世界市場は1400億円超、eスポーツは日本で市民権を得られるか

「グランツーリスモSPORT」で競う選手(茨城県つくば市の国際会議場)

複数の競技者がコンピューターゲームで対戦する「eスポーツ」が、盛り上がりを見せている。海外ではスポーツとして認知が進み、五輪種目を目指す動きがある。ゲームや興行収入など関連ビジネスの市場規模も拡大する見通しだ。ただ、日本ではまだ市民権を得たとは言い難く、ゲームに熱中して社会生活を送れなくなる依存症の懸念への対策も課題だ。 eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略。1990年代にゲームの競技化が進み、2000年代になってeスポーツという呼称が使われ始めた。 ゲームソフトメーカーなどでつくる振興団体、日本eスポーツ連合(JeSU)は、ゲーム内容の競技性と、3カ月以上の販売・運営実績があることなどをeスポーツ用ゲームの公認条件としている。具体的には、格闘やシューティングのほか、パズル、サッカーなどのジャンルがある。 高額の賞金を懸けた大会などが開かれる米国は既にeスポーツ大国と言える存在で、欧州や中国・韓国でも人気は高い。市場調査会社によると、世界の市場規模は18年に930億円に上った。国別では、米国の317億円、中国の171億円、韓国の61億円に対し、日本は7億円にとどまる。 世界市場は20年に1400億円超に達する見通し。先行する欧米や中韓に追い付くには、観戦するファンを増やし、賞金などを拠出するスポンサー企業の参入を促す取り組みが必要だ。岡村秀樹JeSU会長は「課題の解決に向けて前進したい」と意欲を示す。 一方で日本では一般的に「ゲームはスポーツではない」との見方が根強いのが現状。世界保健機関(WHO)が19年にゲームに熱中して社会生活が送れなくなる依存状態を「ゲーム障害」として位置付け、懸念を持つ親も増えた。eスポーツが広く社会で支持を得るには「ゲーム産業の健全な発展が不可欠」(業界関係者)だ。 若者たちに従来の運動競技とは違う新たなスポットライトを当てるeスポーツ。東京五輪での採用は見送られたものの、米インテル社が五輪に先立ち、賞金総額5400万円規模の国際的なeスポーツ大会を開催する方針だ。競技としての発展は過渡期に差し掛かっている。 見事な逆転劇に会場が沸いた。19年10月に茨城県つくば市で開催された「いきいき茨城ゆめ国体」の文化プログラム、eスポーツ大会で行われた「ウイニングイレブン2020」(サッカー)の決勝戦だ。 3人一組のチーム同士が対戦。決勝は2チーム参加の茨城県勢同士の戦いで、3点リードされた茨城第2が後半追い上げ、優勝した。チームを勝利に導いた相原翼さんは「もっといいプレーを見せていけば、eスポーツ全体が盛り上がる」と今後の活動に意欲を示した。 大会ではカーレースの「グランツーリスモSPORT」、パズルの「ぷよぷよeスポーツ」の計3種目を開催。全国から代表が集まった初の大会で、約600人の選手が技を競った。 16年4月開設の「東京アニメ・声優&eスポーツ専門学校」(東京都江戸川区)のeスポーツ学科(生徒数約150人)では、これまで45人程度だった入学者が19年度には2倍超に急増。プロ認定を受けた教員の指導を受けながらの大会を模したゲーム練習や、緊張を解くための呼吸法などを学ぶメンタルトレーニングの授業がある。 ただ、同校の卒業生でもプロとして活躍できるのは毎年数人という。また、国内では高額賞金の大会はまだ少ない。競技には動体視力や反射神経が必要で選手としての全盛期は20代だ。指導者になったり、ゲーム会社に転職したりするプロもいるが、引退後のキャリアは確立されていない。 同校1年生の千坂敬弘さんは当初ゲーム嫌いの親にプロを目指すことを反対された。しかし、熱意に押されて今では最も心強い応援団だ。少しでもファンを増やすため銃撃戦ゲームでの自身のプレーを動画サイトやSNSに毎日投稿する。 千坂さんは「ネットで人気が出ればプロチームからのスカウトがあるかも」と期待する。 eスポーツ選手はいまや男子中高生のあこがれの職業という調査結果もある。若者の夢を支える環境づくりが急がれる。 eスポーツ界に飛び込んだ19歳のプロ選手と国内外の状況に詳しい専門家に日本のeスポーツの将来の展望について聞いた。 現在19歳の相原翼さんは19年4月にサッカーゲーム「ウイニングイレブン」(ウイイレ・コナミデジタルエンタテインメント)のプロ選手になった。相原さんは「大学に行くか迷ったが、18年のアジア競技大会(インドネシア・ジャカルタ)で金メダルを取り、19年2月の大会でも準優勝できて、もっと上に行こうと思った」と動機を語った。 練習時間は1日5時間以上。「プロになった以上結果にこだわりたい。eスポーツの発展にはみんなが憧れる存在が必要だ。大会ではゴールの瞬間だけに注目が集まるが、実際のサッカーと同じように途中のプレーや戦略も楽しい。それを伝えられる選手になりたい」と競技者としての向上心に燃えている。 国内外のeスポーツ市場を研究する馬場章・滋慶学園COMグループ名誉学校長は「eスポーツはメンタルやフィジカル、専門スキルのトレーニングを効率的に時間を管理しながら行う必要があり、まさにスポーツ。一日中ゲームだけに夢中になる依存症とは無縁だ」と話す。その上で「海外に比べ日本の市場規模が小さいのは、企業の資本が入るのが遅かったから。日本も追い付きつつあるが、市場規模の拡大にはプレーヤーだけでなく、イベント運営など業界を支える人材が増えることが不可欠だ」と話している。

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