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自律型ロボットが大活躍! IoT活用次世代農業の可能性とは?

<情報工場 「読学」のススメ#19>『IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代』(三輪 泰史/井熊 均/木通 秀樹 著)

システム自体の輸出の可能性も拓く「アグリカルチャー4.0」


 『IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代』が提言する次世代の農業モデル「アグリカルチャー4.0」は、大きく三つのシステムで支えられる。一つは各種センサーによる、農地や作物の状態のモニタリングシステム。二つめは、最適な生産・販売計画を導く全体管理システム。そして三つめが自動・半自動で農作業を行う農業機器・設備だ。これには、農業ロボットや自動運転農機、農業ドローン、自動化を進化させた次世代植物工場などが含まれる。

 これらのシステムの中核に置かれるのが小型自律型ロボット「DONKEY」だ。センサーが捉えたデータや遠隔地からの制御信号をキャッチし、自動で作業をこなす。さまざまなアタッチメントを取り替えることで、多種多様な作業にも対応できる。最大のポイントは小型軽量であることだ。従来のトラクターなどは小面積の農地が点在するケースでは、非常に非効率だった。農地と農地の間の移動に時間と燃料が費やされる。小型で持ち運びがたやすいDONKEYであれば、こうした問題をクリアできる。

 このようなシステムが実現されれば、日本農業が抱える諸問題を解決するだけでなく、システム自体を「輸出」することも可能だと、同書は主張している。システムの中に、日本が培ってきた高品質な作物をつくる生産ノウハウを組み込むことができる。インターネットを活用したシステムだけに、遠隔操作やアドバイスをすることで、日本の「匠(たくみ)」の技を生かすこともできる。生産物ではなく、日本農業の“強み”を海外に売ることができるのだ。

 「3K」を解消し、すべての農業従事者が「儲ける」ことのできる「アグリカルチャー4.0」だが、成功させるためには、各パーツおよびシステム全体の標準化が欠かせないだろう。そのためには、モノのネットワークだけでなく「人」のネットワークも重要になる。旧来の利害関係をクリアにした上で、新しい農業のグランドデザインを描ける人材とその行動が、日本農業の未来を拓くカギを握っている。
(文=情報工場「SERENDIP」編集部)

『IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代』
三輪 泰史/井熊 均/木通 秀樹 著
日刊工業新聞社
184p 2,300円(税別)
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冨岡 桂子
冨岡 桂子 Tomioka Keiko 情報工場
農作物の輸出ランキングを見ると、九州とほぼ同じ面積のオランダが、アメリカに次ぐ世界第二位になっています。一方、日本は、57位とかなりの後塵を拝しています。(平成28年2月、農林水産省調べ)今後、世界では食に対する需要が爆発的に高まっていくことが予測されています。「アグリカルチャー4.0」で日本の農業を効率化することが、その需要に応えられるシステムを作り上げることにもなり、そうなれば世界における日本の農業のプレゼンスを上げる余地がまだまだあるということかもしれません。

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