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“IoTフォークリフト”、台数を減らしてでも物流コスト削減を提案

豊田自動織機、2020年には30万台の導入目指す
“IoTフォークリフト”、台数を減らしてでも物流コスト削減を提案

フォークリフトの稼働状況がタブレット端末上で閲覧できる

 「ここの稼働率の低いフォークリフトを減らしたらコスト削減できますよ」。豊田自動織機から、こう提案されたあるユーザーは驚いた。世界トップのフォークリフトメーカーから保有台数を減らしたらどうかと勧められるとは思いもよらなかったからだ。

 豊田織機は今、フォークリフト単品販売から物流全体の効率化を提案するソリューションビジネスへ重心を移しつつある。そのカギとなるツールがIoT(モノのインターネット)だ。欧米市場で2008年、日本で16年に、それぞれ発売したテレマティクスサービスは「フォークリフトでのIoTの走り」(伊藤寿秀産業用コンポーネント事業室長)と自負する。日本では「トヨタTサイト」の名で展開している。

 フォークリフトに取り付ける装置で稼働情報を収集し、インターネット経由でサーバーに送る。どのオペレーターが、どの車両を、どれだけの時間動かしたかといった稼働状況やバッテリーの充放電状況、壁や柱などに衝突した回数や衝撃度合いの情報も得られる。

 ユーザーや販売店は拠点内、複数拠点のフォークリフト1台1台のそうした情報を、タブレット端末などで確認できる。販売店は、そのデータを基に「現地現物で確認」(伊藤室長)した上でコスト削減につながる改善策を提案する。

 たとえ一時的に台数を減らすことになってもコストを低減できるなら迷わず提案する。「5―7割を人件費が占める」(同)物流コスト低減には車両台数削減が大きな効果を生む。そして「豊田織機に任せれば間違いない」と信頼を得てユーザーを囲い込む戦略だ。

 トヨタTサイトは月額利用料2000円。4月末に食品卸やメーカーなど23企業、88台に導入見込み。先行した欧米ではすでに約10万台に導入済みで「20年には(日本を含め)20万―30万台を目指す」(伊藤室長)。サービスではユーザーの需要に応じて提供するデータを順次、加えていく方針。同時にデータや現場をみて的確な改善策を提案できる販売店の人材育成も急ぐ。
(文=名古屋・伊藤研二)
『スマートファクトリーJapan』
 製造現場や生産管理の先進化や効率化を目指す「スマートファクトリーJapan 2017」を2017年6月7日(水)〜9日(金)の日程で、東京ビッグサイトにて開催。本展示会は、製造工場においてスマートファクトリーを実現するうえで、欠かすことのできない「IoT」や「インダストリー4.0」を搭載した生産管理・システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品を展示公開いたします。

 また、昨年まで「クラウドコミュニティ」という名称でセミナーセッションを中心に企画展を実施してまいりましたが、時代の潮流に合わせてID獲得型フォーラムとして「IoT・AI Innovation Forum」を同時開催いたします。
【出展者募集中】
日刊工業新聞2017年4月5日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ネット通販による物流量の急増、人手不足、ロボット活用、産業・社会のIoT化など急激な環境変化に対応する物流改善が求められている。日刊工業新聞では今日から「物流改善の新潮流」の連載をスタートしました。ぜひご覧下さい。

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