今年も大型M&Aラッシュ、2017年の「傾向と対策」
中国の魅力薄れる。注目はやはりライフスタイル分野
2016年のM&A(合併・買収)市場は、過去最高だった15年に引き続き活況だった。08年秋のリーマン・ショック以降、過去2番目となる高水準で、日本企業が関連するM&Aの総額は約20兆円となる見通し。米国経済が複数回の利上げを見込めるほど回復していることや、トランプ米次期大統領が金融機関の規制緩和を打ち出す可能性も浮上しており、17年のM&A市場はさらに賑わいそうだ。
16年の国内M&Aは幅広い業種に及んだ。15年が保険会社による大型M&Aが主役だったのと対照的だ。JXホールディングスによる東燃ゼネラル石油の買収は、国内再編に主眼を置く。アサヒグループホールディングスによる欧州ビール会社の買収は、海外事業の拡大を加速する狙い。
キヤノンによる東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市)の買収は、新事業の獲得など、多様な分野でM&Aが進んだ。日本のM&A増加は、M&Aが一般的な経営手段として企業に根付いていることを伺わせる。
買収先としては欧州企業の人気が高く、逆に中国を含むアジア太平洋地域は人気が低かった。日本企業の海外M&Aのうち、アジア太平洋地域が占める割合は15年に30%だったが、16年は6%に低下。中国市場や東南アジア市場の成長に陰りが見え、外資の参入規制などを設けている国が多いことも理由だ。
ただ世界のM&A市場を見ると、中国は買い手として存在感が高まっている。16年はM&Aの買い手として米国を抜き1位に躍り出た。
米国がM&Aを利用した租税回避を規制したことも一因だが、成熟した中国企業が成長余地を国外に求めているのが実情だろう。欧米では中国企業の勢いを警戒する声も出始めている。
17年のM&A市場は米国経済の回復や足元の金利上昇、トランプ新政権の政策が重なり合い、一層拡大しそうだ。日本企業のマインドについても、野村証券M&A兼ソリューションビジネス担当の角田慎介経営役は「変わらずに強い」と語る。「日本は人口減少、内需縮小の問題が根底にある。
その中で20年後の経営を考えるなら、国内再編や海外事業の拡大はどの企業にとっても重要」(角田経営役)なためだ。
今後日本でM&Aが増えそうな業種として角田経営役は「ヘルスケア」を挙げる。確かに製薬や介護、医療機器などは高齢化社会でも一定の市場成長が期待できる。17年は健康分野で大型M&Aが生まれるかもしれない。
<次のページ、各事例と下期の表>
16年の国内M&Aは幅広い業種に及んだ。15年が保険会社による大型M&Aが主役だったのと対照的だ。JXホールディングスによる東燃ゼネラル石油の買収は、国内再編に主眼を置く。アサヒグループホールディングスによる欧州ビール会社の買収は、海外事業の拡大を加速する狙い。
キヤノンによる東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市)の買収は、新事業の獲得など、多様な分野でM&Aが進んだ。日本のM&A増加は、M&Aが一般的な経営手段として企業に根付いていることを伺わせる。
買収先としては欧州企業の人気が高く、逆に中国を含むアジア太平洋地域は人気が低かった。日本企業の海外M&Aのうち、アジア太平洋地域が占める割合は15年に30%だったが、16年は6%に低下。中国市場や東南アジア市場の成長に陰りが見え、外資の参入規制などを設けている国が多いことも理由だ。
ただ世界のM&A市場を見ると、中国は買い手として存在感が高まっている。16年はM&Aの買い手として米国を抜き1位に躍り出た。
米国がM&Aを利用した租税回避を規制したことも一因だが、成熟した中国企業が成長余地を国外に求めているのが実情だろう。欧米では中国企業の勢いを警戒する声も出始めている。
17年のM&A市場は米国経済の回復や足元の金利上昇、トランプ新政権の政策が重なり合い、一層拡大しそうだ。日本企業のマインドについても、野村証券M&A兼ソリューションビジネス担当の角田慎介経営役は「変わらずに強い」と語る。「日本は人口減少、内需縮小の問題が根底にある。
その中で20年後の経営を考えるなら、国内再編や海外事業の拡大はどの企業にとっても重要」(角田経営役)なためだ。
今後日本でM&Aが増えそうな業種として角田経営役は「ヘルスケア」を挙げる。確かに製薬や介護、医療機器などは高齢化社会でも一定の市場成長が期待できる。17年は健康分野で大型M&Aが生まれるかもしれない。
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日刊工業新聞2016年12月30日