ニュースイッチ

マツダ社長、スズキ会長も駆けつけたシートメーカーのルネッサンス!

東洋シート、100周年に向けての危機感と自己変革
マツダ社長、スズキ会長も駆けつけたシートメーカーのルネッサンス!

山口代表(中央)

 東洋シート(広島県海田町、山口徹代表)は、創立70周年の記念式典を広島市中区で開き、マツダの小飼雅道社長、スズキの鈴木修会長をはじめ取引先など約300人が列席した。

 山口徹代表(写真中央)は「創立100年に向けて、規模を追うよりは“いい会社”になりたい。量から質へ、モノづくりから人づくりへと転換したい」とあいさつ。

 鈴木会長が「ハンガリーに進出した時にシートメーカーが出てきてくれず困っていた。山口清蔵会長にお会いして、とんとん拍子に進んだ」と披露。マツダの小飼社長が「東洋シートさんのモノづくりへの姿勢に敬意を表する」と述べ乾杯の音頭を取った。

日刊工業新聞2017年5月23日



「会社は2020年までもたない」


 東洋シート(広島県海田町、山口徹代表)が、2015年から20年までの中期経営計画のもと、全社的な経営改革に乗り出した。基礎研究力の強化や海外拠点の機能拡張などを通じ「互いに成長する喜びを知り、世界で愛されるチームになる」(中期ビジョンより)。同社はマツダ系シートメーカー2社の一角。部品メーカー特有の受け身の姿勢から自律的な経営へと変わることで、改めて成長と事業の継続を目指す。

 「このまま悪いシナリオで行った場合、会社は20年までもたない」。中計策定チームに加わった経営企画室の藤井武志課長は打ち明ける。

 策定に当たっては、受注が取れず仕事が減る悪いシナリオと、受注を積極的に増やす良いシナリオの2パターンをシミュレーションした。悪いシナリオでは売上高、利益とも落ち込みが大きく、目標とする「1世紀経営」が実現できないことが分かったという。

 そこで中計には、良いシナリオを実現するための施策を盛り込んだ。技術面では、車メーカーの要求を満たすことを主眼とする従来の姿勢から踏み込み、シートに座る最終ユーザーの満足度を高めるため、基礎研究を強化する。

 「“座る”とはどうあるべきかなどの研究を通じ、東洋シートならではの独自性を追求する」(藤井課長)。将来は医療福祉分野のような自動車以外の新事業の創出につなげたいという。

 海外の体制も強化する。米国、中国、フィリピン、ハンガリー、メキシコ、インドと6カ国に生産子会社があるが、客先の求めに応じ随時進出してきた。

 ただ現地の新規顧客へ営業活動をしたり、海外工場間で部品を融通したりといった柔軟な体制になっていない。これを見直し、国や顧客の事情に合った最適な体制を作る。欧米での営業力強化や、新興国での生産強化が焦点になる。

 一連の取り組みで「晴れコース」と呼ぶ良いシナリオを実現。社員満足度・顧客満足度向上とともに、最終年度の20年12月期には売上高800億円(14年12月期売上高は約588億円の見通し)、経常利益率5%を目指す。

 もともと同社は、目の前の仕事に全力投球して顧客の要求に応えることを重要視する社風。中期経営計画や、そのベースとして今回策定した中期ビジョンなどは作ったことがなかった。

 だが、マツダが「スカイアクティブ」と呼ぶ現行商品群以降は、調達方法を大きく変更。自動車シートをめぐる経営環境は厳しい。

 策定を手がけたのは、部署横断的に選抜した中堅社員10人からなるプロジェクトチーム。幹部候補育成にもつながった。チェンジ、チャレンジ、キャンの頭文字を取り「Cプラン」と名付けた計画を、全社一丸となり達成できるか。広島には同社のような有力オーナー企業が多く自己改革の試みは注目を集めそうだ。
(文=広島・清水信彦)
※内容、肩書は当時のもの

日刊工業新聞2015年2月16日



「それはショックだった」


 自動車シートメーカーの東洋シート(広島県海田町、山口徹代表)が、生き残りをかけた改革に乗り出した。マツダ系シートメーカー2社のうちの1社として並び立ってきた同社。ただ国内市場の成長性が見通しにくい中、海外市場攻略や他の車メーカーへの取引拡大、自動車以外のシートなど新分野の開拓が不可欠となる。オーナー企業ならではの100年続く“一世紀経営”を掲げる同社の挑戦を追った。

 「それはショックだった」。そう振り返る山口徹代表が、会社を変えなければと強く思うきっかけとなったのが、マツダが2012年に発売したスポーツ多目的車(SUV)「CX―5」だ。

 マツダ車のシートは長らく、東洋シートと競合するもう1社が供給してきた。CX―5の前身車種は東洋シートが供給。後継新型車も同社が手がけると思われていたが、受注したのは競合先だった。

 さらに、同車を皮切りにマツダが投入した新世代技術「スカイアクティブ」の採用車では、シート機構部品は競合社が受け持つことになった。東洋シートがシートを供給する場合でも機構部品は競合社製を使う。

 「力がおよばなかった」。山口代表はそう認めながらも、着々と巻き返しを図る。マツダが昨年発売した小型車「アクセラ」のシートは、着座時に骨盤をしっかり支える座り心地のよさが好評。

 ぎりぎりまで実験と改良を繰り返すマツダの技術陣の熱意に、東洋シートの社員もねばり強くついていった。量産立ち上げ当初のトラブルも乗り越え、今は安定供給を続けている。

 このねばり強さ、まじめさこそ、東洋シートの最大の強みという。「お客さまからの要求に細かく答えるため、最大限努力するのが当社のやり方」(山口代表)だ。

 他メーカーとの取引拡大にもその社風は生きた。同社にとってマツダに次ぐ大口の取引先がスズキ。ハンガリーに進出していた同社にスズキから声がかかり、合弁会社を設立。スズキのハンガリー工場に向けては同社のハンガリー工場からシートを全量供給する。

 メキシコでは供給責任を果たすためにライバルとも手を組んだ。競合先にマツダも交えて合弁会社「アキシート」を設立して進出。しかし車メーカーがこぞって調達改革と海外展開を進める中で、さらに経営環境の変化は激しくなりそうだ。

 今年2月、同社は新しい経営理念を策定した。「社員満足第一主義を貫く」と「温かさと独自性で世界を笑顔にし、子供たちの未来を創造する」を明記。同理念のもとで15年から始まる中期経営計画を策定中で、経営目標を初めて掲げる。

 「絶対やり遂げるという“東洋シートスピリット”に、新中計で一貫性を加えていきたい。後世まで続く経営を目指す」と山口代表。目指すは2047年の設立100周年で、同社がどう生まれ変わるのか注目される。
(広島・清水信彦)
※内容、肩書は当時のもの

日刊工業新聞2014年7月9日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
トヨタは系列の再編を進めている。ホンダは系列への回帰を進めている。日産と三菱の系列は資本提携を受け共同受注などの動きも出はじめた。マツダやスバル、スズキなどの中堅メーカーは販売は好調だが、系列のサプライヤーはどのような戦略をとっていくか、この2~3年が大きな分岐点になるだろう。

編集部のおすすめ