IoTデータ、日本企業の勝ち筋をオムロンにみた!
強いFAを社会課題の解決に。国も流通市場の振興に動く
あらゆる機器がつながるIoT(モノのインターネット)時代が、本格的に到来しようとしている。これに伴い、企業活動などで生み出されるデータの利活用が活発化しそうだ。そんな中、一つひとつのデータを商品として扱う動きが出始めている。国もこうしたデータ流通市場の振興に意欲的だ。次世代産業としての普及・浸透に向け、今後の動きが注目される。
「第4次産業革命により、今以上にデータが付加価値を生むようになる」。経済産業省の佐野究一郎情報経済課長は、データ関連施策に力を入れる理由をこう説明する。
IoTや人工知能(AI)といった技術の発展により、企業が社内外のデータを集め活用することは、以前よりたやすい。機械の稼働データに基づく生産活動の効率化など、あらゆる場面でデータ活用の効果が期待されている。
ただ、投資に見合う効果、革命的とも言えるほどの効果を生むには、企業が従来の事業の延長線上で考えるのとは異なるレベルのもっと大量かつ多種多様なデータが必要だ。
米グーグル、米アマゾンなど強力な情報インフラを持つ“巨人”を別にすれば、多くの企業にとって、真に求めるレベルに十分なデータを集めるのは簡単ではない。「データの流通市場があった方がいい」と佐野課長が主張するのは、このためだ。
経産省は、2014年に立ち上げたデータ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会でデータ流通の検討を開始。以後、15年発足のIoT推進コンソーシアムに協議の場を移し、新市場の課題などを探ってきた。IoTへの関心の高まりなどに伴い、「16年度から議論が活発化してきた」と佐野課長は手応えを語る。
実際、データ流通に可能性を見いだす企業は増え始めている。その代表例が、オムロンだ。同社が着目したのは、工場自動化(FA)分野などで高シェアを誇るセンサー類。さまざまな現場から集まるセンシングデータの流通を促し、事業拡大につなげる戦略だ。
「多様なセンシングデータが組み合わさることで、社会課題の解決につながる」と竹林一SDTM推進室長はデータ流通の将来性を指摘する。
例えば、同社がFAとともに得意とする健康・医療分野。病院側が患者の血圧データや家の室温データなどを掛け合わせて分析することで、「エアコンの温度設定の仕方など、これまでできなかった指導が可能になり、医療行為の効果を最大化できる」(竹林室長)という。
同社は15年からIoT推進コンソーシアムに参加。経産省などと協力し、データを円滑に流通させるための仕組み作りに尽力している。
目的の一つが、センサー需要の喚起だ。データ流通が普及することで「我々のセンサーが使われる場面、そして量がどんどん増えていくはず」と竹林室長は期待する。このほか、大量かつ多様なデータの活用による提案力の強化も狙い。センサーメーカーとして培ってきた分析などの知見を生かし、競合他社と差別化する構えだ。
17年4月、経産省と総務省は同コンソーシアムでの取り組みの成果として、一つの報告書を公表した。題は「データ流通プラットフォーム間の連携を実現するための基本的事項」。オムロン、エブリセンスジャパン(東京都港区)などと模索してきた仕組みの青写真が、そこに示されている。
報告書が提唱する仕組みの特徴は、応用プログラムインターフェース(API)で異なる流通プラットフォーム(基盤)を連携させる点だ。APIで共有される機能により、エブリセンスジャパンなど流通事業者がデータの名称、簡単な説明文、生成源といった概要情報を各データに付与できるようにする。
利用者は、複数の事業者が提供するこうした概要情報を一括検索できる。これにより、求めるデータを素早く手に入れられる。利用者にとっての利便性を高め、市場全体の拡大につなげる計画だ。
(文=藤崎竜介)
「第4次産業革命により、今以上にデータが付加価値を生むようになる」。経済産業省の佐野究一郎情報経済課長は、データ関連施策に力を入れる理由をこう説明する。
IoTや人工知能(AI)といった技術の発展により、企業が社内外のデータを集め活用することは、以前よりたやすい。機械の稼働データに基づく生産活動の効率化など、あらゆる場面でデータ活用の効果が期待されている。
ただ、投資に見合う効果、革命的とも言えるほどの効果を生むには、企業が従来の事業の延長線上で考えるのとは異なるレベルのもっと大量かつ多種多様なデータが必要だ。
米グーグル、米アマゾンなど強力な情報インフラを持つ“巨人”を別にすれば、多くの企業にとって、真に求めるレベルに十分なデータを集めるのは簡単ではない。「データの流通市場があった方がいい」と佐野課長が主張するのは、このためだ。
経産省は、2014年に立ち上げたデータ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会でデータ流通の検討を開始。以後、15年発足のIoT推進コンソーシアムに協議の場を移し、新市場の課題などを探ってきた。IoTへの関心の高まりなどに伴い、「16年度から議論が活発化してきた」と佐野課長は手応えを語る。
実際、データ流通に可能性を見いだす企業は増え始めている。その代表例が、オムロンだ。同社が着目したのは、工場自動化(FA)分野などで高シェアを誇るセンサー類。さまざまな現場から集まるセンシングデータの流通を促し、事業拡大につなげる戦略だ。
「多様なセンシングデータが組み合わさることで、社会課題の解決につながる」と竹林一SDTM推進室長はデータ流通の将来性を指摘する。
例えば、同社がFAとともに得意とする健康・医療分野。病院側が患者の血圧データや家の室温データなどを掛け合わせて分析することで、「エアコンの温度設定の仕方など、これまでできなかった指導が可能になり、医療行為の効果を最大化できる」(竹林室長)という。
報告書で示された青写真
同社は15年からIoT推進コンソーシアムに参加。経産省などと協力し、データを円滑に流通させるための仕組み作りに尽力している。
目的の一つが、センサー需要の喚起だ。データ流通が普及することで「我々のセンサーが使われる場面、そして量がどんどん増えていくはず」と竹林室長は期待する。このほか、大量かつ多様なデータの活用による提案力の強化も狙い。センサーメーカーとして培ってきた分析などの知見を生かし、競合他社と差別化する構えだ。
17年4月、経産省と総務省は同コンソーシアムでの取り組みの成果として、一つの報告書を公表した。題は「データ流通プラットフォーム間の連携を実現するための基本的事項」。オムロン、エブリセンスジャパン(東京都港区)などと模索してきた仕組みの青写真が、そこに示されている。
報告書が提唱する仕組みの特徴は、応用プログラムインターフェース(API)で異なる流通プラットフォーム(基盤)を連携させる点だ。APIで共有される機能により、エブリセンスジャパンなど流通事業者がデータの名称、簡単な説明文、生成源といった概要情報を各データに付与できるようにする。
利用者は、複数の事業者が提供するこうした概要情報を一括検索できる。これにより、求めるデータを素早く手に入れられる。利用者にとっての利便性を高め、市場全体の拡大につなげる計画だ。
(文=藤崎竜介)
日刊工業新聞2017年5月4日