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小池知事、就任1年。「東京」にイノベーションハブの芽

次は国際金融都市へ変貌なるか
小池知事、就任1年。「東京」にイノベーションハブの芽

「東京テレワーク推進センター」開所式で(都知事活動レポートFBページより)

 東京都の小池百合子知事が8月1日で就任丸1年を迎える。都は世界の都市間競争にさらされており、都内産業の強化と立地としての魅力向上が課題だ。小池都政が競争力のある都を目指すには、創業率・開業率の向上、外国企業が立地しやすい環境づくり、都内企業の99%を占める中小企業への支援強化が欠かせない。

 中小企業主体の産業構造を持つ都だが、都内開業率は6・0%(2016年度)。近年は上昇傾向にあるものの、10%台の欧米主要都市に比べ大幅に低い。

 都では創業支援策として1月27日に東京・丸の内の明治安田生命ビル内にスタートアップ拠点「TOKYO創業ステーション」を開設。小さな事業を立ち上げる“プチ起業”から事業化までを支援する。

 1階のスタートアップハブ東京は気軽に創業を相談できる場として活動。2階には東京都中小企業振興公社が入っており、都と提携する東京TYフィナンシャルグループ、東京信用保証協会、日本政策金融公庫が専門相談員を置き、融資に関する相談に対応している。

 同拠点の登録者数(6月30日時点)は計5906人、相談件数は計2737人、来場者数はイベント参加者含めて7月25日時点でのべ2万人を突破。「想定より速い。男性7割、女性3割で、フルタイム勤務の方が約半数を占める」(都産業労働局商工部創業支援課)という。

 同拠点では創業を目指す仲間と発想から事業化まで体験できる少人数制3カ月間プログラム「トーキョードカン」を無料提供しており、第1期生が近々創業する予定だ。

 だが「(創業時から海外進出を狙う)ボーングローバル企業を目指す起業家の出現はまだまだ少ない」(奥山雅之明治大学政治経済学部准教授)。世界に通用するベンチャーの育成には、人材の発掘と育成が必要だ。
                  

事業承継、早めの計画促す


 都は中小企業の優れた技術を次代に引き継げるように、事業承継・再生支援を東京都中小企業振興公社と共に進めている。

 17年度からは企業を直接訪問する巡回相談員を増やし、経営者に早めの承継準備を促している。金融機関や大手メーカーのOBらで構成する約10人の専門スタッフが、公社の相談窓口で本業改善や事業継承計画策定を支援している。ただ、巡回相談を受けた後、相談窓口を訪れた経営者数は35社程度(16年度)とまだまだ少ないのが実情だ。

 中小企業の中でも製造業について、特にロボット、医療機器、航空機産業など成長分野の支援に力を入れている。17年度から東京都立産業技術研究センターと連携して航空機産業参入支援を強化。

 6月にフランスで開かれたパリ・エアショーでは、東京圏の中小企業コンソーシアム「TMAN」ブースの出展や商談会を後押しし、参加したTMAN企業も一定の手応えを得た。

 ただ、航空機産業や医療機器分野で具体的な受注に結びつけるには、大企業を巻き込んだ施策が求められる。都の中小企業施策に詳しい奥山雅之明治大学政治経済学部准教授は「国内での産地間連携や大企業と連携すべきだ」と指摘する。
「パリ・エアショー2017」で都がTMANブースを出展(東京都産業労働局提供)

「特区」奏功80社


 都は金融機関や先端技術を持つ外国企業の誘致も加速している。国家戦略特区制度に基づき、東京特区に業務統括拠点やR&D拠点を設置したか、3年以内をめどに設ける外国企業数は17年3月31日時点で累計80社。

 今のところ税制優遇や市場調査分析支援、ビジネスパートナーの発掘を支援する「無償経営コンサルティングサービス」などが奏功している。

 4月からは、都内に新拠点を設ける金融系外国企業向けの補助金制度も始まった。9月には先進的なフィンテック技術や決済、資産運用、セキュリティーなどのビジネスモデルを持つ国内未進出の外国企業を短期集中で支援する「フィンテックビジネスキャンプ東京」をスタート。5社ほど選定し、執務スペースの無償提供など支援する方針だ。

 産業界を支援する都庁自体の改革も進む。家庭と仕事の両立を目指す残業ゼロを狙った「20時完全退庁」を16年10月に導入し、4月から一部の職場で在宅型テレワークの試行を開始。今夏にも約30職場でモデル職場を設置する。

 時差勤務を9種類に拡大し、勤務時間帯に柔軟さをもたせたほか、6月―8月までは総務局の一部でフレックスタイム制を試行中だ。

 職員に持たせるタブレット端末の配備や通信環境整備といった課題もあるものの、「効率化の意識と定時退庁がある程度、根づいてきた」との声もある。上司への説明資料づくりの簡素化など、内部作業に割く時間の短縮を図りつつ、都民サービスや窓口業務を拡充するメリハリをつけた働き方が期待される。
                

(文=大塚久美)
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日刊工業新聞2017年7月31日の記事から抜粋
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
これまで、東京都の産業政策は極めて中途半端でした。主に産業労働局が担当しているのですが、その主な仕事は中小企業対策で、しかも内容は補助金のバラマキで、特に信用保証協会を使うことが多い。起業支援と言っても、担当者が変わるたびに名前を変えて出現する起業支援センター的なものが乱立、区との役割分担も不明確でした。そこには、東京都が先陣を切って国際競争力を高めるというようなポリシーは感じられませんでした。小池知事になってから「国際金融都市・東京」構想を軸に、金融系企業の誘致育成のみならず、イノベーションハブの設置をはじめとする新機軸が漸く生まれつつあるものの、まだ都庁内に経済政策を担当する部署があるとは言い難く、ここはいずれ組織の見直しを含めた抜本的な対応を要すると思っています。

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