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航空機部品の3Dプリンター活用、設計も進化しているぞ!

ダッソーが複雑形状が自動算出するシステム開発
航空機部品の3Dプリンター活用、設計も進化しているぞ!

トポロジー最適化で導き出した金属部品の軽量化形状

 自動車や航空機など幅広い分野で活用されるCADソフト「CATIA(キャティア)」などを提供するダッソー・システムズ(東京都品川区、鍛治屋清二社長)。2017年に入り、複雑形状の軽量化部品を設計できる機能「ファンクション・ドリブン・ジェネレイティブ・デザイナー(GDE)」をキャティアに追加した。

 このGDEの主要な用途の一つが航空機の金属部品の3Dプリンター向け設計だ。GDEでは、コンピューター利用解析(CAE)によって理論的に最適な形状を導き出す手法「トポロジー最適化」を用いる。

 まず、航空機胴体やエンジンの固定を補強するフランジの設計では、設計データのうちボルト用の穴の位置など変更できない条件を決める。

 それ以外の形状は最適化するよう設定すると、部品の強度を保ちながら不要な部位を落とした複雑形状が自動算出される。従来の加工可能な設計に比べ、約60%軽量化できた例もあるという。

 だが、現在の3Dプリンターの造形精度では、トポロジー最適化で導き出した複雑形状を作れない場合もあるのが実態だ。そのため、GDE上で条件設定を緩和して、切削加工で処理できる形状を算出することもユーザーに提案しているという。

 この場合には、GDEで工具の太さや長さなどの制約を付けて形状を作ることができる。「従来の加工法を含め最適な技術の組み合わせを突き詰めていく」(3DSビジネストランスフォーメーション事業部)考えだ。

 海外では3Dプリンターで航空機の金属部品を製造する例があるが、国内メーカーの造形ではまだ品質などに課題があるとされる。プリンターの制御技術や造形物の熱変形など、積層造形には特有の課題が多いためだ。

 ダッソーは、設計からシミュレーション、生産に至るまで各種ソフトウエアを幅広く手がける。3Dプリンターの技術課題を乗り越えるため、今後も機械メーカーなどとの連携を深めていく方針だ。
(文=田中明夫)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
親会社の仏ダッソー・システムズは、81年に航空機メーカーのIT部門から独立して設立された。日本法人は94年に設立。各種製造業などを対象に設計やシミュレーション、生産管理などのソフトウエアを含むプラットフォームを提供する。世界140カ国に20万社を超えるユーザー企業がいる。 (日刊工業新聞第一産業部・田中明夫)

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