「演算力×AI」で、わくわくするロボティクスの世界観が生まれる

カリフォルニア大学サンディエゴ校 ヘンリック・クリステンセン教授

クリステンセン氏

 モノづくり日本会議は特別講演会「人間とロボットが共生し協働する世界の実現に向けて」を開いた。経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の共催。2020年のワールド・ロボット・サミット(WRS)開催に向け、ロボット分野をけん引する識者が登壇して、WRSのメッセージである「ロボティクス・フォー・ハピネス」についてアピールした。  ロボティクスが今後どう展開し、未来はどうなっていくかを語りたい。まず大きなトレンドとして、大量生産からマスカスタマイゼーションへ、ということ。  私たちは消費者として自分だけの商品、例えば自動車やオーディオシステムを求めるようになっている。そうなると自動化で生産するのは難しい。また、世界は高齢化が進んでいる。特に日本では他の地域よりも早いペースで進んでいる。未来の社会において、いかに質の高い生活を提供できるかが問題になってくる。  良いニュースを取り上げると、携帯電話などを使い過去2年間で世界の演算力は急速に拡大している。ビッグデータを入手できるようになってきた。これからの本当の意味での革新はIoT(モノのインターネット)や自律運転車で起こる。  今私たちはその大きな革命の先端にいる。演算力に人工知能(AI)などを掛け合わせることで、今まで見たこともない製品を設計できたり、わくわくする世界観が生まれるようになるはず。そこにロボティクスが果たす役割がある。  そうなると製造ラインにはロボットが自然な形で入ってくる。自動車は作りやすい設計になってきていて、人が介在する必要性がなくなってきている。  携帯電話を平均的に1年で買い替えるのだから製品の寿命は短くなり、スマート工場ならば設計も1ラインを簡単に構成し直していくつもの製品を流せるようにしなければならない。そこで人間と一緒に作業する協業的なロボットが工場で使われるようになる。簡単なメカニズムを用いたスマートアシスタントだ。  専門サービスを提供してくれるロボティクスはどうなるか。私たちが求めるものを教育を受けたロボットが教えてくれるコンシェルジュロボットが現れる。  それからようやく出回ってきた自動運転車だ。2020年に大手自動車メーカーが自動運転車をさらに出してくればかなり普及するだろう。自動車を所有しなくても職場まで乗せていってくれるようになる。都市部で駐車場が不足している状況も含め、社会が大きく変化するはずだ。  既に世界中で7000機ある無人航空機も、規制の問題はあるものの、テクノロジーとして展開の準備はできている。10年、15年後にはパイロットの仕事はなくなっているかもしれない。  介護や運動機能を補助するロボットも今後出てくる。高齢者の友人になってくれるロボットも。ビジネスとして考えると、介護付き施設に高齢者が入ると米国では年間8万ドルかかる。自宅で過ごせればそれが2万ドルになる。6万ドル節減できればロボットが買えてしまう。そこに大企業が参入する余地が生まれるはずだ。  こうした大きなコンピューター革命の中で、教育はどう変わっていくか。ロボティクスを進めて行くには個別化された教育が必要で、皆がロボット専門家になるべきだと思う。ロボットを使ったよりよい初等教育で、デザインやエンジニアリングについても学んでもらう。  科学、技術、工学、数学の「STEM」という考え方があるが、そこにアート(A)が加わった「STEAM」が必要になる。WRSなどを通じて、ロボットは専門家だけでなく一般の人たちに使ってもらうようになるはず。そのためロボットには使い良さも含むデザインが重要となってくる。  ロボティクスは素晴らしい形で大きく成長しているところだ。センサー技術も最先端のものに成長しているし、カメラも処理系基盤など演算部分も安価になってきている。ロボティクスはメカニカルなシステムというより、今後よりスマートに、よりインテリジェントに進んでいくだろう。  これからロボットをインターネットにつないでAIを使い、センサー技術を駆使すれば、製造業であれサービス業であれ、大きな革命をもたらすことができる。  ただ、次の世代の市場がどうなるか、人をどう介護し、どんな新しい娯楽を提供するかといったことはまだわかっていないことも多い。だからこそWRSを開催する。研究を通じ社会に適切であるか考え、日常生活の中で使える堅牢(けんろう)度の高いものにしていかなければならない。

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