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ソニーが新事業創出プログラムを欧州で展開

まずスウェーデンで拠点立ち上げ
ソニーが新事業創出プログラムを欧州で展開

新規事業を創出する仕組みを横展開してイノベーションを活性化(左が平井一夫社長)


僕らが独立してもソニーに追いつかれ負ける


 ー新規事業創出部から巣立つタイミングをどう考えていますか。
 「いずれ巣立つことを見越したスキームになっていて、いろんなオプションがあります。時期によって決まるものではなくて、我々のプロジェクトはまだ始まったばかりなので、具体的な出口があるわけではないです」

 ー役員に会いに行くとか知らない人に電話するとか杉上さんに行動力の源泉はどこにあるんでしょう。
 「これを本当にやりたいと思うかどうか。助かった命なので、死ぬ時にあれやればよかったと思うのは嫌なんで、迷ったらやろうと。そうはいっても、もどかしい時期もありました。提案はするんですが、なかなか形にできない。でも、できない理由は考えたらいくらでもある。じゃ、どうやったらできるか考えるんです。ボトムアップイベントに出ようと決めた時の頭の切り替えは明確に覚えていますね」

 ー大企業ではやりずらいことも多く、最近は辞めて起業する人もいます。あえて社内に踏みとどまってやる理由は。
 「まず僕らのアイデアはソニーに向いているんです。社内にあるアセットがすごく使える。僕が独立してやっても、後からソニーが追いかけてきたら負けます(笑)。エレクトロニクスの技術を使ってエンターテイメントで新しいことやるというのは、まさにソニーの真骨頂ですから」
      


 ー杉上さんにとって新しいことにチャレンジするということとは。
「難しい質問ですね。クラウドファンディングを終えた時に思ったのは、最初、モノを作りながら、名前出さずに約300万円を集めるのはすごい大変でした。自分の力で資金を集めるのは大変なんですが、創業者の井深(大)や、盛田(昭夫)もベンチャーだったわけで、あの人たちが一から立ち上げて今の規模の会社になった。何十年も食べていける事業を作った偉大さをすごく感じます」

「青臭い話になりますが、新しいことを生み出すには『夢』と『縁』が必要で、僕の夢はファッションのデジタル化です。まず夢を持つことが大事で、そしてその夢に向かって一緒にやってくれる人と出会う縁につながります。一人では何もできない。そこからうまくいくかどうかは運なんです」

 「十時もよく言ってますが、うまくいっている人に聞くと、だいたい7割くらい運だと。最初に誰かが夢を持って活動していくから、縁が出てくる。つかまなければいけない運は、人と出会える縁という運だと思います。それはその夢への思いがどれだけ強いか、魅力的か、ではないでしょうか」
<プロフィル>
 杉上雄紀(すぎうえ・ゆうき)
 1982年8月生まれ、東京都出身。2008年東京大学大学院工学系研究科を卒業後、同年ソニー(株)入社、ホームエンタテインメント部門へ配属。テレビと連携するスマホアプリや新規商品の開発に携わる一方、ボトムアップの部門内アイデアコンテストのスタッフとして精力的に活動する。
 “デジタル化でファッションをもっと自由にもっと楽しく”をビジョンに掲げ、電子ペーパーを紙ではなく布として捉えて柄の変わるファッションアイテムを作るというデジタル・ファッション事業を発案し、2013年より有志を集めて業務外での活動を本格化。2014年4月に設立された新規事業創出部にて社内スタートアップFashion Entertainmentsとして活動を開始し、事業開発に邁進中。

ニュースイッチ2015年10月01日/02日/03日


※内容肩書きは当時のもの
日刊工業新聞2016年12月1日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
基本的に日本と同様の仕組みで新事業を育成していく。ただ日本ではクラウドファンディングを活用した事業化モデルを展開しているが、欧州発のアイデアをビジネス化する方法は、事業や製品の特徴や各プロジェクトチームのニーズに合わせて今後詰める。以前取材した「FES Watch」の記事も合わせてお読み下さい。

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