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ロボットは『あの時は楽しかったね』と振り返られる相棒になるか

「ロビ」「ロボホン」生みの親、ロボットクリエーター・高橋智隆氏インタビュー
 音声などで人と対話するコミュニケーションロボットが増えてきた。トヨタ自動車の「キロボミニ」、シャープの「ロボホン」など、かわいくて近未来的なデザインのロボットが目立つ。これらロボットのデザインなどを手がけるのがロボットクリエーターの高橋智隆氏。昨今のコミュニケーションロボットの動向について聞いた。

―コミュニケーションロボットの現状は。

「サービスロボット分野では音声対話ロボットがここ1年で最も成長するだろう。米アマゾン・ドット・コムの人工知能(AI)スピーカー『エコー』が日本にも入ってくるだろうし、中国のテンセントなどが手がける音声認識技術を使った端末も出てくるだろう。飛行ロボット(ドローン)や自動運転車に続く市場になると考えている」

―雑踏での音声対話が困難といった要素技術の課題が残ります。

「音声対話の課題解決につながる技術が出てきているし、単に音声認識機能だけ高めれば良いわけではない。コミュニケーションやインターフェースのデザインも重要で、ロボットにどういうコミュニケーションをさせたいか、どういう会話をさせたいかといったものが重要になる。ロボットの大きさや台詞といったもの。言葉だけでは不足する対話の要素を補い人とやりとりする、というのが対話の究極だろう」

―コミュニケーションロボットの普及状況に満足していますか。

「例えば、ロボホンは機能としては現状でかなり良いものになった。だが、一般消費者にとっては『20万円は高い』、『ロボットなのにできることが少ない』といった不満がある。ロボットの機能向上と並行して社会のロボットに対する見方、価値観を変えていくことも普及に不可欠。AIも同じことが言え、時間をかけ誤解や偏見を変える必要がある。人がロボットに『信頼』を持ち、長く体験を共有して『あの時は楽しかったね』と振り返られる相棒のような関係を築ければロボットが社会に根付く」

―ロボット人材の教育も重要だと説いています。

「教育事業を手がけるヒューマンアカデミー(東京都新宿区)とプログラミング教育用のロボットや教育プログラムを開発した。モノづくりで手を動かし、改造して課題を解決していくことで発明が生まれる。ロボット開発は機械、電機、情報、デザインなど広範な知識も必要で、ロボットを材料にした教育はそれらが横断的に楽しく学べる。次のロボット人材を育てることが、日本の持ち味であるハードの強さを維持するのに有効だと考えている」

【略歴】たかはし・ともたか 03年京都大学工学部卒業と同時にロボ・ガレージを創業。以降、ロボットクリエーターとして活動する。現在、ロボ・ガレージ社長、東京大学先端科学技術研究センター特任准教授。滋賀県出身、42歳。

【記者の目/日本の良さ生かす方策を】
大規模なインフラやデータソースが必要なAI分野は米国や中国が躍進し、日本は立ち遅れた。だが、ロボットは日本の優位性がまだ残っていると高橋氏は説く。モノづくりやハードとソフトのすり合わせは日本の得意分野であり、ソフトに特化した海外にはないものだ。日本の良さを維持・向上するための多面的な方策が求められている。
(石橋弘彰)
日刊工業新聞2017年5月24日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ロボットを実際に作ってみたり、ロボットの機構を知ると、値段への納得感や「変に期待しすぎること」がなくなるように思います。さらにロボットを通して「動くもの」「プログラミング」「AI」さらには「コミュニケーション」など興味や知識が広がっていきます。多くの子供たちがロボットに触れる機会ができれば社会も少しずつ変わっていくでしょう。

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