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製品の違いをロボット自体が考えるシステムを開発する浜松のベンチャー

【連載】挑戦する地方ベンチャーNo.13 LinkWiz
 ロボットの「チョット使いにくい」を解決したい―。右肩上がりの成長を続けるロボット市場。一方で、ロボットの操作プログラムを組むティーチング技術者の不足や使い勝手に苦労している製造現場は少なくない。LinkWiz(リンクウィズ、浜松市北区)は、こうした問題を解決するため、15年3月に起業した。創業者の吹野豪社長は「町工場で簡単に使える統合型ロボットシステムを開発し、日本の最高のモノづくりに貢献したい」と意欲に燃える。
 

ティ-チング技術者の不足をソフトで補う


 ロボットの世界市場は、2020年に現在の2倍以上となる1兆2000億円に膨らむとの予測がある。一方で、ティーチング技術者の不足は深刻だ。国内で稼働する産業用ロボット200万台に対し、ティーチング技術者は2万人と圧倒的に足らない状況という。
 また、「3DCADで設計されたものはパソコンの中では寸分の誤差もなくできあがるが、実際は各パーツにわずかな誤差がある。モノづくりの現場はそのすりあわせに多くの時間とコストをかけている」(吹野社長)のが現状。さらにロボットはティーチングされた作業は正確にこなすが、変化への対応が不得手。現場ではロボットの不得手を人間が補うような事態も起こっている。

吹野社長


 こうした問題をソフトウエアで解決できないか。吹野社長は「製品一つ一つの違いをロボット自体が考え、自分自身で動きを補正する新しい価値を提供すればいい」と考えた。製品第1弾として、ロボットのティーチング自動補正ツール「LーRobot(Lロボット)」を16年6月にリリース。Lロボットはレーザーセンサー(3Dスキャナ)とロボットを動作させながら、物体に合わせたティーチングを自動生成する機能と、既存のティーチングを物体に合わせて軌道修正する機能を持つ。
Lロボットのデモを行う技術者ら


ロボットが物体に合わせて動きを補正


 設計とモノづくりの現場では必ず誤差が生じる。例えば、プレス部品メーカーには材料の鉄がロール状で供給される。そのロールの内側と外側では加工時に内部にあらわれる応力(抵抗力)が異なるため、製品の形状に違いが出てそのまま加工すると、不良の原因となってしまう。溶接ロボットでは1㍉㍍ずれれば全品が不良となり、修復にはラインを止めなくてはならない。

 Lロボットはセンサーでそうした形状の違いを検知し、物体に合わせてロボットが自動的に動きを補正して動作する。一つ一つの部品や製品に対応したインテリジェントな自動ロボットコントロールが可能になる。自動検査ソフト「LーQualify(Lクオリファイ)」とセットで導入すれば、自動補正生産から品質検査までワンストップのロボットシステムを構築できる。
物体に合わせてロボットが動きを自動補正


スマートファクトリーを実現


 開発中の「LーFactory(Lファクトリー)」は、スマートファクトリーの実現を目指す。LロボットとLクオリファイによって得た個々のロボットのデータを統合し、工場全体をリアルタイムに改善することができる。既存の環境センサーからの情報だけでなく、モノづくりのインフラとして活用されている産業用ロボットをセンサーとして利用することで、生産データをリアルタイムに活用した異常検知や異常予測、異常回避に役立つ。「抜き取り検査でなく、全数の生産品のデータを活用することで新しいファクトリーITのカタチを提案したい」(同)と意気込む。
ニュースイッチオリジナル
前田亮斗
前田亮斗 Maeda Ryoto
ロボットによる自動化は、これまで人手作業では取れなかった詳細なデータをリアルタイムに取得できるようになる。リンクウィズは製造品のばらつきデータを品質管理ソリューションに拡張したいという、目の付け所の良いアプローチで製造現場を変えようとしている。 今後システムインテグレーターなどととうまく連携することにより、製造現場への製品導入が考えられる。ものづくりが盛んな静岡県から、全国、世界へと飛躍することを期待したい。

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