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今日、日ロ首脳会談。各業界の現実とこれから

企業は難しい判断を迫られるが・・

市場の成長性見極め


 日本政府は今回の首脳会談で、北方領土での共同経済活動を打診し、これをテコに領土問題の解決につなげたいとみられる。また極東の産業振興やエネルギー開発など8項目の協力案の具体策で合意する。案件に興味を持ちそうな商社や製造業にピンポイントで声をかけており、中身は首脳会談後に発表する。

 「決して政府が強制していない。あくまでも企業が採算に合うと判断したものだけ具体化する」と外務省幹部は強調する。しかし、領土交渉という狙いを実現するための経済協力だけに企業は難しい判断を迫られそうだ。

 首脳会談に先立ち、日本貿易振興機構(ジェトロ)は9日付でロシアデスクを設置した。商社OBらロシアビジネスの専門家10人を起用して中堅・中小企業150社の対ロビジネスを支援する。

 国際協力銀行(JBIC)は10月、トヨタ自動車子会社のトヨタファイナンシャルサービスのロシア現地法人に対し、同行として初めて現地通貨ルーブル建ての貸し付け契約を結んだ。

 金額は明らかにしていないが、高級車「レクサス」の販売金融事業に必要な資金の一部を融資する。ルーブルは経済の弱さを反映して為替レートが安定していない。ルーブル建てとすることでJBICが企業の為替リスクをヘッジする。

 外務省は首脳会談後にロシア人の訪日ビザの発給を緩和し、同様にロシアも日本人の渡航ビザの取得を容易にする見通しだ。こうして政府をあげてロシアとの経済交流促進に躍起になっているが、企業が実際に動くかどうかはロシア市場の成長性にかかっているだろう。

 ジェトロが在欧州の日本企業を対象にした調査によると、将来有望な販売先としてロシアは2013年度に1位だったが、14年度に2位に低下。15、16年度は4位まで下がった。

 JBICが製造業を対象に実施した海外直接投資アンケートでも、今後3年程度の有望国としてロシアは14年度の9位から16年度は15位に落ちた。東南アジアなど他にも有望国があるなか、はたして政府の思惑通り企業のロシアビジネスは活発化するだろうか。
                


日刊工業新聞2016年12月13日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 ロシア経済分野協力担当相を兼ねる世耕弘成経済産業相は、日本記者クラブでの会見で日露協力について「ロシア側はカネが欲しいのではなく、優れたパートナーを求めている」と話している。また日露首脳同士は「過去の何度もの会談を通じて信頼関係を深めてきた」という。  産業界はどう対処すべきか。ロシアには広大な用地や豊富な天然資源、欧米に比べて安価な労働力がある。自動車や電機、ロボット、医薬・食品など日本が得意とする産業が受け入れられる土壌もある。問題は市場や政治の透明性であり、日本企業が進出した後も安心して操業できるインフラを構築できるかどうかが問われる。  安倍・プーチン会談の結果は分からない。ただ双方の利益が合致するのであれば、広大な市場が日本経済に門戸を開く可能性が生じる。健康・医療産業や中小企業育成など、可能な分野の協力は前向きに考えるべきだろう。

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