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ペットとお出かけ、意外な?穴場「油壺マリンパーク」

徹底的にペットフレンドリーな水族館
 京浜急行電鉄が運営する「京急油壺マリンパーク」(神奈川県三浦市)は、三浦半島の突端に位置する。京急の終点、三崎口駅から、バスで15分ほどのところにある。水族館としては珍しく、ペットと入場ができる。単に一緒に入れると言うだけでなく、パーク内はほぼ全てのエリアにペットと一緒に行動できるなど、徹底的にペットフレンドリーなのが特徴だ。

 油壺マリンパークが展示する海や川に生息する生物は、450種、6000点に及ぶ。人気はコツメカワウソやキタイワトビペンギン、バンドウイルカなどで、水槽の周りには常に人だかりがある。

 一日一回行われるコツメカワウソの餌付けも、ペットと一緒に楽しめる。人気者の「嵐くん」は、2頭の愛犬(マルチーズ♂・9歳と10歳)が中を覗いても、器用に手でえさを食べたり、転がってみたり、臆することない。他の動物に見られることにもすっかり慣れているようだ。

 油壺マリンパークでは、水槽などがある建物の中もペットを連れて入ることができ、その上、歩かせることも可能だ。犬を建物の中もOKにするなんて、粗相の心配がありそうなものだが、営業部の中井洋美さんは「飼い主さんがきちんと処理してくれれば問題ない」と話す。愛犬たちも普段目にしないような海の生き物に興味を示したりしていた。怖がっていることも多かったが。

 一日に二回、イルカとアシカのショーが開催される劇場内にも、ペットと観覧できる専用席が設けられている。ここまで、許されてしまうと、飼い主から見れば、しつけの度合いが試されるところだ。
              

 ペットを連れて油壺マリンパークを訪れたなら、是非見てもらいたいのが、劇場の隣にあるプールで泳いでいるバンドウイルカのジャンボくん(♂・推定24歳)だ。

 ジャンボくんは、大の犬好きで、プールを覗くことができる小窓に載せると、ほぼ100%の確率で犬の前で止まってくれる。人間がどんなに手を振ってのぞいても、素通りしてしまうので、犬に興味を示す理由があるはずなのだが、中井さんは「なぜ犬に必ず寄っていくのかはよくわからない」と話す。

 愛犬も窓に載せてみたところ、やはりジャンボくんは来てくれた。ガラスに顔をこすりつけて愛犬を凝視している。動物同士、コミュニケーションが取りたいのか、単に犬が好き、というだけでは説明が付かないほど、かなり長い時間、じーっと愛犬を見ている。

 結局、なぜかはよくわからないものの、犬を連れて油壺マリンパークに行けば、イルカを至近距離で見ることができるので、愛犬家にはおすすめだ。
               

 徹底的にペットフレンドリーな油壺マリンパークだが、最初からペットを禁止にしていなかっただけで、積極的に受け入れ、それを売りにしてきたわけではなかったと言う。

 「パーク内がペットOKと言うのを知らない人が多く、来園されてから知り、お問い合わせを受けることも多かった」(中井さん)と話す。

 ペットブームでもあり、家庭で飼われるペットの数が増えていることを受け、2015年7月から有料化し、1頭500円の入園料を設けた。これに伴って、ショーの座席に、ペットのスペースを作るなど、受け入れ態勢も整えた。

 有料化したにもかかわらず、16年度は、前年度比20%増の5000頭のペットが入場しており、認知度の向上もあって、年々増えてきている。

 犬は狂犬病注射やワクチン接種の証明書などを提出する必要があるが、基本的にはどのペットも受け入れている。過去にはふくろうを連れて入場した客もいたという。
                

 油壺マリンパークは、開業が1968年と老舗の部類に入る。施設はお世辞にも最新とは言いがたく、その上、京急沿線のエリアには西武ホールディングスが運営する「横浜・八景島シーパラダイス」があり、設備では、どうしても見劣りしてしまう。

 だが、入場者数は年々上昇。16年度は前年比7%増の30万人となった。その理由の一つが、生き物と距離が近く、ふれあいが楽しめるように、展示の仕方などで創意工夫していることと、ペットと気軽に入場できると言う点だ。

 さらにここ数年では、京急が販売する企画乗車券「みさきまぐろきっぷ」が呼び水になっている。みさきまぐろきっぷは、沿線各駅から三崎口までの往復の乗車券と、指定レストランでの食事券、レジャー施設利用券が付いている。

 およそ2000円分の食事券と1000~2000円の施設利用券、品川-三崎口間の往復乗車券で、3060円とかなりお得だ。2009年8月から販売を始め、徐々に売り上げを伸ばし、2016年は15万7,461枚を販売。私鉄の企画乗車券の販売数はおおむね3~5万枚で、みさきまぐろきっぷの販売数は実に5~8倍。

 私鉄の企画乗車券の中でも、指折りのヒット商品となっている。京急では「発売当時、乗車券に食事券や施設利用券がついている商品はなく、新規性がヒットにつながった」(営業企画課)と話す。現在、

 指定レストランは30店舗、レジャー施設は11カ所の中から選ぶことが可能で、この対象施設に油壺マリンパークが入っている。
               

 みさきまぐろきっぷは西武鉄道が6月から販売を始めた。直接乗り入れていない京急の企画乗車券を販売することについて西武は「企画乗車券の中でも圧倒的な人気を誇るみさきまぐろきっぷを販売し、西武沿線にお住いの方々のお出かけの機会を創出するとともに、沿線外から観光客を誘致したいという京急の思いが一致した」(広報部)と話す。

 みさきまぐろきっぷを利用して京急油壺マリンパークに入場した人の数は、16年は11年に比べ、6倍と大きく拡大している。みさきまぐろきっぷのヒットが、入場者数の増加にそのままをつながっている格好だ。

 油壺マリンパークでは、ペットフレンドリーである施設という特徴をアピールすべく、動物愛護の活動も活発にしていくと言う。4月にはパーク内で保護された犬や猫の飼い主を探す譲渡会を開催。今後も、「ペットと一緒に参加できるようなイベントなども企画していく」(中井さん)と話す。

 油壺マリンパークは、ペットを連れて行くことで、さらに違った楽しみ方があり、感動も味わえる施設だ。
ニュースイッチオリジナル
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
西武が販売する、みさきまぐろきっぷは西武の沿線駅から池袋駅、あるいは高田馬場駅までの乗車券と、品川駅から三崎口駅までの乗車券、プラス、食事券と施設利用券になります。池袋、高田馬場-品川間は、別にJRのきっぷを買う必要があります。もともと京急と西武の関係が深いと言うこともあるそうですが、直通運転していなくても販売するくらい、みさきまぐろきっぷは人気の企画乗車券です。

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