ニュースイッチ

データヘルス時代の幕開けなるか。保健医療にAI活用

厚労省が推進へ初会合。20年度から情報インフラを本格稼働へ
データヘルス時代の幕開けなるか。保健医療にAI活用

データヘルス計画は、データの利活用がポイントになる(写真はイメージ)


富士通、電子カルテ連携した診療画像


 富士通は大規模医療機関向け電子カルテシステム「ホープ・ライフマーク―HX」と円滑に連携できる新しい診療画像ソリューションを15日に発売する。高度な放射線情報システム(RIS)などを拡販し、2017年度末までに200システムの販売を目指す。

 今回のソリューションは(1)放射線撮影の業務を一元管理するRIS(診断)(2)医療チームでの放射線治療に必要な状況共有機能を提供するRIS(治療)(3)画像撮影装置から受信した画像データの保管・管理、閲覧機能を提供する医療画像情報システム(PACS)―の3製品で構成する。

 従来は電子カルテシステムとは別システムだったRIS(診断)をホープ・ライフマーク―HX専用の生体検査ライブラリーとし、電子カルテデータと統合した。さらに放射線情報システムで強みを持つ横河医療ソリューションズ(東京都杉並区)との共同開発により、診断、治療、PACSの機能をそれぞれ強化した。

 生体検査ライブラリーでは技師業務日誌作成機能を搭載する。また技師長が各技師の業務日誌を確認しながら日々の業務の割り振りなどを設定できる技師業務ローテーション管理機能などを追加した。

 チーム医療を支援する新機能では、治療装置から取得するデータを参照可能な放射線治療部門専用の画像閲覧機能を装備した。

日刊工業新聞2016年4月15日



製薬会社とマッチングサービス


 シミックホールディングス(HD)子会社のヘルスクリック(東京都港区、慶野晋一社長)は、健康保険組合を対象にしたサービス「ターゲティングDTC(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)」を始めた。同サービスは、医療用医薬品の疾患啓発を通じて、政府の進める「データヘルス計画」を推し進める。健保組合や製薬会社からのニーズに対し、新たなサービスを提供する。

 政府は「日本再興戦略」(2013年閣議決定)で、健保組合に加入者の健康づくりを義務づける「データヘルス計画」を打ち出している。狙いは、約41兆5000億円(15年度速報値)に上る医療費の抑制にあり、社員の病気の進行を抑えることによって健康を守り、生産性の向上につなげようとするものだ。

 慶野社長は、「データヘルス計画は、データの利活用が重点ポイントになる」と指摘する。健保組合は、加入者がどのような病気にかかり、薬を処方されたかといったレセプト(診療報酬明細書)のデータや、健康診断のデータを持つ。

 ただ、実際に健保組合がデータヘルス計画に基づいた施策を実施するには、「予算や方法論でハードルが高い」(慶野社長)。さらに国内では、製薬会社が医療用医薬品の患者だけを対象に疾患を啓発することは難しいのが現状だ。

 一方で、健保組合は、データヘルス計画の施策として、糖尿病の重症化予防(透析患者を増やさない)、ジェネリック差額通知などを実施している。

 同社は、この施策と製薬会社とをマッチングさせることで、製薬会社はターゲットとした人(患者)に疾患啓発ができ、その後の行動変容がレセプトで確認できる。

 例えば、糖尿病の治療をしている人のレセプトから受診や処方情報を確認。薬剤規定の通り服薬する「服薬コンプライアンス」が良くない人に対して治療継続の重要性、合併症のリスクを伝えることで、コンプライアンスの向上につなげる。

 健保組合にとっても、重症化の防止が期待でき、製薬会社側は治療の継続による処方数の維持が見込まれる。

 データヘルス計画の施策を実行しながら、データの利活用を行い、サービスにかかる費用は製薬会社が負担するというビジネスモデルだ。

 さらに同社は、病院や薬局などの検索や、栄養補助食品(サプリメント)情報などを扱ったポータルサイト「healthクリック」を運営する。

 現在、月間ユニークユーザーは約130万人、月間ページビューは約350万ページにのぼる。慶野社長は、「サイトで培ったデータベースなどのノウハウを生かし、新たなサービスを創出したい」と今後に意欲をみせる。

 一般消費者にも幅広く情報を発信するサイトを設け、さらなる新サービスを作り出したいとしている。
(文=浅海宏規)

日刊工業新聞2016年10月24日



<次のページ、健康寿命」延ばせ!関連産業の定着へ>

村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
医療画像の診断支援やゲノム解析、創薬支援と、医療分野のAI活用の可能性は広がっている。その上で、有効性と安全性をどう両立するかが焦点だ。

編集部のおすすめ