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電子部品各社、将来のエースで4番を最初に獲得できるのはどこ?

再び成長基調も、次の柱への投資も活発化。
 電子部品5社の2017年3月期連結決算が10日までに出そろい、3社が営業増益を確保した。米・韓のスマートフォンメーカー向け事業が堅調だったほか、中国メーカーが大口顧客に成長し安定的な収益をもたらした。一方、18年3月期はTDKを除く4社が増収、営業増益を見込む。引き続きスマホ向けが収益に寄与する見通しだ。各社は次の成長に向け、車載機器やエネルギーなど新分野で投資や人材の増強を進める。

 TDKが10日発表した17年3月期連結決算(米国会計基準)はリチウムイオン二次電池やスマホ向け製品が好調で、増収、営業増益だった。

 ただ、好調な高周波部品事業の売却に伴い、18年3月期は減収、営業減益になる見込み。石黒成直社長は「18年3月期は次なる成長の仕込みの時期になる」と語った。

 各社は、さらなる成長に向けてスマホ分野で新たな施策を打ち出している。村田製作所は18年3月期にスマホ向けの新製品を相次いで投入する。

 「LTE対応スマホ(の市場)が13%ほど伸びるなど、需要がある」(村田恒夫社長)と話す。17年3月期に落ち込んだ新製品比率を再び40%程度に戻す考えだ。

 スマホ向け水晶部品が好調な京セラは「18年3月期はコンデンサーも伸びる」(谷本秀夫社長)とみて、需要に応じ設備投資を行う。いずれも高機能スマホに搭載が多い部品が好調のようだ。

 今後のスマホ市場に関しては、気賀洋一郎アルプス電気取締役は「急に(需要が)減る可能性は考えていない」と分析する。特定顧客への依存から脱却しつつあり「中国向け製品の拡販が結実している」(同)と語る。

 一方、成長事業の育成も活発だ。村田製作所はソニーの電池事業を買収し、ウエアラブル向けなど小型デバイスに注力。電池事業全体で20年度に売上高2000億円を狙う。

 また、TDKは米インベンセンスなどセンサー関連の買収を決めた。20年度までに、センサー事業で売上高2000億円を目指す。電池やセンサーを次の中核製品に定め、17年度から稼ぎ出す考えだ。

 日本電産は最適な人材戦略を推進。海外工場の従業員を20年までに現在の半分の4万人程度に減らす一方、技術・研究人材を増強する計画だ。「人材の構成を大幅に変え、強い企業体質を作る」(永守重信会長兼社長)という。

各社は米・韓のスマホメーカーへの依存が強かったが、この1―2年で中国の顧客との取引を拡大させてリスク分散を進めた。今後は成長分野への投資に拍車をかけ、スマホ市場との最適な“距離”を探る。
              

(文=渡辺光太、葭本隆太、京都・園尾雅之)
日刊工業新聞2017年5月11日
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
スマホ市場は堅調で、中国メーカーの台頭にもしっかりシフト。大手電子部品メーカーの業績は堅調だ。現時点で将来への懸念が現れているわけではない。しかし各社そろって、新たな成長事業の模索に余念が無い。絶頂期ほど、一皮むけば衰退への道が隠されている。かつての日の丸半導体と同じ轍を踏むわけにはいかない。現在、絶好調の半導体市場を見ていると、日本勢の影の薄さが本当に惜しくて仕方が無い。

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