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ヤマハ発動機がシリコンバレー新会社で得たいもの

自動運転やロボティクスの有力ベンチャーに出資
ヤマハ発動機がシリコンバレー新会社で得たいもの

自立飛行タイプを追加するリモコンタイプの「フェーザー」

 ヤマハ発動機は6日、米カリフォルニア州シリコンバレーに新会社「ヤマハモーター・ベンチャーズ&ラボラトリー・シリコンバレー(YMVSV)」を設立、稼働したと発表した。自動運転など先進技術の動向を調査したり、有力なベンチャー企業への出資を検討したりする拠点とする。

 YMVSVは資本金45万ドル(約5600万円)でヤマハ発が全額出資した。従業員は5人。「ビークル」「ロボティクス」「インダストリアル・ソリューション」を主要テーマに、事業開発を推進する。

 ヤマハ発は約1年前からシリコンバレーに駐在員1人を常駐させてきた。無人ヘリコプター事業の強化や4輪車事業への参入など、今後の事業領域の拡大に向けて拠点を設立し、先進技術の取り込みを強化する。

無人ヘリコプターで米国市場に参入


日刊工業新聞2015年6月8日付


 ヤマハ発動機は産業用無人ヘリコプター事業で年内に米国に拠点を設立し、同市場に参入する。2017年をめどに、リモコンタイプの「フェーザー」に自律飛行タイプを追加するほか、同社初となる電動ヘリについても研究開発中。無人ヘリは国内では農業用以外に、火山への地震計設置や放射線量モニターなど用途が拡大している。5年内に現在の2倍となる500機の販売を計画。海外販売の強化により、将来、100億円の売り上げを目指す。

 5月に米連邦航空局から農薬散布用飛行ロボット(ドローン)の飛行許可を獲得したのを機に、北米で事業を本格化する。米国では機体販売だけでなく、農薬散布など農作業も請け負うサービスモデルを検討中。このため現地拠点の設立に向けた準備に入った。

 カリフォルニア州はワインの産地だが、傾斜地にあるブドウ畑は有人機での農薬散布が難しい。また広大な農地の農薬散布の効率化など、無人機の需要は大きい。北米では18年に10億円の売り上げを見込む。東南アジアや欧州での販売も検討中。

 新機種開発も進める。現在、同社の無人ヘリはリモコンタイプの「RMAX」と、高出力で積載量が大きいフェーザー、自律飛行が可能な「RMAX G1」の3機種。17年をめどに、フェーザーの自律飛行タイプを追加する計画だ。

 さらに将来の市場投入を視野に、小型電動ヘリを研究開発中だ。従来機種より狭い範囲での農業使用を想定する。エンジンを搭載したヘリは、気圧の関係で高度1500メートル以上を飛ぶのが難しい。このため、電動ヘリの開発で、一層の用途拡大が期待できる。同社は無人ヘリで培った自律航行技術や姿勢制御技術を2輪車やバギー車、ボートなどに応用する研究も進め「陸・海・空」での実用化を目指している。
日刊工業新聞2015年08月07日 自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ヤマ発が持つ技術はこかれのイノベーショントレンドにすごく合っていると思う。日本企業のシリコンバレーの拠点の多くは、設立して満足しているケースが多い。いかに現地のコミュニティーに入っていって、現地の担当者が権限を持ってスピードある意思決定できるかだろう。

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