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人食いバクテリアに免疫攻撃が効かない理由、阪大が解明

新しい感染症治療に
 大阪大学微生物病研究所の山崎晶教授らは、「人食いバクテリア」とも呼ばれる「劇症型溶血性レンサ球菌」が免疫の攻撃から逃れる仕組みを解明した。レンサ球菌は手足の壊死(えし)や多臓器不全など死に至る症状を引き起こすことがある。このとき免疫細胞の表面にあるたんぱく質の働きを阻害する脂質を大量に合成して、免疫から逃れるとわかった。この合成を防ぐことで、免疫の攻撃を回避させない新しい感染症治療が期待できる。

 レンサ球菌は咽頭炎などでよくみられる細菌だが、一部の人で壊死や多臓器不全など重い症状が出る致死性感染症を引き起こす。このとき免疫から逃れて増殖するが、その仕組みは不明で治療も困難だった。

 研究グループは、レンサ球菌への免疫反応が起きるとき、免疫細胞の表面に発現するたんぱく質「ミンクル(Mincle)」が、レンサ球菌を生み出す脂質「モノグルコシルジアシルグリセロール(MGDG)」を認識し免疫反応が活性化することを突き止めた。

 一方、レンサ球菌はMGDGを元にして、ミンクルの働きを阻害する脂質「ジグルコシルジアシルグリセロール(DGDG)」を生み出していた。重症化したレンサ球菌にはDGDGが多く含まれ、同脂質を大量に生み出し免疫の攻撃を回避しているとわかった。

 研究成果は米科学誌「米国科学アカデミー紀要」に23日掲載された。

   


日刊工業新聞 2018年10月23日

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