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トランプ「パリ脱退表明」で世界の環境団体は決意新たに

相次いでコメント
トランプ「パリ脱退表明」で世界の環境団体は決意新たに

トランプ大統領公式フェイスブックページより

 米トランプ大統領のパリ協定脱退表明に、国内の環境推進団体などが相次いでコメントを発表した。

 WWFジャパン・各国WWFととにも、トランプ氏が脱退を表明したほぼ1時間後に「強く抗議する」との声明を発表した(以下、声明の要約、カッコ内は引用)。

 「国際社会が、パリ協定の発効を受けて今まさに脱炭素化に向けての取組みを加速化させようという時に出された決定であり、既に発生している気候変動の影響に苦しむ人々や将来世代に対する裏切りである」と批判。

 そして「今回の決定はアメリカを含む、多くの国でのビジネスの流れにも逆行する」と指摘。1000社以上の米国企業が「低炭素経済の構築」を訴える声明に署名し、パリ協定にとどまるように要請していることに触れた。

 企業の動きは世界に広がっている。パリ協定と整合する温室効果ガス排出量削減目標にコミットする企業連合「Science Based Targets (SBT)」への加盟企業が世界で250社を超えていると紹介し、パリ協定支持が世界のビジネスの標準になっていると訴えた。

地球環境戦略研究機関(IGES)の声明のポイント


 (1)トランプ大統領によるパリ協定脱退表明によっても、世界的な脱炭素化のドライビングフォースは変わらない。

 (2)引き続き世界の9割近くの排出量がパリ協定によってカバーされ、取組が進められていく。

 (3)米国の企業、投資家の脱炭素化への行動は変わらない。

 (4)世界における石炭利用の減少傾向が変わることもない。

 世界の石炭生産量は13年の79・7億トンをピークに減少。米国も11年の9・8億トンから15年に8・1億トンへ減った。米国の石炭関連産業(石炭火力発電含む)の雇用も16年は16万人で、再生可能エネルギー関連の47万人よりも少ない。トランプ氏がパリ協定を離脱し「石炭復活」と叫んでも、雇用面での効果は薄そう。
 
 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(リコー富士通、オリックス、イオンなどで組織する脱炭素社会を目指す企業連合)のコメント(抜粋)

 「脱炭素社会への転換期においても持続的に成長する企業集団でありたいと考えています。今回の米国のパリ協定離脱宣言に関わらず、引き続き国内外の企業と連携し、積極的に脱炭素社会の実現に向けた活動を進めて参ります」

自然エネルギー財団(孫正義氏が会長)


  大林ミカ事業局長がコラム「自然エネルギーは止まらない」を発表(抜粋)。
  「化石燃料から自然エネルギーを基盤とする脱炭素経済への転換は、気候変動の危機回避を可能にするだけでなく、米国も含めた世界全体の豊かで持続可能な成長を実現するものだ。トランプ大統領の今回の決定は、こうした理解を全く欠く誤った選択である。しかし、米国の企業、州政府や自治体の多くは、連邦政府の誤った選択を乗り越えていくだろう」

各国は一致団結できるか


 トランプ米大統領が地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明し、先進各国や産業界に波紋を広げている。欧州連合(EU)を主導するドイツ、フランス、イタリアの3カ国首脳は連盟で遺憾の意を表明し、オバマ前大統領と歩調を合わせて協定批准の先陣を切った中国政府もあらためて、温暖化対策の履行を明言。また、米国の経済界でも、ゴールドマン・サックスやテスラなどの経営トップが批判の声を上げている。

 一方、日本政府も2日、岸田文雄外相が「先進国がリーダーシップを発揮し、パリ協定を着実に実施していくことが重要」とする声明を発表した。

 パリ協定は、先進国に温室効果ガス排出削減を義務づけた京都議定書(1997年採択)に代わって2020年以降、発展途上国を含むすべての国が協調して地球温暖化対策に取り組む国際条約。16年11月4日に発効した。

 米国は中国に次ぐ温室効果ガスの排出国。トランプ氏は選挙戦で環太平洋連携協定(TPP)に加え、パリ協定からも離脱する意向を表明していた。

 パリ協定は各国の自主的な取り組みにより、「気温上昇を産業革命から2度未満、できれば1・5度に抑え、21世紀後半に温室効果ガスの排出実質ゼロ」を目指している。

 温室効果ガスの主要排出国である米国が離脱すれば、各国の取り組みに影響を与えるのは間違いない。

ファシリテーター・永里善彦氏


 選挙公約を実行に移す試みを続けるトランプ大統領は、「TPP」離脱に続き「パリ協定」からの離脱を表明した。非常に重い決断である。世界の温室効果ガス排出国1位と2位の中国と米国がリーダーシップを発揮した「パリ協定」、G7サミットでの各国首脳の説得にも関わらず、そして米国世論の70%が離脱に反対(NHK)しているにも関わらずである。

 米国の離脱は、各国に影響を与え、とくに先進国からの技術と資金を引き出したい途上国に失望感を与えよう。存在感を増したい中国は、ドイツを訪問中の李克強首相が、メルケル首相に「パリ協定」を順守する旨述べた。

 「パリ協定」の規定により米国は3年半後に正式に離脱できるが、更に早く離脱したければ、「パリ協定」の上位にあるUNFCCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)から離脱すれば自動的に1年後に離脱できる(有馬純)。米国の離脱表明に対して各国は、一致団結し「パリ協定」を順守し実施していくことが求められる。
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松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
米国ではテスラのイーロン・マスクCEO、アップルのクックCEOなど経営トップも声明や行動を起こしています。日本企業もトップが発言してほしいです。来週、新聞では関連インタビューを掲載します。

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