず、コンテンツ自体も少ない現状で広告を差し挟めばお金を稼げるという考えでは面白いものは作れません。新しい市場をゼロから作っていくときに、お金が稼げるから参入するというプレイヤーが増えると(その市場は)育たないと思っています。ユーチューバーだって初期はお金を稼げるからやっていたわけではなく、趣味として配信していたわけですから。   ―利用者の拡大に向けた今後の展望を聞かせてください。  どうすれば面白いコンテンツが生まれるかをもっと研究していきます。いいコンテンツが増え、それを使って喜ぶ人を増やしたい。いいもの作っていけば(ボイシ―というプラットフォームは)勝手に大きくなると思っています。        

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