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「(合弁の)四日市工場からを閉め出す」 東芝がWDに正式警告

事態を打開させる動きも
 東芝と半導体メモリーの生産で協業する米ウエスタンデジタル(WD)の関係が、膠着(こうちゃく)状態に陥っている。東芝はメモリー事業の売却は契約違反だとするWDに対し、警告書簡を送付。売却手続きの正当性を訴え「妨害行為」の停止を求めた。同時に最悪の場合、主力生産拠点である東芝の四日市工場(三重県四日市市)の施設や情報ネットワークから、WD側を閉め出すと警告した。両社の溝は深まりつつある。

 東芝は2000年から米サンディスク(SD)と合弁会社を設立して四日市工場を共同運営しており、16年5月にWDがSDを買収した。WDは4月、東芝宛てに「メモリー事業の売却手続きは契約違反だ」と抗議し、独占交渉権を要求した。東芝は今回、その抗議に対し反論した格好だ。

 警告書簡の中で東芝は「合弁会社の持ち分を売却する権利がある」と主張し、妨害行為を停止するよう要求した。WDがSDを買収した際も、東芝への同意は求められていなかったという。

 さらにこの買収後、WDは新たな合弁契約にサインしておらず、情報をやりとりできない状態になっていると指摘。「15日までに回答がなければ四日市工場からWD側を閉め出す」と強い態度を示した。

 現在、東芝は19日に予定する2次入札に向けた手続きを進めているが「WDの抗議によって、他の入札者に影響が出ている」(東芝幹部)。協業相手であるWDの意向は無視できないものの、WDの強硬な態度に関係者は「もう我慢できない」とも。

 両社の主張は平行線。WD関係者は「(四日市工場を閉め出されたら)業務に大いに影響する。さすがに避けて欲しい」と訴えるが、落としどころは少なくなっている。しかし何らかの形で決着を付けなければ、東芝の再建はおろか、今後のメモリー事業の運営にも影響を与えかねない。
米WDのミリガンCEO㊧と東芝の網川社長㊥、成毛副社長(16年7月)

                 

(文=政年佐貴恵)
日刊工業新聞2017年5月11日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
10日には東芝の綱川社長とWDのミリガンCEOと会談したと言われている。ここから急速に打開へ動き出す可能性もある。ところで日立の中西会長とミリガン氏はHGST時代の上司と部下の関係。東芝メモリの売却先を日米連合にしたい政府は、その辺りのルートを含めいろいろ外堀を埋めようとしているはず。

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