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トヨタ、小型車のコスト低減。“他社から学ぶ”姿勢鮮明に

「アライアンスから学んだ物差しに照らすと、まだやれることはある」
 トヨタ自動車は、小型車を中心に一段の生産コスト低減に乗りだす方針だ。2015年から本格的に始めた新設計・生産思想「TNGA」はデザインや走行性能などの向上につながったものの、豊田章男社長には「コストやリードタイムは後回しになっていないか」と映る。日本を代表する収益力を誇るトヨタだが、完全子会社化したダイハツ工業をはじめ他社から学ぶ姿勢を打ち出し、モノづくりの原点に立ち返ろうとしている。

 「もっといいクルマづくりの原点はコンパクトカー(小型車)にある」。豊田社長は10日の決算会見の席上、こう切り出した。やや唐突にも思える発言の裏には、生産や営業など各現場に対し、現状に対する問題意識を持ってほしいとの思いがあったとみられる。

 18年3月期に2期連続の減収減益を見込むトヨタにとり、収益体質の改善は喫緊の課題になってきた。例えば“お家芸”と言われる仕入れ先と一体でのコストダウン。17年3月期は原価改善が営業利益を4400億円も押し上げたが、18年3月期の原価改善予想は900億円にとどまる。

 原料価格の高騰など外部要因はあるものの、その水準はリーマン・ショック後に原価改善を見送った時以来の小幅な数値。「これが実力かと思うと悔しい。収益向上の施策を強力に進め、最大限の挽回に努める」と永田理副社長は話す。

 トヨタはここ数年、マツダスズキなどとの包括提携を立て続けに発表。ダイハツ工業も完全子会社化し、17年1月には新興国向けの小型車を担当する社内カンパニーを、トヨタの小型車部門とダイハツの“合弁事業体”として立ち上げた。

 トヨタの一連の動きに通底するのは、社内に「外部からの学び」を採り入れる姿勢だ。「アライアンスから学んだ物差しに照らすと、まだやれることはある」(永田副社長)。

 16年に導入した製品群別の社内カンパニー制だが、販売台数の拡大や利益率向上といった目に見える効果はこれからだ。豊田社長は「より課題が明確になった」と、特にコスト競争の厳しい小型車分野で生産改革を進める方針だ。
                   

(文=名古屋・杉本要)
日刊工業新聞2017年5月12日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
自動運転開発や電気自動車(EV)メーカー台頭など自動車産業が激変の兆しを見せる中、トヨタの研究開発や設備投資は過去最高の水準が続く。一方で「今日を生き抜く『もっといいクルマづくり』『賢いクルマづくり』の両輪を回す」ことの重要性を訴える豊田社長。トヨタは今年で創立80周年。あえて“原点”を強調することで、競争力を生み出す「強い現場」の維持に腐心している。

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