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東芝、4分の1の売り上げを失いかねない建設業法の壁

なぜ分社を決めたのか。再生へ放った一手
 東芝が2万人超の転籍を伴う主要4事業の分社化を決めた。経営体制を抜本的に見直すため組織に大なたを振るい、経営責任の明確化と再建の取り組みを加速する狙いだ。

 ほぼ全ての事業部門の分社を決めた目的は、大規模工事に必要な建設業の認可維持だ。認可が取れなければ、東芝は経営再建後の経営の柱を失う恐れもあった。事業を守るために決めた分社だが、意思決定の迅速化や他事業のリスク遮断、成長に向けた投資がしやすくなるなど、悪い面だけではない。困難な局面にある東芝だが、今回の決断をプラスに転換できなければ再建の道は遠い。

 海外の原子力発電事業から撤退し、半導体メモリー事業の売却を進める東芝は、2017年度以降の経営の柱をエネルギーと社会インフラと位置づける。事業運営に不可欠な建設業の許可は、財務基盤がある程度安定している企業でなければ取得できない。しかし東芝は米原子力発電事業の巨額損失などから、16年4―12月期で2256億円の債務超過に陥った。免許更新の12月までに対策を打つことが不可欠だった。

 社会インフラ、エネルギー事業を軸にした新生・東芝の売上高は計4兆円超。11日の会見では平田政善代表執行役専務が「建設業法に関わるのは、そのうち4分の1程度」と明かした。今回の分社は背水の陣となった東芝が、将来の柱を守るべく放った一手だ。

 とはいえ分社は副次的な効果も見込める。最近ではテレビ事業などで赤字が続き、経営不振に陥っていたソニーが全事業を分社。業績改善につなげつつある。東芝の各事業会社も機動力を高めれば、世界の競合と伍(ご)する事業展開ができないとも限らない。

 ただし本体の財務基盤が改善しなければ、子会社の求心力は維持できない。そうなれば各事業会社に独立機運が高まり、“東芝”という企業体が瓦解する可能性もはらむ。

 メモリー事業の売却、エネルギー事業での新たな損失リスク、ランディス・ギアの売却、テレビなど不採算事業の見直し―。東芝はどれも失敗できない状態に立たされている。
               

(文=政年佐貴恵、後藤信之)

日刊工業新聞2017年4月25日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
東芝傘下のスイス電力計大手・ランディス・ギアの買収に日立製作所と投資ファンドが名乗りを上げた。買収額は2000億円超とみられる。東芝は上場などの選択肢も想定していたようだが、経産省などの意向なども働いてどのように決着するか。

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