「みちびき」今日打ち上げ。宇宙ビジネス最先端の米国を測位せよ!
欧米より高い位置精度、自動運転などに応用へ
内閣府は6月1日9時20分に、地上の位置と時刻を正確に特定できる準天頂衛星「みちびき」2号機を種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から、三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「H2A」34号機で打ち上げる予定だ。競合する米国や欧州の衛星測位システムより高い位置精度を生かし、自動運転や農業などのビジネスにつなげる。2017年秋までに追加の2機を打ち上げ、18年度から4機体制で本格稼働する。
みちびきは日本版全地球測位システム(GPS)とも呼ばれ、内閣府が運用中。これから打ち上げる2―4号機は、10年に打ち上げた初号機よりも3年長い15年以上の設計寿命となる。2号機は重さ4トン、高さ約6・2メートルで、軌道上展開後の全長は約19メートルとなる。1機あたりの開発・整備費は300億円。
現行では、みちびきの初号機とGPSを組み合わせた測位システムを行っているが、18年度から4機体制に移行。23年度には7機体制とし、米国のGPSに頼らないシステムとなる。
みちびきが本格稼働すれば、ビルの多い都市部での測位精度が向上すると期待される。さらに位置の誤差を数センチメートルにまで修正する高精度測位機能は、米国のGPSや欧州の測位衛星「ガリレオ」が持つ1メートル以上の位置精度と比べ優位性が高い。
すでにこの機能を生かすため、自動運転や農業トラクターの自動走行、飛行ロボット(ドローン)による自立飛行の実証が企業や大学で行われている。
宇宙開発で最先端を走る米国では、ベンチャー企業が大活躍している。電気自動車メーカーのテスラを創業したイーロン・マスク氏率いるスペースXは3月に再利用の1段ロケットを使用した「ファルコン9」を打ち上げ、再度ロケットの着陸・回収に成功。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏の立ち上げたブルー・オリジンは次世代の大型ロケット「ニュー・グレン」の開発を着々と進めている。宇宙開発を民間がけん引する米国は、日本の宇宙開発戦略が目指すべき姿の一つだ。
米航空宇宙局(NASA)は産業界、民間企業に対する宇宙開発の支援プログラムとして国際宇宙ステーション(ISS)への貨物輸送用宇宙船開発を支援する「商用軌道輸送サービス(COTS)」、COTSを受けて民間による宇宙輸送事業の展開を支援する「商業物資輸送サービス(CRS)」、商業有人輸送技術開発を目指す「商業クルー開発(CCDev)」などを策定。プログラムによって生まれた技術やサービスを、NASAが利用する仕組みで、産業振興を進めている。
このうちCOTSとCRSでは06年にスペースXと米オービタル・サイエンス(現オービタルATK)を支援対象企業に選定。CCDevではスペースXと米ボーイングが選ばれた。
CRSでは16年に2期目の民間委託としてスペースX、オービタルATK、米シエラ・ネバダの3社と契約した。米国では民間による宇宙ビジネスは目指すものではなく、すでに現実のものだ。
NASAが民間に委託を推進してきた背景には、産業・民間企業の振興だけでなく、かねて問題となっていった財政問題の深刻化がある。恒常的な財政赤字に苦しむ米国では、NASAが抱える広範な宇宙開発テーマの全てを公的資金で賄うのは難しい。
一部報道などでは維持費が高額なISSの民間委譲も検討しているとされる。米国におけるベンチャー企業の資金調達環境、産業振興を支える法制度の整備や規制緩和なども重要な点。膨大な数の特許を保有するNASAは、各拠点に技術移転やライセンシングなどを推進する機能を持ち、ポータルサイトで保有特許やライセンスできる技術を公開している。
宇宙ビジネスはリスクが高く、新規参入者の層も薄い。海外では宇宙を活用した新たなビジネスを見据えた法整備が進んでいる。日本も後れを取らぬよう体制作りを急ピッチで進める必要がある。
(文=冨井哲雄)
みちびきは日本版全地球測位システム(GPS)とも呼ばれ、内閣府が運用中。これから打ち上げる2―4号機は、10年に打ち上げた初号機よりも3年長い15年以上の設計寿命となる。2号機は重さ4トン、高さ約6・2メートルで、軌道上展開後の全長は約19メートルとなる。1機あたりの開発・整備費は300億円。
現行では、みちびきの初号機とGPSを組み合わせた測位システムを行っているが、18年度から4機体制に移行。23年度には7機体制とし、米国のGPSに頼らないシステムとなる。
みちびきが本格稼働すれば、ビルの多い都市部での測位精度が向上すると期待される。さらに位置の誤差を数センチメートルにまで修正する高精度測位機能は、米国のGPSや欧州の測位衛星「ガリレオ」が持つ1メートル以上の位置精度と比べ優位性が高い。
すでにこの機能を生かすため、自動運転や農業トラクターの自動走行、飛行ロボット(ドローン)による自立飛行の実証が企業や大学で行われている。
ISSの民間委譲も検討
宇宙開発で最先端を走る米国では、ベンチャー企業が大活躍している。電気自動車メーカーのテスラを創業したイーロン・マスク氏率いるスペースXは3月に再利用の1段ロケットを使用した「ファルコン9」を打ち上げ、再度ロケットの着陸・回収に成功。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏の立ち上げたブルー・オリジンは次世代の大型ロケット「ニュー・グレン」の開発を着々と進めている。宇宙開発を民間がけん引する米国は、日本の宇宙開発戦略が目指すべき姿の一つだ。
米航空宇宙局(NASA)は産業界、民間企業に対する宇宙開発の支援プログラムとして国際宇宙ステーション(ISS)への貨物輸送用宇宙船開発を支援する「商用軌道輸送サービス(COTS)」、COTSを受けて民間による宇宙輸送事業の展開を支援する「商業物資輸送サービス(CRS)」、商業有人輸送技術開発を目指す「商業クルー開発(CCDev)」などを策定。プログラムによって生まれた技術やサービスを、NASAが利用する仕組みで、産業振興を進めている。
このうちCOTSとCRSでは06年にスペースXと米オービタル・サイエンス(現オービタルATK)を支援対象企業に選定。CCDevではスペースXと米ボーイングが選ばれた。
CRSでは16年に2期目の民間委託としてスペースX、オービタルATK、米シエラ・ネバダの3社と契約した。米国では民間による宇宙ビジネスは目指すものではなく、すでに現実のものだ。
NASAが民間に委託を推進してきた背景には、産業・民間企業の振興だけでなく、かねて問題となっていった財政問題の深刻化がある。恒常的な財政赤字に苦しむ米国では、NASAが抱える広範な宇宙開発テーマの全てを公的資金で賄うのは難しい。
一部報道などでは維持費が高額なISSの民間委譲も検討しているとされる。米国におけるベンチャー企業の資金調達環境、産業振興を支える法制度の整備や規制緩和なども重要な点。膨大な数の特許を保有するNASAは、各拠点に技術移転やライセンシングなどを推進する機能を持ち、ポータルサイトで保有特許やライセンスできる技術を公開している。
宇宙ビジネスはリスクが高く、新規参入者の層も薄い。海外では宇宙を活用した新たなビジネスを見据えた法整備が進んでいる。日本も後れを取らぬよう体制作りを急ピッチで進める必要がある。
(文=冨井哲雄)
2017年5月26日/30日