【三菱重工業 劇場型改革の真価#06】ひとりよがりで極める力が弱っている
<挑戦する企業アーカイブ>たゆみない技術力の強化と研鑽
たゆみない技術力の強化と研鑽―。社長の宮永俊一が初めて指揮を執る中期経営計画、通称「15事計」。目指す企業像の一文目に技術強化を掲げた。
M&A(合併・買収)など”飛び道具“ばかりが目立つ三菱重工業だが「ひとりよがりで極める力が弱っている」と宮永は言う。15事計では「技術への思い入れが非常に大きく、身の引き締まる思いだ」と技術統括本部長兼総合研究所長の川本要次。
川本が初代所長に就いた総合研究所は4月1日付で誕生。1964年の3重工合併以来、横浜、名古屋、高砂、広島、長崎の5地区に研究所を配置してきたが、全社組織が変化するなか、事業所単位の研究開発体制では十分な人材育成ができず、運営が難しくなっていた。
とはいえ、技術統括本部の垣根は低く「課長級以上の6―7割は転勤経験を持ち、人事交流を含めた一体感は強い」(川本)。素地を作ったのは副社長を務めた特別顧問の青木素直。川本の前任である常務執行役員の名山理介(現エネルギー環境ドメイン長)は青木の腹心のひとりだ。
青木は「今日からはミックスジュース、ワン技本だ」とのかけ声の下、各地域の研究所長から予算権限を剥奪。中央集権国家の某元首とおぼしきあだ名で呼ばれるほど、強引に組織を変えた。
従来、各研究所は工場の”下請け“的存在だったが、これを切り離し、研究所長を含めて管理職の流動化を促し、技術統括本部独自のIT基盤を確立。ヒューマンリソース、研究開発費の最適配分を実現した。
かつては「新事業を興すのが目的なのか、三菱重工の経営基盤を大きくすることが目的なのか、どちらが大事かと聞いても誰も明確に答えられなかった」(青木)。技術統括本部は今、各ドメインの接着剤として戦略的に機能している。
三菱重工は15―17年度に研究投資4500億円(前3カ年4000億円)を投じる。川本が「(自身が統括する人員の1割以上に相当する)150人以上をMRJに回す」と言うように一体化を実現した。
今後、技術統括本部の役割は増す。「個別の要素技術をピカピカに磨くより、バリューチェーン全体のイノベーションを興すのがミッションだ」と川本。
執行役員フェロー技術統括本部技師長の石出孝がグローバルリサーチ&イノベーションセンター長に就き、ケンブリッジやオックスフォードをはじめ、海外の大学や研究機関との伝道師的役割を担う。
1・2ペタフロップス―。三菱重工の持つ計算能力はスパコン「京」の10分の1規模に達するという。外部との連携も使いながら、蓄積してきた知見、研究開発インフラを有効に使えるか。”知の覚醒“に欠かせないピースになっている。
(敬称略)
M&A(合併・買収)など”飛び道具“ばかりが目立つ三菱重工業だが「ひとりよがりで極める力が弱っている」と宮永は言う。15事計では「技術への思い入れが非常に大きく、身の引き締まる思いだ」と技術統括本部長兼総合研究所長の川本要次。
川本が初代所長に就いた総合研究所は4月1日付で誕生。1964年の3重工合併以来、横浜、名古屋、高砂、広島、長崎の5地区に研究所を配置してきたが、全社組織が変化するなか、事業所単位の研究開発体制では十分な人材育成ができず、運営が難しくなっていた。
とはいえ、技術統括本部の垣根は低く「課長級以上の6―7割は転勤経験を持ち、人事交流を含めた一体感は強い」(川本)。素地を作ったのは副社長を務めた特別顧問の青木素直。川本の前任である常務執行役員の名山理介(現エネルギー環境ドメイン長)は青木の腹心のひとりだ。
青木は「今日からはミックスジュース、ワン技本だ」とのかけ声の下、各地域の研究所長から予算権限を剥奪。中央集権国家の某元首とおぼしきあだ名で呼ばれるほど、強引に組織を変えた。
従来、各研究所は工場の”下請け“的存在だったが、これを切り離し、研究所長を含めて管理職の流動化を促し、技術統括本部独自のIT基盤を確立。ヒューマンリソース、研究開発費の最適配分を実現した。
かつては「新事業を興すのが目的なのか、三菱重工の経営基盤を大きくすることが目的なのか、どちらが大事かと聞いても誰も明確に答えられなかった」(青木)。技術統括本部は今、各ドメインの接着剤として戦略的に機能している。
三菱重工は15―17年度に研究投資4500億円(前3カ年4000億円)を投じる。川本が「(自身が統括する人員の1割以上に相当する)150人以上をMRJに回す」と言うように一体化を実現した。
今後、技術統括本部の役割は増す。「個別の要素技術をピカピカに磨くより、バリューチェーン全体のイノベーションを興すのがミッションだ」と川本。
執行役員フェロー技術統括本部技師長の石出孝がグローバルリサーチ&イノベーションセンター長に就き、ケンブリッジやオックスフォードをはじめ、海外の大学や研究機関との伝道師的役割を担う。
1・2ペタフロップス―。三菱重工の持つ計算能力はスパコン「京」の10分の1規模に達するという。外部との連携も使いながら、蓄積してきた知見、研究開発インフラを有効に使えるか。”知の覚醒“に欠かせないピースになっている。
(敬称略)
日刊工業新聞2015年12月22日