全国から視察が殺到、長野県飯綱町議会の“議論する力”
<情報工場 「読学」のススメ#31>無用の長物だった地方議会の再生
学習会と自由討議で人の意見に耳を傾けられるように
第2回のサポーターには、子育て真っ最中のママさんもいた。その体験をもとにした意見に、議員たちは真剣に耳を傾けてくれたという。さらに議員たちは、ママ友たちの集まりにも足を運び、意見交換をした。その結果、2014年4月からの時間外保育料の一部無料化が実現したのだ。
高齢者も多い町議会議員たちが積極的に若いママさんたちの声に耳を傾けたのには理由がある。政策サポーター制度の導入前、議員たちは半年間で三十数回にわたる自主的な学習会と自由討議を実施した。
そこでは、地方自治の先進事例を学びながら、さまざまな政策課題について積極的な議論が行われた。そのおかげで論点が整理され、具体的な課題が明確になったのだが、副産物として議員たちの「議論する力」が磨かれたのである。どんな人の意見にも耳を傾け、それに応じた的確な発言と判断ができる能力である。
おそらく、この学習会と自由討議の実践がなければ、政策サポーター制度は成功しなかったのではないか。どんな意見にも公平に耳を傾ける姿勢と習慣、空気ができあがっていたからこそ、素人である政策サポーターがすんなり溶け込め、建設的な議論ができたのだ。
もしかすると、地方を衰退から救うのにもっとも必要とされているのは、飯綱町議会のような、さまざまな属性と立場の人々がアイデアを出し合い議論する「場」なのかもしれない。いや、「場」だけではない。地方再生のために、ベーシックな「議論する力」を一人でも多くの日本人が備えるべきではないだろうか。
(文=情報工場「SERENDIP」編集部)
相川 俊英 著
集英社(集英社新書)
206p 720円(税別)>
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