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群馬県、70年越しの「航空宇宙産業」育成に本腰

群馬県、70年越しの「航空宇宙産業」育成に本腰

中島飛行機が開発し、終戦間際に初飛行したジェット戦闘機「橘花」(富士重工業提供)

 群馬県は航空宇宙産業進出の支援策を拡充する。6月ごろをめどに大手企業とのマッチング事業を行うほか、県内企業の保有技術や設備などを紹介する冊子を作成。受注獲得の機会を多面的に創出し、県内企業の新規参入、販路拡大を後押しする狙い。成長が期待される航空宇宙分野で企業を積極的に支援し、県経済の活性化に弾みをつける。

 群馬県は2016年3月に協議会を設立し、航空宇宙産業の振興を本格化した。17年度はマッチング事業やPR冊子の作成に加え、既存の研究開発費補助金で「航空宇宙」を対象に追加する。補助率2分の1で、補助限度額600万円の枠を用意した。製販両面で支援内容を充実させ、航空宇宙産業への新規参入を促進するほか、すでに事業化している企業の販路拡大につなげる。

 このほか、展示会への出展支援を前年度に引き続き実施する。9月に名古屋市千種区で開かれる展示会「エアロマート名古屋」の出展経費の半額程度を助成する。

 群馬県内企業の航空宇宙産業への意欲は高い。協議会の会員数は活動期間1年で賛助会員を含め120社強となった。また、航空宇宙産業の品質マネジメント規格「JISQ9100」の認証取得も相次いでいる。

協議会設立


 群馬県が航空宇宙分野の産業振興を本格展開する。県内企業の新規参入や販路拡大を支援する組織「ぐんま航空宇宙産業振興協議会」を設立。県内企業の高度な技術力と成長分野を結びつけ、県内経済の活性化を目指す。群馬県は戦前に世界有数の航空機メーカーとなった中島飛行機の一大拠点が置かれた地。70年以上の時を経て“かつての地場産業”の振興に取り組む。

 協議会では今後、最新の技術動向に関するセミナーや技術研修を開催。航空宇宙産業の品質マネジメント規格「JISQ9100」、特殊工程認証「Nadcap」の取得支援も実施する。さらに販路開拓支援として10月に東京ビッグサイトで開かれる国際航空宇宙展への共同出展やビジネスマッチングなどを行う予定だ。

航空宇宙に素地


 群馬県には航空宇宙産業の素地がある。富士重工業の源流である中島飛行機の歴史に加え、IHIエアロスペース富岡事業所(富岡市)、ミネベア松井田工場(安中市)、明星電気(伊勢崎市)など関連企業の拠点が現存する。中堅・中小企業でも、航空宇宙分野を手がける企業が多く存在する。

 参入意欲のある中小企業にとっては、参入障壁が高いとされる航空宇宙分野で県が支援に乗り出す意義は大きいと言える。だが、行政による産業振興という点では、すでに全国的に行われており、群馬県が設立した協議会のような団体・組織は多く存在する。他県が先行しており“周回遅れ”という現実がある。
 
 群馬県は羽を広げた鶴のような形をしている。この産業振興を成長の翼にして、県経済を飛躍させられるか。協議会発足は一歩を踏み出したに過ぎない。成果創出に向けた取り組みが求められる。
(文=群馬支局長・大友裕登)
日刊工業新聞2017年3月20日/2016年3月31日の記事を再編集
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
群馬県は終戦まで日本最大規模の航空機メーカー・中島飛行機の一大拠点でした。終戦後、中島飛行機は富士重工業となり、現在は宇都宮市に航空宇宙の拠点を構えています。航空機部品のビジネスは受発注の流れもゆっくりで、なおかつクルマ産業と比較して規模も小さいため参入は容易ではありませんが、地の利を生かして頑張ってほしいですね。

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