街を網羅しろ!IoT時代に新たな通信技術が台頭
IoT(モノのインターネット)社会の実現に向け、家電メーカーや通信会社などが新たな通信技術を試みている。IoTはウエアラブル機器から住宅、工場、スマートシティー(次世代環境都市)など街そのものまで幅広い分野を網羅する。このため“つなげる技術”の開発には、各社の活発な取り組みが欠かせない。
コンセントに差し込めば、配線工事も必要なく、そのままインターネットと接続できる。そんな電力線通信がIoTを支える技術として、再び注目され始めた。そこでパナソニックは、家庭用の通信インフラとして電力線通信の高速規格「HD―PLC」の普及に力を入れている。
同社は東京電力ホールディングスグループ、日立製作所と共同で、11月から一般住宅を対象としたIoT基盤の構築実験を開始。都内を中心とした約100戸の住宅を対象に、家電製品ごとの電力使用状況や住宅内の温度などを測定してデータを収集する実験で、パナソニックは家庭内でHD―PLCを使ったネットワークの有効性を検証する。
これまで通信距離が200―300メートルに限られることが課題だったが、端末を経由して別の端末に情報を伝送する「マルチホップ機能」を2016年に追加。数キロメートル先まで通信距離を延ばすことが可能となった。
また端末1000台規模のシステム構築にも対応しており、高層マンションの監視カメラやインターホンなどをネットワーク化することも可能だ。普及に向けた技術的ハードルは取り払われてきた。
HD―PLCは11年に米電気電子学会(IEEE)で国際標準規格として認証され開発を主導したパナソニックは社外へ技術ライセンスを供与するとともに、監視カメラなどへの応用も進めてきた。
IoT基盤の一翼を担うようになれば、市場はさらに広がる。同社では大規模ビルや工場など産業分野にも用途を拡大する方針だ。将来は街灯など街中の機器にも搭載し、スマートシティーのインフラとしても期待する。
日本発のIoT向け国際無線通信規格では「Wi―SUN(ワイサン)」が、スマートメーター(通信機能付き電力量計)に採用されるなど普及し始めている。そのワイサンの機能を拡張した新規格「ワイサンFAN(ファン)」の実用化が、産学連携によって進められている。
ワイサンは家庭用エネルギー管理システム(HEMS)機器とスマートメーターの間の通信など、家庭内での利用を前提とする。それを屋外にまで広げようと策定したのが新規格だ。
京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループはローム、日新システムズ(京都市下京区)と共同で、このワイサン・ファン対応の無線機を開発した。
複数台の無線機を経由して通信距離を延ばすマルチホップ機能を搭載しており、より広い範囲で低消費電力の無線通信を実現できる。スマートシティー構築に寄与する技術として、17年以降の製品化を見込む。
共同開発では原田教授らが物理層のソフトウエアなどの基礎設計を担当。それにロームの通信モジュールと日新システムズの通信ミドルウエアを組み合わせた。京都の産学が連携して新しい無線技術を開発した格好だ。
IoTに限らず、あらゆる最新の技術開発が東京主導で進む中にあって、原田教授は「東京でなくても『純京都産』ですべてできる」と力を込める。
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「HD―PLC」、配線工事必要なし
コンセントに差し込めば、配線工事も必要なく、そのままインターネットと接続できる。そんな電力線通信がIoTを支える技術として、再び注目され始めた。そこでパナソニックは、家庭用の通信インフラとして電力線通信の高速規格「HD―PLC」の普及に力を入れている。
同社は東京電力ホールディングスグループ、日立製作所と共同で、11月から一般住宅を対象としたIoT基盤の構築実験を開始。都内を中心とした約100戸の住宅を対象に、家電製品ごとの電力使用状況や住宅内の温度などを測定してデータを収集する実験で、パナソニックは家庭内でHD―PLCを使ったネットワークの有効性を検証する。
これまで通信距離が200―300メートルに限られることが課題だったが、端末を経由して別の端末に情報を伝送する「マルチホップ機能」を2016年に追加。数キロメートル先まで通信距離を延ばすことが可能となった。
また端末1000台規模のシステム構築にも対応しており、高層マンションの監視カメラやインターホンなどをネットワーク化することも可能だ。普及に向けた技術的ハードルは取り払われてきた。
HD―PLCは11年に米電気電子学会(IEEE)で国際標準規格として認証され開発を主導したパナソニックは社外へ技術ライセンスを供与するとともに、監視カメラなどへの応用も進めてきた。
IoT基盤の一翼を担うようになれば、市場はさらに広がる。同社では大規模ビルや工場など産業分野にも用途を拡大する方針だ。将来は街灯など街中の機器にも搭載し、スマートシティーのインフラとしても期待する。
日本発の「Wi―SUN」、産学連携で
日本発のIoT向け国際無線通信規格では「Wi―SUN(ワイサン)」が、スマートメーター(通信機能付き電力量計)に採用されるなど普及し始めている。そのワイサンの機能を拡張した新規格「ワイサンFAN(ファン)」の実用化が、産学連携によって進められている。
ワイサンは家庭用エネルギー管理システム(HEMS)機器とスマートメーターの間の通信など、家庭内での利用を前提とする。それを屋外にまで広げようと策定したのが新規格だ。
京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループはローム、日新システムズ(京都市下京区)と共同で、このワイサン・ファン対応の無線機を開発した。
複数台の無線機を経由して通信距離を延ばすマルチホップ機能を搭載しており、より広い範囲で低消費電力の無線通信を実現できる。スマートシティー構築に寄与する技術として、17年以降の製品化を見込む。
共同開発では原田教授らが物理層のソフトウエアなどの基礎設計を担当。それにロームの通信モジュールと日新システムズの通信ミドルウエアを組み合わせた。京都の産学が連携して新しい無線技術を開発した格好だ。
IoTに限らず、あらゆる最新の技術開発が東京主導で進む中にあって、原田教授は「東京でなくても『純京都産』ですべてできる」と力を込める。
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日刊工業新聞2017年1月6日