4年目の官製春闘に暗雲
官邸、経済界に不協和音
中小は非正規労働者の底上げ狙う
連合は11月20日の中央執行委員会で、17年春闘のベアなど賃上げ要求水準を「2%程度」に決めた。ベア要求は4年連続。定期昇給(定昇)相当分を含めて4%水準の賃上げ要求となる。
連合方針を受け2日、自動車や電機、鉄鋼・造船など主要製造業の産業別労働組合で組織する金属労協(JCM、議長・相原康伸自動車総連会長)が協議会を開き、16年要求と同水準の「月額3000円以上」のベア要求を正式に決定する。
「かつての物価上昇を追う春闘とは大きく違う」。連合の神津里季生会長は、デフレ脱却のためには中小や非正規の月例賃金・時給引き上げが不可欠、とする。16年春闘に引き続き、中小企業労働者や非正規労働者の底上げ、大手追従・準拠からの脱却を目指す。
「底上げ・底支え」「格差是正」に向け、中小共闘の賃上げ要求の目安は定昇に当たる賃金カーブ維持相当分4500円を含めて1万500円。非正規共闘では「だれでも時給1000円」の実現を進めつつ、時給引き上げの目安を37円に設定した。
問題は中小企業の賃上げ原資の確保ができるかだ。連合は「サプライチェーン全体での付加価値の適正配分が必要」とし、春闘交渉の場のほか、働き方改革実現会議などの場で大手企業に対し中小への公正取引の順守を働きかける考えだ。
16年春闘では、大企業が集まる経団連集計では定昇とベアを合わせた妥結額は7497円。賃上げ率は2・27%だった。一方、中堅・中小労組を含む連合集計での賃上げ幅は平均5779円、率換算2・00%。格差はむしろ広がっている。
懸念材料
環太平洋連携協定(TPP)に反対するトランプ米次期大統領が年明け早々に就任することも懸念材料。神津連合会長は「TPP発効は絶望的になった」とした上で、「経団連は大企業が中心。デフレ脱却のためには政労使の認識共有が必要だ」と中小企業、非正規労働者の待遇改善を求める。
安倍首相が「最大のチャレンジ」と位置づける働き方改革は「同一労働同一賃金」に向け、派遣やパートなど非正規労働者の賃金格差縮小だ。しかし同一労働同一賃金制度は、我が国の強みである年功賃金制度の上に立つ労使協調路線が崩壊する危険が伴う。
今年6月、産業別組合の全国化学労働組合総連合(化学総連、組合員約4万6500人)が連合から離脱するなど、支持政党の民進党と共産党の選挙協力に反発する動きが表面化している。17年春闘交渉を前に、国内外の政治圧力が立ちはだかる。
日刊工業新聞2016年12月2日