今日、日ロ首脳会談。各業界の現実とこれから
企業は難しい判断を迫られるが・・
安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は15日に山口県長門市、16日に東京都内で首脳会談を開く。日本としては、原油価格低迷の影響で経済が芳しくないロシアへ経済協力の手を差し伸べ、懸案の北方領土問題の解決を目指す。産業界は政府の対ロビジネスへの後押しを歓迎しつつも、首脳会談の行方を冷静に見守る構えだ。
大手商社は極東地域のエネルギー、インフラ分野の事業拡大に力を入れている。三井物産と三菱商事が参画する液化天然ガス(LNG)プロジェクト「サハリン2」は、生産量を現在比5割増の年間1500万トン規模に拡張する計画。現在、20年代前半の生産開始に向けてプラントの設計やガス調達、LNG販売先などの検討を進めている。
インフラ分野では、丸紅が港湾設備の営業活動を展開。既に極東地域のヴォストーチヌイ港の輸出ターミナル向けに石炭積み出し港湾設備を受注しており、今後も同地域での受注拡大を目指す。
また三井物産はJBICと共同で、国営電力最大手ルスヒドロに約5%出資する方針。日本製発電機器の納入などを通じた発電所の高効率化支援のほか、ルスヒドロの子会社と共同で極東地域での風力発電所の開発を視野に入れる。
日揮や千代田化工建設は北極海に面したヤマル半島で、大型のLNGプラントの建設を進めている。受注環境が厳しい中、両社にとっての収益源だ。
また日揮は極東のハバロフスクで野菜の生産・販売事業にも乗り出している。約2ヘクタールの敷地に、ガラス張りの温室を建設。キュウリとトマトを養液により栽培している。生産量が1日平均約2トンで、10キログラムの箱で約200箱に相当する。
現地では冬の寒さが非常に厳しく、新鮮で安全な野菜の流通が少ないという。小売店などに2月からキュウリ、4月からトマトをそれぞれ販売している。ルーブル下落で影響を受けている採算面の改善を目指す。
欧州ビジネス協会(AEB)によると、ロシアの11月の新車販売台数は前年同月比0.6%増。マークラインズによれば前年同月実績を上回ったのは14年12月以来23カ月ぶり。AEBの自動車製造業者委員会は「上昇傾向のトレンドかどうかの判断は尚早」という。
不透明感はぬぐえないが完成車各社は市場回復を見据え着々と投資を続ける。マツダは9月、現地企業OJSCソラーズとウラジオストクにエンジンの組立工場を新設することでロシア政府と投資契約を結んだと発表。トヨタ自動車はサンクトペテルブルク工場の年産能力を2倍の10万台とし8月にスポーツ多目的車(SUV)「RAV4」の生産を始めた。
日産自動車もサンクトペテルブルク工場で6月に新型「ムラーノ」の生産を始めた。かつて300万台規模まで拡大した市場はほぼ半減した。復活への期待は大きい。
ロシアのロボット市場は黎明(れいめい)期。日系メーカーにとっては手探りの状態が続く。現地に進出している日本、韓国、中国の自動車メーカーなどへの販売が主力。現状で市場は限られるが、一般産業分野まで自動化ニーズが広がれば需要が一挙に拡大するかもしれない。
ロシアに現地法人を置いているロボットメーカーは少なく、駐在員事務所や出張ベースでの対応が基本。販売の大半が自動車産業向けで、車メーカーの要望に応じて製品を供給している以外、大きな動きは見られない。
ただ、一般産業も自動化のフェーズに入れば、構図は変わるだろう。ロシアは人件費が高いため、潜在ニーズが大きい。ロボット各社にとって、中長期で有望市場なのは事実だ。
食品業界でロシアビジネスに期待が持てるのは、マヨネーズやしょうゆ、酒類など。ロシアはマヨネーズの1人当たり消費量が日本人の3倍以上あるといわれ、需要拡大が期待できる。ケンコーマヨネーズはモスクワで開かれた国際食品見本市で、自社マヨネーズ(写真)を出展。「消費量の多さに加え、和食ブームの追い風もある」と期待をかける。キユーピーも拡販を狙う。
キッコーマンは00年ごろから、現地のスーパーでしょうゆの販促活動を開始。米国と同様、現地の食材やメニューを生かし、万能調味料としてのしょうゆをアピールしている。「認知も徐々に浸透しており、堅実な売り上げ増加を期待する」。アサヒビールやキリンビールも、ロシアでビール拡販を目指している。
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【商社】極東地域のエネ・インフラ拡大
大手商社は極東地域のエネルギー、インフラ分野の事業拡大に力を入れている。三井物産と三菱商事が参画する液化天然ガス(LNG)プロジェクト「サハリン2」は、生産量を現在比5割増の年間1500万トン規模に拡張する計画。現在、20年代前半の生産開始に向けてプラントの設計やガス調達、LNG販売先などの検討を進めている。
インフラ分野では、丸紅が港湾設備の営業活動を展開。既に極東地域のヴォストーチヌイ港の輸出ターミナル向けに石炭積み出し港湾設備を受注しており、今後も同地域での受注拡大を目指す。
また三井物産はJBICと共同で、国営電力最大手ルスヒドロに約5%出資する方針。日本製発電機器の納入などを通じた発電所の高効率化支援のほか、ルスヒドロの子会社と共同で極東地域での風力発電所の開発を視野に入れる。
【エンジニアリング】LNGプラント建設
日揮や千代田化工建設は北極海に面したヤマル半島で、大型のLNGプラントの建設を進めている。受注環境が厳しい中、両社にとっての収益源だ。
また日揮は極東のハバロフスクで野菜の生産・販売事業にも乗り出している。約2ヘクタールの敷地に、ガラス張りの温室を建設。キュウリとトマトを養液により栽培している。生産量が1日平均約2トンで、10キログラムの箱で約200箱に相当する。
現地では冬の寒さが非常に厳しく、新鮮で安全な野菜の流通が少ないという。小売店などに2月からキュウリ、4月からトマトをそれぞれ販売している。ルーブル下落で影響を受けている採算面の改善を目指す。
【自動車】市場回復見据え積極投資
欧州ビジネス協会(AEB)によると、ロシアの11月の新車販売台数は前年同月比0.6%増。マークラインズによれば前年同月実績を上回ったのは14年12月以来23カ月ぶり。AEBの自動車製造業者委員会は「上昇傾向のトレンドかどうかの判断は尚早」という。
不透明感はぬぐえないが完成車各社は市場回復を見据え着々と投資を続ける。マツダは9月、現地企業OJSCソラーズとウラジオストクにエンジンの組立工場を新設することでロシア政府と投資契約を結んだと発表。トヨタ自動車はサンクトペテルブルク工場の年産能力を2倍の10万台とし8月にスポーツ多目的車(SUV)「RAV4」の生産を始めた。
日産自動車もサンクトペテルブルク工場で6月に新型「ムラーノ」の生産を始めた。かつて300万台規模まで拡大した市場はほぼ半減した。復活への期待は大きい。
【ロボット】黎明期、潜在ニーズ狙う
ロシアのロボット市場は黎明(れいめい)期。日系メーカーにとっては手探りの状態が続く。現地に進出している日本、韓国、中国の自動車メーカーなどへの販売が主力。現状で市場は限られるが、一般産業分野まで自動化ニーズが広がれば需要が一挙に拡大するかもしれない。
ロシアに現地法人を置いているロボットメーカーは少なく、駐在員事務所や出張ベースでの対応が基本。販売の大半が自動車産業向けで、車メーカーの要望に応じて製品を供給している以外、大きな動きは見られない。
ただ、一般産業も自動化のフェーズに入れば、構図は変わるだろう。ロシアは人件費が高いため、潜在ニーズが大きい。ロボット各社にとって、中長期で有望市場なのは事実だ。
【食品】和食ブーム、消費拡大に期待
食品業界でロシアビジネスに期待が持てるのは、マヨネーズやしょうゆ、酒類など。ロシアはマヨネーズの1人当たり消費量が日本人の3倍以上あるといわれ、需要拡大が期待できる。ケンコーマヨネーズはモスクワで開かれた国際食品見本市で、自社マヨネーズ(写真)を出展。「消費量の多さに加え、和食ブームの追い風もある」と期待をかける。キユーピーも拡販を狙う。
キッコーマンは00年ごろから、現地のスーパーでしょうゆの販促活動を開始。米国と同様、現地の食材やメニューを生かし、万能調味料としてのしょうゆをアピールしている。「認知も徐々に浸透しており、堅実な売り上げ増加を期待する」。アサヒビールやキリンビールも、ロシアでビール拡販を目指している。
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日刊工業新聞2016年12月13日