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ルネサスが特許出願時の報奨、最大8倍に

研究開発のサイクル加速、技術者のモチベーションを高める
 ルネサスエレクトロニクスは今夏に、特許出願時の報奨金を従来比で最大8倍強まで引き上げる。これまでは出願時の報奨金は数万円と少額で、特許が製品に使われなければ多額の報奨金は得られなかった。制度の改訂で研究者や技術者のモチベーションを高め、研究開発サイクルの好循環を生み出す。

 国内技術者を対象とする。特許出願時に、その特許の実用可能性や潜在性などを評価し、その評価に応じた金額を支払う。

 特許が製品に使われた場合も再度、報奨金が支払われる。ただ現制度における製品化に至った場合の報奨金の総額と、新制度における特許出願時と製品化時の合計額は同水準となる見通し。

 ルネサスでは特許について、出願時、成立時、自社製品への採用時、他社製品の採用時に主に報奨が支払われる仕組みがある。このうち後者の2項目の比重が高くなっている。新制度の導入で、現場で開発などの中心を担う30―40代の現役社員に支払われる報奨金の割合を大幅に増やす。

 一般的に特許を出願して成立した後、実際に製品に採用されるまでには、10―15年かかる。このためルネサスでは退職者に特許報奨が支払われるケースが多かった。

 また出願した全ての特許が、製品などに採用されるわけではない。このため報奨制度が、現役社員のモチベーション向上に直結していなかった。

 技術革新のスピードが速く、技術者の獲得競争が盛んな半導体業界において、研究開発の質・量の底上げは共通の課題となっている。ルネサスは報奨金が支払われる層の若返りを図り、研究者のモチベーション向上を狙う。これによって研究開発の好循環を生み出し、競争力を強化する。


日刊工業新聞2017年5月1日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
これは現役社員にはうれしい制度。背景には研究開発の質を上げなくてはならないという危機感がある。海外では出願時に報奨をもらうことも多いといい、そこに制度を合わせたのは同社が現在進めているグローバル化の方針とも合致する。今回の制度改定がどう成果に結びつくか、楽しみだ。

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