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マツダの先進「AT」を支える影の実力サプライヤーとは

トーヨーエイテック、“ポストスカイアクティブ“へ高効率ポンプの開発を急ぐ
マツダの先進「AT」を支える影の実力サプライヤーとは

東広島工場でのオイルポンプ組み立て工程

 研削盤などの工作機械で知られるトーヨーエイテック(広島市南区、成沢信彦社長、082・252・5212)。自動車部品事業は工作機械、表面処理と並び3本柱の一つ。主力製品は自動変速機(AT)向けオイルポンプ。マツダの内製部門が分社化した企業で、マツダの「スカイアクティブ」車の前輪駆動(FF)向けの全数を供給する。

 ATにおいて、オイルは重要な役割を果たす。歯車や軸受の潤滑はもちろん、トルクコンバーターの回転を伝え、シフトチェンジのための油圧装置の作動油にもなる。ATにとってオイルは血液、ポンプはさしずめ心臓のような存在。

 高効率と低振動が重要になる。トーヨーエイテックのポンプは内接ギア式というタイプ。ATの内部に丸ごと組み込まれ、マツダと一体になって開発してきた。

 だが自動車部品事業を統括する菊池敏之副社長はこう気を引き締める。「『スカイアクティブ』以降マツダは変わった。高い目標を掲げ、それを達成できるかで調達先が決まる。株主とか元の内製部門とかは関係ない」。ポストスカイアクティブ車に向けて、高効率ポンプの開発を急ぐ。

 一方、モノづくりでも効率と品質を追求してきた。スカイアクティブ向けポンプは、国内では12年に稼働した東広島工場(広島県東広島市)で集中生産。タイでも、マツダのAT工場の構内で14年末にオイルポンプ工場を稼働させている。

 東広島工場の特徴は省人化の追求にある。機械加工工程の2本のラインをオペレーションするのはわずか3人。工作機械への加工対象物の着脱や工程間搬送、バリ取りや寸法検査などでロボットを最大限活用したことで、可能になった。

 機械加工を終えるまでに7工程を経るが、一つの工程には、同じ加工をこなす汎用工作機を並列で複数台並べ、この台数を増減することで需要変動に対応する。一方で組み立てや検査工程は人手をかけて品質を確保する。「自動化と人手とを組み合わせ、メリハリのついた工場」(菊池副社長)を特徴とする。
(文=広島・清水信彦)
日刊工業新聞2016年9月13日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
トーヨーエイテックは2012年に株式の70%を伊藤忠に売却(残り30%マツダ)、現在は伊藤忠傘下にある。もともとが工作機械メーカーだけにモノづくり力には定評があり、物理気相成長(PVD)などでも注目される企業。

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