トランプでかすむ“made with japan”の翼
「ボーイングの雇用を減らしている」という論理に飛躍すると厄介に
ボーイングとトランプの距離は?
ここ数年、日本の各社の売上高増を引っ張ってきた777の減産に加え、787でも「メード・ウィズ・ジャパン」がかすんできている。ボーイングは米国を代表する製造業のひとつであり、トランプ大統領が誕生した現在では雇用に対する社会的な責任も一段と増している。
そうした中、今後懸念されるのは日本からの航空機部品輸入に対するボーイングのスタンスの変化だ。トランプ氏は昨年12月、大統領就任を前にツイッターで、政府専用機「エアフォース・ワン」(ボーイング747型機)のコストが高すぎると批判し、発注をキャンセルするとした。
12月下旬にトランプ氏と会談したボーイングのミュイレンバーグCEOは値下げ交渉に応じる姿勢を見せたことが現地報道で伝えられている。
先にも示した日本航空宇宙工業会のまとめでは、日本の航空宇宙産業の輸出比率(輸出額/生産額)は約6割にもなる。その多くはボーイング向けの機体製造だ。欧州エアバス向けの取引が少ない日本の航空機産業は、ボーイングに大きく依存する。
トランプ大統領の前にすっかりしぼんでしまった「メード・ウィズ・ジャパン」の標語だが、それがトランプ向けのパフォーマンスにとどまるのか、はたまたボーイングが実際の部品調達でも「アメリカ・ファースト」を強めるのか。日本の業界関係者は固唾をのんで推移を見守っている。
(文=名古屋・杉本要)
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