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中小企業に聞いてみた。電力値下げで関電と新電力、どっちを選択?

関電ユーザー「引き続き(関電と)契約する」が90%にも
 関西地区で電気料金をめぐる競争が激化している。8月1日に関西電力のほか、大阪ガスを筆頭とする新電力会社が、相次ぎ値下げする。値下げは、全国的にも高い電気料金を強いられてきた関西の中小企業の収益改善につながると期待される。日刊工業新聞社は電力事情を探るアンケートを実施し、関西の中小製造業56社の回答を得た。調査から関電ユーザー、新電力ユーザーの行動パターンの違いも明らかになった。

 「競争になれば料金が下がる。消費者にはありがたい」(坂栄孝坂製作所社長)。今回の値下げを関西の中小は一様に歓迎しているようだ。荒木秀之りそな総合研究所主席研究員は「原油価格や人件費などが上昇する中、多くの中小は(製品への)価格転嫁がしにくい。電力値下げは数少ないコスト低下要因になる」とメリットを指摘する。

 回答企業56社が契約する電力会社は、関西電力32社(57・1%)、大阪ガスを含む新電力23社(41・1%)となった(1社は不明と回答)。

 大和ハウス系の新電力と契約する木田バルブ・ボールは「切り替えた一番の狙いはコスト削減。2016年は前年比20%、年間300万円以上をコストダウンできた」(木田浩史社長)と明かす。5月にリコー系の新電力に切り替えた理化学機器メーカーの経営者は「使用料金は一緒だが、基本料金が安く設定され、関電よりも安くなった」と強調する。

 関電と大ガスの今回の値下げに対する中小企業の対応は、関電と新電力のユーザーで分かれた。関電ユーザーは「引き続き(関電と)契約する」が90・6%と圧倒的多数。
 
 一方で、大ガスなど関電以外の新電力ユーザーは69・6%が「継続」としつつ、30・4%は「関電の提案を聞いてみたい」と回答した。新電力ユーザーは料金について常に比較する姿勢を持っているようだ。

 関電と大ガスはともに電気とガス料金のセット割引を提案している。ただ調査ではセット割の未契約者が92・9%あり、電力・ガス事業者の思惑が外れていることが明らかになった。
          

           

          

 多くの中小企業は東日本大震災以降、できる限りの節電対策に取り組んできた。今後も発光ダイオード(LED)などの照明設備や空調、製造設備の順で省エネルギーシステムの導入を検討する。

 また、電力自由化で電力会社に求めるものを聞くと「電力値下げ」や「電力の安定供給」「省エネの提案」の回答が目立った。

 関電は高浜原子力発電所3、4号機の営業運転を再開し、さらに17年度中に関電最大出力の大飯発電所3、4号機の再稼働が控える。

 これで関電はさらに値下げに踏み込む方針だ。値下げ実現の前提条件となる原発の再稼働は、回答企業の75%が「安心・安全を確認した再稼働は必要」と、好意的に見ている。

 電力の完全自由化は始まったばかり。今後も競争原理が働き、料金メニューの多様化は進みそうだ。一方で「携帯電話のように料金プランは複雑にならないでほしい」(南郷真ナンゴー社長)との声が上がる。

 また「過度な価格競争が品質・サービスの低下につながらないか」(八田明彦二六製作所社長)と危惧する声もある。

 法人向け電力販売は16年4月の小売り全面自由化より一足早く始まった。しかし、電力会社は企業と電気料金を個別交渉しており、大口顧客重視の傾向にある。このため中小向け対応は十分とはいえなかった。

 関西地区では関電と大ガスなど新電力の競争が引き金になり、電力会社は中小企業向けの顧客開拓にも力を入れつつある。すでに賢い中小経営者は、自主的に電力各社の料金メニューやサービスを比べ、メリットを生かしている。これまで契約変更に保守的だった中小経営者も、新電力会社の提案が増えることで、賢い選択ができるチャンスが訪れている。
             

                

《私はこう見る「関西経済にプラス」》


●日本総合研究所関西経済研究センター長 石川智久氏
 日本の電気料金は韓国など海外と比べ高く、国内空洞化の一因。関西電力の電力値上げ時は経営者から本当にしんどいという声が多かった。

 今回の値下げは歓迎したい。中小企業のマインドも良くなる。他社も追随し幅広く値下げが実施され、思った以上に関西経済にはプラスだ。

 経営者は電力コストを下げたい意識が高いが、電力各社の料金プランがわかりにくいと思っている。電力会社はプランありきではいけない。使い易さなどを踏み込んで分かりやすく伝えることが重要だ。

 政府も電力自由化による過当競争を注視する必要がある。電力会社で不当行為が起これば規制が生じせっかくの自由化に水を差す。

 一方、中小企業が電力コスト削減で浮いた資金を何に活用するか、経営者の判断となる。設備の省力化や社員の人材教育、福利厚生に使い社員の士気を高めたりして競争力を強化するなど、賢くお金を使うことが大事だ。
(文=電力自由化取材班)
■回答企業(回答56社、社名は匿名回答を除く)
ザ鈴木(大阪府守口市)、ラピス(同八尾市)、ティーリーフ(同八尾市)、ワールドインキュベーター(大阪市中央区)、日本プラテック(大阪府守口市)、中原化成品工業(大阪市平野区)、枚岡合金工具(同生野区)、サカイテック(堺市中区)、下西製作所(大阪府東大阪市)、シーホネンス(大阪市東成区)、中田製作所(同淀川区)、大同機械製造(大阪府高槻市)、福井精機工業(大阪市大正区)、富士電波工業(同淀川区)、プロアシスト(同中央区)、東海バネ工業(同西区)、木田バルブ・ボール(大阪府東大阪市)、東研サーモテック(大阪市東住吉区)、九飛勢螺(同住之江区)、中農製作所(大阪府東大阪市)、大峰工業(大阪市北区)、服部ヒーティング工業(同都島区)、東穂(大阪府門真市)、大阪フォーミング(同岸和田市)、電装精機(同守口市)、日藤ポリゴン(兵庫県多可町)、関西工事(同尼崎市)、中野製作所(同尼崎市)、ヤマシタワークス(同尼崎市)、梶原鉄工所(同姫路市)、丸十(同加古川市)、二六製作所(神戸市中央区)、近畿工業(同中央区)、マロール(同長田区)、大島(兵庫県三木市)、神鋼エンジニアリング&メンテナンス(神戸市灘区)、マルイ鍍金工業(兵庫県姫路市)、衣川製鎖工業(同姫路市)、寺内製作所(京都市伏見区)、ナンゴー(京都府宇治市)、宮木電機製作所(同亀岡市)、坂製作所(京都市右京区)、中嶋金属(同右京区)、阪村エンジニアリング(同伏見区)、大日本科研(京都府向日市)、夏原工業(滋賀県彦根市)、湖北工業(同長浜市)、近江鍛工(同大津市)、吉川国工業所(奈良県葛城市)、飯塚製作所(同大和高田市)、寿精密(和歌山県かつらぎ町)、島研摩機材(和歌山市)、アクロナイネン(同)
日刊工業新聞2017年7月28日
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
大企業と同様、中小企業も国内だけでなく海外と競争している。日本の電気代は海外に比べて高い。関西の中小企業に対する電力事情を探るアンケートで、電力自由化で電力会社に求めるものは「電力値下げ」や「電力の安定供給」「省エネの提案」と回答している。関電は高浜原発3、4号機の営業運転を再開し、17年度中に関電最大出力の大飯発電所3、4号機の再稼働を見込む。値下げ実現の前提条件となる原発の再稼働は、回答企業の75%が「安心・安全を確認した再稼働は必要」と好意的に見ている。事業を行う側はコスト意識が強く、原発に懐疑的な一般人とは異なる。

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